こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。
前回に引き続き、多様な働き方の一つとして「裁量労働制」があります。
裁量労働制は、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ会社側と労働者の間で、労使協定によって決めた時間を労働時間と「みなす」制度です。実際の労働時間が「みなし労働時間」より長くても、短くても、給与計算の時に集計される労働時間は原則変わりません。
ここまでの話だと、「やはり残業時間はない。」と思われるかもしれません。
裁量労働制は企業が業務の時間配分などを個人の裁量に任せているため、定時で勤務する従業員とは残業時間の扱いや勤怠管理の方法が異なるのです。
では、『裁量労働制における残業時間の扱い』について、見ていきましょう!
まず、裁量労働制であっても、労働基準法に定められた労働時間を遵守しなければいけません。
これを超過する労働は「時間外労働(残業)」と呼ばれ、企業が時間外労働を労働者に指示する場合は、労働基準第36条を基に作成された協定(36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出が必要です。
また、時間外労働には「月45時間、年間360時間まで」と上限が定められています。そのため、企業は以上の法律を遵守しつつ、各従業員の労働時間に見合った給与を支払わなければなりません。
つまり、裁量労働制では残業代が発生しないのではなく、みなし労働時間が1日8時間を超える時間であった場合は、その超えた時間の賃金は割増賃金として、あらかじめ給与に含めて支払うことになります。
その他、裁量労働制を適用していても、残業代支払いの対象になるケースは以下の2つです。
・深夜労働をしていた場合(22時~翌5時までの時間帯)
・休日出勤をしていた場合(4週間を通じて4日の休日が取れない時)
※通常の労働者と同様に「基礎賃金×0.25」の深夜手当と「基礎賃金×1.35」の休日手当を別途支払う必要があります。
※参考:厚生労働省「裁量労働制の概要」
◆勤怠管理◆
裁量労働制は実労働時間にかかわらず、みなし労働時間分働いたとされる制度ですが、勤怠を正しく把握しなくて良い訳ではありません。
裁量労働制の勤怠管理を適切に行うためには、どのような点を注意すべきなのでしょうか。
1.労働時間の客観的な記録が必要
2019年4月より健康管理の観点から労働安全衛生法が改正され、事業主に「労働時間の客観的な把握」が義務化されております。
これには裁量労働制で働く人も含みます。
また、みなし労働時間と実労働時間に乖離がないかを確認することも重要です。
※具体的には、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録などです。
2.深夜労働や休日出勤をチェック
裁量労働制は、実労働時間にかかわらず、あらかじめ労使協定によって定められた時間を『みなし労働時間』として給与を計算します。
ですが、上述したように「深夜労働時間」と「休日出勤時間」については、割増賃金が必要となります。
正しく給与計算をするために、必ずチェックしましょう。
2.健康・福祉確保の措置が必要
2019年4月の労働基準法改正により、特別条項付きの36協定を結ぶ場合は、「限度時間を超えて労働させる労働者の健康・福祉を確保する措置」を講じることが定められました。
また、従業員の長時間労働による健康状態の悪化を防ぐため、専門業務型裁量労働制の導入要件のひとつとして、「対象労働者に適用する健康・福祉確保措置」が定められています。
※具体的には、深夜労働の回数制限や、勤務間のインターバルの確保、医師による面接指導や保健指導、特別休暇の付与などです。
※参考:厚生労働省「改正労働安全衛生法のポイント」
◆導入にあたり◆
裁量労働制は、全ての従業員に適用されるわけではありません。労働基準法等で定められている特定の業務に限り、労使協定を締結、又は労使委員会の設置や決議など所定の手続きを得て適用させることができる制度です。
「特定の業務」は、「専門業務型」と「企画業務型」の2種類に分けられ、それぞれ対象業務や導入要件が異なります。
導入を検討されている事業主様にとっても、多くの時間を要す制度設計はご負担が多いことでしょう。
社会保険労務士法人サムライズでは、制度設計、就業規則の制定及び変更、労務相談、各種助成金に関するご相談や申請代行等も承っております。
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