11月19日 12月2日から変わる社会保険の資格取得手続き

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

2024年12月2日以降、現行の健康保険証が発行されなくなり、マイナンバーカードを健康保険証として利用登録する「マイナ保険証」の本格運用が開始されます。これに伴い、従業員が入社したときの社会保険の手続き等が一部変更になるため、その内容を確認しておきましょう。

 

[1]現行の健康保険証の発行
 現行の健康保険証は、2024年12月2日以降は、発行されなくなります。これは、新たに資格取得をする従業員はもちろんのこと、家族が被扶養者として認定を受けるときも同様です。また、婚姻等で氏名変更となる場合や現行の健康保険証を紛失した場合に関しても、再発行は行われません。
 なお、現行の健康保険証が発行されるタイミングは、交付年月日を基準とすることになっており、資格取得日や扶養の異動の認定日が基準となるわけではありません。

[2]12月2日以降の手続き
 2024年12月2日以降は、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」および「被扶養者(異動)届」に新たに「資格確認書発行要否」欄が設けられます。
 マイナンバーカードを作っていない人や、健康保険証として利用登録を行っていない人等(以下、「マイナ保険証を利用できない人」という)の手続きを行う際には、資格確認書の発行が必要かを確認の上、発行が必要なときには要否欄の「□発行が必要」にチェックを入れることになります。これにより、資格確認書が発行され、医療機関等の窓口で提示することにより保険診療での受診ができるようになります。
 なお、要否欄にチェックが入っていない場合でも、マイナ保険証を利用できない人には、資格確認書が発行されることになっています。ただし、その場合は資格確認書の発行までに時間がかかるとされています。

 

[3]手続きに必要な情報の確認
 今後、資格取得届や被扶養者異動届の作成をする際には、マイナ保険証を利用できない人か否かを確認する必要があります。そのため、従業員の入社が決まった際などには、以下の情報を入手しておくとスムースな運用になります。
 1.マイナンバーカードを作っているか
 2.マイナ保険証の利用登録状況
特に、2.については自らが登録したか否かを把握していない人も見受けられます。入社後等に確認していると、手続きに時間を要することにもなりかねません。

 健康保険証の利用登録状況は、マイナポータルのログイン後のトップ画面で確認できます。具体的には、「証明書」エリアから開くことのできる「健康保険証」ページにて確認ができます。登録が完了している場合は、健康保険証としての登録状況に「登録済」と表示されます。必要な情報を確認する際には、このような案内を加えてもよいでしょう。

■参考リンク
日本年金機構「令和6年12月2日以降は健康保険証が発行されなくなります
マイナポータル「健康保険証の登録が出来ているか確認する方法はありますか。

 

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11月12日 自転車の危険運転に対する罰則の創設とその対応

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

自転車を通勤や業務のために利用しているケースが見られますが、自転車の事故のリスクは高く、しばしば問題になります。また2024年11月から自転車運転に関して改正道路交通法が施行されたこともあり、以下では、この改正内容と自転車関連事故件数の状況をとり上げます。

 

[1]2024年11月施行の改正道路交通法の内容
 2024年11月1日より改正道路交通法が施行され、自転車の危険な運転に対して新しく罰則が適用されることになりました。内容は、「運転中のながらスマホ」と「酒気帯び運転および幇助」の2つがあり、詳細は以下のとおりです。

  1. 運転中のながらスマホ
     スマートフォンなどを手で保持して、自転車に乗りながら通話する行為、画面を注視する行為が新たに禁止され、以下の罰則の対象となりました。

    • 違反者:6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金
    • 交通の危険を生じさせた場合:1年以下の懲役または30万円以下の罰金

  2. 酒気帯び運転および幇助
     自転車の酒気帯び運転のほか、酒類の提供や同乗・自転車の提供に対して以下の通り、新たに罰則が整備されました。

    • 違反者:3年以下の懲役または50万円以下の罰金
    • 自転車の提供者:3年以下の懲役または50万円以下の罰金
    • 酒類の提供者・同乗者:2年以下の懲役または30万円以下の罰金

[2]自転車関連事故件数の状況と保険加入の義務化
 2023年中の自転車関連事故(自転車が第1当事者又は第2当事者となった交通事故をいう。)の件数は、72,339件で前年より2,354件増加しています。また、全交通事故に占める構成比は23.5%で、約4件に1件の割合となっています。

 自転車事故が原因で、加害者が高額な損害賠償を請求されるケースが出てきています。そのため、条例により自転車損害賠償責任保険等への加入を義務化する動きが広がっています。2024年4月1日現在、34都府県において条例により自転車損害賠償責任保険等への加入を義務化し、10道県において努力義務化する条例が制定されています(下表参照。表はクリックで拡大できます。)。  

 このように自転車による事故はかなりの件数に上ることから、自転車通勤をしている従業員に対しては、自転車損害賠償保険等への加入を促すことが有効です。

 今回の施行された改正道路交通法の内容については、参考リンクにある警察庁のホームページからポスターやリーフレットをダウンロードすることができます。事故防止の観点からも、社内にポスター等を掲示するなどして、従業員に対して注意喚起をしていきましょう。

 

■参考リンク
警察庁「自転車は車のなかま~自転車はルールを守って安全運転~
国土交通省「自転車損害賠償責任保険等への加入促進について

 

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11月5日 今年も11月に実施される過重労働解消キャンペーン

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

厚生労働省では、長時間労働の削減等の過重労働解消に向けた気運を更に高めるために、例年11月に実施している過重労働解消キャンペーンを、今年も2024年11月1日(金)から11月30日(土)までの1ヶ月間において実施することにしています。

 

[1]過重労働解消キャンペーン
 このキャンペーンは、2014年に施行された過労死等防止対策推進法に基づき、11月が過労死等防止啓発月間とされていることから実施されるものであり、過労死等の一つの要因である長時間労働の削減等、過重労働解消に向けた取組を推進するため、使用者団体・労働組合への協力要請、リーフレットの配布などによる周知・啓発等の取組が集中的に実施されます。

[2]過重労働解消キャンペーンの実施内容
 過重労働解消キャンペーンの一つとして、長時間労働が行われていると考えられる事業場等への重点監督が予定されています。監督の対象となる事業場等や確認される事項は以下のとおりです。

  1. 監督の対象となる事業場等
    1. 長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場や各種情報から時間外・休日労働時間数が1ヶ月当たり80時間を超えていると考えられる事業場等
    2. 労働基準監督署およびハローワークに寄せられた相談等から、離職率が極端に高いなどの問題があると考えられる事業場等
  2. 重点的に確認される事項
    1. 時間外・休日労働が、時間外・休日労働に関する協定届(36協定)の範囲内であるか等について確認され、法違反が認められた場合は是正指導が行われる。
    2. 賃金不払残業が行われていないかについて確認され、法違反が認められた場合は是正指導される。
    3. 不適切な労働時間管理が行われているときは、労働時間を適正に把握するよう指導される。
    4. 長時間労働者に対しては、医師による面接指導等、健康確保措置を確実に講じるよう指導される。
  3. 厳正な対応監督指導の結果、重大・悪質な法違反が認められた場合は、送検され、公表される。


 なお、監督指導の結果、1年間に2回以上、同一条項の違反について是正勧告を受けた場合等は、ハローワークにおいて、求人を一定期間受理しないこととされています。また、職業紹介事業者や地方公共団体に対しても、ハローワークと同様の取組を行うように要請されています。

 この機会に、自社の労働時間の状況を把握し、適正な労働時間の管理が行われているかを確認しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「過重労働解消キャンペーン
厚生労働省「11月は「過労死等防止啓発月間」です

 

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10月29日 2024年10月より支給要件が見直しとなった特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

厚生労働省では、雇入れや仕事と家庭の両立支援等を図るために様々な助成金制度を設けていますが、そのひとつに、特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)(以下、「成長分野等人材確保・育成コース」という)があります。この助成金について、2024年10月から支給要件の見直しが行われました。以下では、この内容をとり上げます。

 

[1]成長分野等人材確保・育成コースとは
この成長分野等人材確保・育成コースには、2つの助成メニューがあり、1つ目の成長分野メニューは、高年齢者や障害者等の就職困難者を、ハローワーク等の紹介により雇い入れて、成長分野の業務に従事させ、人材育成や職場定着に取り組む場合に、特定求職者雇用開発助成金の他のコースと比較して、1.5倍の助成が行われます。この成長分野の業務とは、次の1と2が該当します。

  1. 「情報処理・通信技術者」または「その他の技術の職業」(データサイエンティストに限る)に該当する業務
  2. 「研究・技術の職業」に該当する業務(脱炭素・低炭素化などに関するものに限る)

 2つ目の人材育成メニューは、未経験の就職困難者を、ハローワーク等の紹介により雇い入れて、人材開発支援助成金による人材育成を行い、賃上げを行った場合に、特定求職者雇用開発助成金の他のコースと比較して、1.5倍の助成を行うというものです。

[2]2024年10月からの支給要件の見直し
 [1]でとり上げた2つのメニューに関して、共通した見直しとして、対象となる労働者の要件を、「過去に通算1年以上の就労経験がない場合」から「過去5年間に通算1年以上の就労経験がない場合」に変更し、就労経験のない職業の判断について期間が限定されています。また、過去のパート・アルバイトとしての就労については、就労経験がないものとして扱われることになりました。
 次に、[1]でとり上げた2つ目の人材育成メニューに関して、「実施する教育訓練は50時間以上の訓練であること」が要件とされていましたが、「実施する教育訓練において、厚生労働大臣の指定する教育訓練給付の指定講座のうち公的職業資格の取得を目的とした教育訓練は50時間未満の訓練でも対象とすること」に緩和されています。この公的職業資格には、例えば普通自動車第2種運転免許等の業務独占資格や介護福祉士等の名称独占資格等が該当します。

 今回取り上げた成長分野等人材確保・育成コースは、例えば、対象労働者が障害者、60歳以上の者、母子家庭の母等の場合、特定求職者雇用開発助成金の「特定就職困難者コース」の支給要件も満たしていることが必要です。そのため、助成金の活用を検討される場合は、早めに支給要件の内容を確認しましょう。

■参考リンク
厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)は、より利用しやすくなるよう制度の見直しを行います
厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)

 

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10月22日 厚生労働省調査からみる男女別の離職理由

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先日、厚生労働省から「令和5年雇用動向調査結果の概要」が公開されました。この雇用動向調査は、全国の主要産業における入職者数・離職者数、入職者・離職者の性・年齢階級、離職理由等の状況を明らかにすることを目的に、上半期と下半期の年2回実施されており、今回の結果は、この2回の調査結果を合算し年計として取りまとめたものです。以下では、入職と離職の状況、転職入職者が前職を辞めた理由別割合をとり上げます。

 

[1]入職と離職の状況
 2023年における1年間の入職者数は8,501.2千人、離職者数は7,981.0千人となり、入職者が離職者を520.2千人上回りました。年初の常用労働者数に対する割合である入職率、離職率をみると、入職率は16.4%(前年比1.2ポイント上昇)、離職率15.4%(前年比0.4ポイント上昇)と、いずれも前年を上回っています。また、入職超過率は1.0ポイントとなっており、前年と比べると0.8ポイント拡大しています。

[2]転職入職者が前職を辞めた理由
 2023年における転職入職者が前職を辞めた理由をみてみると、「その他の個人的理由」「その他の理由(出向等を含む)」が多くの割合を占めていますが、これらを除いた各年齢区分におけるもっとも割合の高い理由は以下のようになっています。

[男性]
19歳以下 労働時間、休日等の労働条件が悪かった 28.4%
20~24歳 労働時間、休日等の労働条件が悪かった 11.4%
25~29歳 仕事の内容に興味が持てなかった 14.1%
30~34歳 給料等収入が少なかった 14.1%
35~39歳 職場の人間関係が好ましくなかった/給料等収入が少なかった 11.3%
40~44歳 職場の人間関係が好ましくなかった 14.6%
45~49歳 職場の人間関係が好ましくなかった 11.1%
50~54歳 仕事の内容に興味が持てなかった 10.9%
55~59歳 職場の人間関係が好ましくなかった 12.9%
60~64歳 定年・契約期間の満了 54.6%
65歳以上 定年・契約期間の満了 61.0%

[女性]
19歳以下 職場の人間関係が好ましくなかった 22.9%
20~24歳 労働時間、休日等の労働条件が悪かった 15.6%
25~29歳 労働時間、休日等の労働条件が悪かった 18.4%
30~34歳 職場の人間関係が好ましくなかった 9.6%
35~39歳 職場の人間関係が好ましくなかった 13.1%
40~44歳 労働時間、休日等の労働条件が悪かった 17.6%
45~49歳 職場の人間関係が好ましくなかった 18.7%
50~54歳 定年・契約期間の満了 10.1%
55~59歳 職場の人間関係が好ましくなかった 15.7%
60~64歳 定年・契約期間の満了 43.3%
65歳以上 定年・契約期間の満了 31.0%

 このように各年齢区分によって、もっとも高い割合の前職を辞めた理由が異なっていますが、この背景には、仕事に対する考え方や仕事と家庭の両立などの従業員自身を取り巻く状況などが影響していると考えられます。人材採用が難しい中、既存従業員の定着がこれまで以上に重要になっています。人材の定着の進める上で、労働条件や職場環境の見直しが必要なのかを点検し、問題があれば見直しをしていきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和5年 雇用動向調査結果の概要

 

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10月15日 連続する勤務や休憩時間に関するよくある質問

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

労働時間や休憩時間に関する素朴な質問は多く、何日間連続で働かせても問題ないか等、現場から総務に質問が入ることもあるでしょう。そこで今回は、連続勤務や休憩時間に関するよくある質問についてとり上げます。

 

[1]連続勤務における留意点
 大型の受注対応や機械の故障等により、休日出勤をして対応することが必要となり、結果的に休みなく連続した勤務となることがあります。このようなときには、36協定と過重労働対策の両方に目を向ける必要があります。

  1. 36協定
     時間外労働をさせることができる時間数や休日出勤をさせることができる日数等は、36協定で定めており、休日出勤させる場合は、この協定で定めた範囲内とする必要があります。連続出勤の日数に上限はありませんが、36協定の「労働させることができる法定休日の日数」を超えて休日出勤させることはできません。
     また、特別条項における1ヶ月の時間数には、時間外労働の時間のみでなく、休日労働の時間数等が含まれるため、休日労働の時間数の管理も必要です。
  2. 過重労働対策
     36協定の範囲内であれば、理論的に休日を与えることなく連続で勤務させることができますが、36協定の範囲内であっても、過重労働対策は必須です。連続した勤務では、休みが取れないことで、徐々に疲労が蓄積し、健康障害に繋がるリスクが高まります。36協定の内容に関わらず、少なくとも週に1日の休日は確保することが望まれます。

[2]休憩時間
 就業規則等では休憩時間を60分と定めているものの、業務の都合等で休憩を取らせることができず、また、短い時間しか取れないこともあります。
 休憩時間は、労働時間の途中に取らせる必要がありますが、一括して取らせなければならないという定めはありません。そのため、例えば60分の休憩を午前に10分、お昼に40分、午後に10分といったように分割することもできます。一方で、休憩時間は食事の時間や疲労の回復を目的としているため、細かく分割しすぎるとその目的を達成することが難しくなり、従業員の不満にもつながります。休憩の時間帯や長さは、休憩の目的も考えた上での設定が求められます。
 また、休憩時間は事業場全体で一斉に取ることが原則ですが、労使協定を締結することにより、交替で取るようにすることもできます。休憩の時間が確保しづらいようなときには、交替制で取ることができないかという検討も考えられます。

 

 後になって実は労働基準法の違反であったことが発覚することもあるため、事前に現場の管理者から総務に相談してもらえるような体制をつくっていきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「時間外労働の上限規制
厚生労働省「休憩時間を分割する場合どのようなことに注意が必要でしょうか。

 

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10月8日 協会けんぽの被扶養者資格の再確認

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

全国健康保険協会(以下、「協会けんぽ」という)では、健康保険の被扶養者になっている人について、毎年一定の時期に被扶養者の要件に該当しているかの確認(以下、「再確認」という)を行っています。今年度は、10月下旬から11月上旬にかけて確認のための被扶養者状況リストが各事業所に送付されることになっていることから、今回は、再確認の実施状況とその際の注意点をとり上げます。

[1]再確認の目的と2023年度実施の状況
 健康保険の被扶養者は、健康保険料を支払うことなく、一定の保険給付が受けられます。そのため、要件に該当しない被扶養者が被扶養者となっていることで、医療費が増加し、さらには高齢者納付金も不当に高くなり、その結果、保険料が増加することとなります。被扶養者資格の再確認は、それを防止する目的で実施されています。
 昨年度(2023年度)実施の際には、被扶養者から削除となった人は約7.1万人(2024年3月31日現在)となっており、結果、10億円程度の前期高齢者納付金の負担削減効果が見込まれたと公表されています。被扶養者から削除となった主な理由としては、「就職して健康保険の資格を取得したものの、被扶養者から解除する届出を年金事務所へ提出していない」というものが多くを占めています。

[2]再確認時の注意点
 再確認は協会けんぽから会社に送付されてくる状況リストに従い、再確認時点で加入している被扶養者について、その要件を満たしているかを、書面や口頭で、各被保険者(従業員)に対して行います。
 再確認時の注意点として、被保険者と別居している被扶養者がいるケースでは、仕送りの事実と仕送り額の確認できる書類を提出する必要があります(※)。具体的には、振込の場合は預金通帳の写し、送金の場合は現金書留控えの写しを提出する必要があります。預金通帳の写しを提出する場合で、仕送りとは関係のない箇所が見られたくないときはマスキング(黒く塗りつぶす等)をして差し支えありません。
 ※学生の場合はこの提出を省略できます。

 また、昨年11月に厚生労働省より「年収の壁・支援強化パッケージ」が示され、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明を添付することで、迅速な被扶養者認定を可能とする方針が示されました。今回の書類の提出にあたって、被扶養者の収入確認を行った際に、年収が130万円(被扶養者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害を有する者の場合は180万円)以上の場合で、人手不足による労働時間の延長等に伴い、一時的に収入が増加していることが確認できた場合は、被扶養者が勤務する会社で一時的な収入変動である旨の証明を発行してもらい、併せて提出することが必要です。

 提出期限は2024年11月29日ですが、従業員に被扶養者の要件を満たしていることが確認できる書類を準備してもらうケースがあるため、早めに依頼しましょう。

 

■参考リンク
協会けんぽ「事業主・加入者のみなさまへ「令和6年度被扶養者資格再確認について」
協会けんぽ「事業主・加入者のみなさまへ「令和5年度被扶養者資格の再確認にご協力いただきありがとうございました

 

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10月1日 30.1%まで上昇した男性の育児休業取得率

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近年、国として男性の育児休業の取得を促進しており、実際に多くの企業で育児休業を取得する男性従業員が増加しています。そこで、厚生労働省が先日公表した「令和5年度雇用均等基本調査」(以下、「調査」という)の中から、最新の男性の育児休業取得率と育児休業の取得期間、そして今後対象企業の拡大が予定される育児休業等の取得率の公表についてとり上げます。

[1]男性の育児休業取得率と育児休業の取得期間
 男性の育児休業の取得率は長年低迷していましたが、社会の変化や政策の後押しもあり、ここ数年、急速に取得率が上昇しており、2023年度は30.1%となりました。前年度(17.13%)から13.0ポイントの大幅上昇となり、調査以来、過去最高となりました。
 男性の育児休業はこれまで数日間など、非常に短いものが多いとされてきましたが、2023年度の育児休業の取得期間(2022年4月1日から2023年3月31日までの1年間に育児休業を終了し、復職した男性の育児休業期間)は長期化の傾向が見られ、「1ヶ月~3ヶ月未満」が最多となりました。育児休業の取得期間の割合を2018年度、2021年度と比較してみると、下表のようになります(※表はクリックで拡大されます)。2週間以上取得する人の割合が増えていることがわかります。

[2]男性の育児休業等の取得率の公表
 今回の男性の育児休業取得率の上昇の背景には、2022年10月に出生後育児休業が創設されたこともありますが、育児・介護休業法により従業員数1,000人を超える企業に対して、男性の育児休業等の取得率の公表が義務付けられたことが関係していると言われます。この公表義務の対象となる企業が、2025年4月より従業員数300人を超える企業に拡大されます。

 この公表の義務対象企業の拡大により、来年度以降、更なる男性の育児休業等の取得が進むことになるでしょう。男性も育児休業を取得するのは当たり前という雰囲気が社会的に醸成されることにより、公表義務のない中小企業においても男性からの育児休業等取得の申し出は増加するはずです。そのようなときに業務が混乱するようなことがないよう、いまから体制整備を行っておきたいものです。

■参考リンク
厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査
厚生労働省「育児・介護休業法について

 

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9月24日 マイナ保険証への一本化 健康保険証の廃止とその後の対応

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

2024年12月2日から、現在の健康保険証の新規発行が廃止され、マイナンバーカードを健康保険証として利用登録した「マイナ保険証」の本格的な利用が始まります。
そこで、マイナ保険証の本格的な利用に合わせて確認しておきたい内容についてとり上げます。

[1]健康保険証の廃止
 従業員が健康保険の被保険者となり、また従業員の家族が健康保険の被扶養者となったときには、協会けんぽ等の健康保険の保険者から健康保険証が発行されます。
この健康保険証の新規発行が、2024年12月2日以降、行われなくなります。なお、2024年12月1日までに発行された健康保険証は、経過措置として2025年12月1日まで使用できます。
2025 年12月1日までに従業員が退職すること等で使用できなくなった健康保険証は、これまで通り、会社で回収する必要がありますが、2025年12月2日以降、使用できなくなった健康保険証は、従業員自身で破棄することが認められます。

 

[2]資格情報のお知らせ
 マイナ保険証の本格的な利用に伴い、2024年9月以降、協会けんぽから、会社を経由して、加入している被保険者および被扶養者の全員に「資格情報のお知らせ」が届く予定となっています。このお知らせには、被保険者資格等の基本情報が記載されており、マイナ保険証を安心して利用できるようにするとともに、協会けんぽに加入している人自身が、健康保険の資格情報を簡易に把握できるようにするために行われるものです。
お知らせの中には、医療保険のデータベースに登録されているマイナンバーの下4 桁も表示されることになっており、データベースにマイナンバーが登録されているかの確認もできます。
なお、マイナンバーを協会けんぽに提出していない場合は、当然記載されていません。マイナンバー提出のための申出書が同封されるため、この機会に提出し、マイナ保険証の利用を促し
たいところです。

 

[3]資格確認書
 マイナンバーカードを作っていない人や、マイナ保険証の利用登録をしていない人もいます。
このような人は、協会けんぽから交付される資格確認書を提示することにより、これまで通りの保険診療を受けられるようになります。ただし、資格確認書を用いるときには、マイナ保険
証を利用することで受けられるメリットを受けることができません。
協会けんぽの資格確認書は、従来の健康保険証と同じプラスチックカード型のもので、色が黄色となるとのことです。4~5年の有効期限が設けられるため、4 ~5年に1度の差し替え
が必要になります。

 健康保険証の廃止とその後の対応は、従業員やその家族に大きな影響があります。会社としても従業員に早めに周知し、マイナンバーカードの作成や、マイナ保険証の利用登録を勧めることを検討したいところです。

 

■参考リンク
厚生労働省「マイナンバーカードの保険証利用について(被保険者証利用について)」

 

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9月17日 企業に求められる過労死等防止のための対策

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

2014年6月に過労死等防止対策推進法が成立してから10年が経過しました。これまで同法に基づき策定された「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(以下、「大綱」という)において、様々な取り組みが定められ、推進されてきましたが、この大綱が2024年8月に変更されました。そこで以下では、今回の変更箇所の中から主要な事項についてとり上げます。

 

[1]時間外労働の上限規制の遵守徹底
 今年4月より、すべての事業所で時間外労働の上限規制が適用されています。これを受けて、労働基準監督署において、その遵守徹底を図ることとしています。
 また、商慣行・勤務環境等を踏まえた取組みとして、以下のように業種等の分野ごとの取組事項が示されました。

【例:トラック運送業】

  • 緊急増員したトラックGメンによる是正指導の大幅強化や「標準的運賃」の8%引き上げ改定により、取引環境の適正化に向けた取組を推進する。
  • 2024年4月に、構造的な対策として、物流効率化や賃上げ原資確保のための適正な運賃導入を進める法律が成立したことを受け、同法の施行に向けて政省令等の整備を進める。
  • 2024年通常国会に、処遇改善に向けた賃金原資の確保と下請事業者までの行き渡り、資材価格転嫁の円滑化による労務費へのしわ寄せ防止、更には、働き方改革や現場の生産性向上を図ることを内容とする法律が成立したことを受け、それに基づく取組を推進する。


[2]過労死等を発生させた企業に対する再発防止対策
 過労死等を発生させた事業場に対しては、監督指導または個別指導を実施し、企業本社における全社的な再発防止対策の策定を求める指導を実施するとしています。
 また、一定期間内に複数の過労死等を発生させた企業に対しては、企業の本社を管轄する都道府県労働局長から「過労死等の防止に向けた改善計画」の策定が求められ、同計画に基づく取組を企業全体に定着させるための助言・指導(過労死等防止計画指導)を実施するとしています。

 

[3]多様な働き方への対応
 テレワーク、副業・兼業、フリーランスといった多様な働き方について、それぞれの労働環境の状況に応じた取組みが推進されます。特にフリーランスについては今年11月に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」が施行されることから、この周知と施行後の履行確保に向けた取組みが行われます。

 

[4]過労死等防止対策の数値目標
 労働時間、勤務間インターバル制度、年次有給休暇、メンタルヘルス対策について、数値目標が設定されています。
 この中で労働時間については、2028年までに週労働時間40時間以上の雇用者のうち、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下(2023年8.4%)とすることが掲げられています。年次有給休暇については、2028年までに取得率を70%以上にすることが掲げられています。

 慢性的な人手不足に陥っている企業が増加しており、そうした企業においては残業や休日出勤によってサービスレベルを維持しているというケースも少なくありません。過重労働は従業員の命や健康を脅かす危険性がありますが、それ以前に従業員の離職の原因にもなります。安定的な人材確保のためにも、業務改善を通じた過重労働の防止を進めましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更が本日、閣議決定されました

 

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9月10日 2023年度の労基署監督指導における賃金不払事案件数は21,349件

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

先月、厚生労働省は「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和5年)」を公表しました。これは2023年1月から2023年12月までに、全国の労働基準監督署が、賃金不払が疑われる事業場に対して実施した監督指導の結果を取りまとめたものです。以下ではその結果と実際の監督指導の事例をとり上げます。

 

[1]監督指導状況
 2023年に全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払事案の件数、対象労働者数及び金額は以下のとおりです。

 件数 21,349件(前年比 818件増)
 対象労働者数 181,903人(同 2,260人増)
 金額 101億9,353万円(同 19億2,963万円減)

 これらの賃金不払事案のうち、令和5年中に会社が賃金を支払い、解決した最大の事案の支払金額は2.3億円でした。一方、この件数を業種別にみてみると、商業の4,407件が一番多く全体の21%を占め、製造業4,174件、保健衛生業3,261件、接客娯楽業2,685件、建設業2,047件と続いています。

 

[2]監督指導の対象となった事案
 本結果の中では「監督指導による是正事例」が紹介されています。自社の労働時間管理の在り方を見直す際の参考となりますので、ここでは労働時間の適正な把握に関する指導事例をとり上げます。

[概要]
 過重労働による労災請求がなされたことを受け、労働基準監督署が立入調査を実施。

  • 労働時間は、勤怠システムにより管理を行っているが、当該システムに搭載された端数処理機能を用いて、日ごとの始業・終業時刻のうち15分未満は切り捨て、休憩時間のうち15分未満は15分に切り上げる処理が行われていた。
  • 着用が義務付けられている制服への着替えの時間を、労働時間としていなかった。

[労働基準監督署の指導]

  1. 労働時間を適正に把握するための具体的方策を検討・実施すること。
  2. 過去に遡って、労働時間の状況について労働者に事実関係の聞き取りを行うなど、実態調査を行い、実際の支払額との差額の割増賃金の支払いが必要になる場合は、追加で支払うこと。

 その後の対応として、会社は、正しい労働時間数を把握し、再計算の上、差額の割増賃金を支払ったようです。また、勤怠システムの設定を見直し、始業・終業時刻の切り捨て、休憩時間の切り上げ処理をやめ、1分単位で労働時間を管理することとし、制服への着替えの時間についても労働時間とすることとしました。

 労働時間管理は労務管理の基本となります。過重労働を防止すると共に、賃金不払残業を発生させないよう、労働時間の適正把握、管理を徹底していきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和5年)を公表します

 

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9月3日 無用な解雇トラブルを防止するために知っておきたい解雇予告の注意点

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

従業員が重大な問題を起こしたり、勤務成績や業務の能率が著しく不良で会社が何度も指導を行っていたにも関わらず、改善が見られないといった理由により、従業員を解雇せざるを得ないケースがあります。解雇は従業員の働く場を奪うことになり、大きなトラブルに発展することも少なくありません。そこで、今回は解雇を行う際に求められる手続きについて解説します。

 

[1]解雇と解雇予告
 そもそも解雇とは、会社から一方的に労働契約を終了させることですが、解雇するときには少なくとも30日前までに予告をするか(解雇予告)、30日前までに予告せず解雇する場合には30日分以上の平均賃金を支払う(解雇予告手当)必要があります。なお、解雇予告と解雇予告手当の支払いを併用することも可能であり、解雇予告手当を支払った日数について、解雇予告の日数を短縮する(例えば10日前に解雇の予告を行い、併せて20日分の平均賃金を支払う)ことも認められています。

[2]解雇予告を行う際の注意点
 解雇予告は、会社からの解雇する意思が従業員に伝わったところで効力が発生することから、いつの時点で伝わったかを確認しておく必要があります。通知方法には口頭によるものと文書によるものがあり、口頭の場合は申渡しがなされたとき、文書の場合は従業員にその文書が届き、その内容を知り得る状態におかれたときとなります。なお、口頭の場合は後々、「言った、言わない」などのトラブルに発展しやすいため、口頭で申渡した上で、文書を交付することが望ましいでしょう。

 

[3]解雇予告手当を支払う際の注意点
 事前に解雇予告を行わず、即時解雇を行う場合には解雇予告手当として30日分以上の平均賃金の支払いが必要となりますが、この解雇予告手当の支払いは、解雇の申渡しと同時に行うことになっています。なお、解雇予告と解雇予告手当の支払いを併用するときには、解雇日までに解雇予告手当を支払うことになっています。

 解雇を行う際の手続きはこのようになっていますが、そもそも解雇は会社が自由に行うことができるものではなく、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効となります。つまり、解雇事由の内容や程度がその有効性判断のポイントとなり、雇用を継続することができないという状況に至ってはじめて解雇を行うことが認められます。そのため、会社としては、問題行動が見られた際や勤務成績や業務の能率に問題があるときには、その都度注意・指導を行い、その際の対応記録を残しておくことが重要になります。解雇を行う際の手続きを守れば解雇ができるわけではない点に十分注意しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール

 

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8月27日 電子申請が義務となる労働安全衛生関係の手続き

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

社会保険の手続きを始めとし、様々な手続きについて、徐々に電子化される流れが進んでいます。これは、電子申請の義務化や、電子申請の利便性が向上したことの影響が大きいと言われています。そして、2025年1月からは、労働安全衛生関係の一部の手続きについて電子申請が義務化されることが決まっています。

 

[1]電子申請の対象となる手続き
 電子申請が原則義務化されるのは以下の手続きです。

  • 労働者死傷病報告
  • 総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任報告
  • 定期健康診断結果報告
  • 心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)結果等報告
  • 有害な業務に係る歯科健康診断結果報告
  • 有機溶剤等健康診断結果報告
  • じん肺健康管理実施状況報告

 義務化される手続き以外にも、足場/局所排気装置等の設置・移転・変更届(労働安全衛生法第88条に基づく届出)、特定化学物質などにかかる各種特殊健康診断結果報告など、多くの届出が電子申請することができます。

[2]電子申請のメリット
 電子申請を活用することで、労働基準監督署へ出向くことなく、時間や場所にとらわれず手続きすることが可能となります。電子申請と聞くと、電子署名や電子証明書が必要なイメージがありますが、電子申請が義務化される手続きにおいては不要です。なお、電子申請を行う際には以下の3ステップが求められます。

STEP1 e-Govアカウント登録
STEP2 ブラウザの設定
STEP3 アプリケーションのインストール

[3]労働者死傷病報告の提出に際して誤解しやすい点
 電子申請が義務化される手続きのなかで、労働者死傷病報告の提出について誤解しやすいポイントがありますので、改めて確認しましょう。労働者死傷病報告は、労災保険の休業補償給付を受けたときに提出するものだと誤解されることがありますが、労働災害が発生した際に提出すべきものであるため、休業4日未満で労災保険の休業補償給付を受けない場合であっても、提出する必要があります。これは、労働者死傷病報告の目的が労災事故を把握し、事故の防止につなげることにあるためです。提出する根拠は、労災保険法ではなく、労働安全衛生法および労働安全衛生規則にあります。

 電子申請の義務化まで数ヶ月ありますが、今のうちから電子申請に対応できるように準備を進めておきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます
厚生労働省「労働局・労働基準監督署への申請・届出はオンラインをご活用ください

 

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8月20日 引き続きトップとなった「いじめ・嫌がらせ」の相談件数

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

先月、厚生労働省より「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」の集計結果(以下、「集計結果」という)が公表されました。個別労働紛争解決制度とは、個々の労働者と事業主との間の労働に関する紛争について実情に即した迅速かつ適正な解決を図るためのものであり、具体的には、(1)都道府県労働局内や労働基準監督署内に設置された総合労働相談コーナーでの総合労働相談、(2)都道府県労働局長の助言・指導制度、(3)紛争調整委員会のあっせん制度の3つの仕組みがあります。

 

[1]集計結果の内容
 今回の集計結果をみると、令和5年度に寄せられた総合労働相談件数は1,210,400件と4年連続で120万件を超え、高止まりの状態となっています。
 また、労働基準法上の違反を伴わない解雇、労働条件の引下げ等のいわゆる民事上の個別労働紛争に関する相談件数の推移をグラフ化したのが下図※になります。内容別で見ると、トップは「いじめ・嫌がらせ」に関する相談の122,976件で、不動の首位となっています(図はクリックで拡大されます)。
※2022年4月の改正労働施策総合推進法の全面施行に伴い、これまで「いじめ・嫌がらせ」に含まれていた同法上のパワーハラスメントに関する相談は全て別途集計することとなされたため、労働施策総合推進法に関するパワーハラスメントの相談件数(2022年は50,840件、2023年は62,863件)を加えています。

[2]パワーハラスメントの実態と防止措置
 「いじめ・嫌がらせ」は、パワーハラスメントの一類型となりますが、2024年5月に公表された令和5年度厚生労働省委託事業「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書によると、過去3年間に勤務先で受けたハラスメントとしては、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、顧客等からの著しい迷惑行為の中では、パワーハラスメントが19.3%ともっとも多く、次いで顧客等からの著しい迷惑行為が10.8%、セクシュアルハラスメントが6.3%となっています。


 受けたパワーハラスメントの内容については、「脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)」が48.5%ともっとも多くなっています。パワーハラスメントの防止対策のため、社内で研修を実施することがありますが、例えば「脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)」との指摘を受けることなくコミュニケーションを図るため、どのように注意すべきかを具体的に解説して、受講する従業員に理解してもらうとよいでしょう。

 そもそも労働トラブルに発展させないための、予防的な労務管理が重要になってきます。取り組む際に何かお困りごとがございましたら早めに当事務所までご連絡ください。

■参考リンク
厚生労働省「「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します
厚生労働省「都道府県労働局雇用環境・均等部(室)における雇用均等関係法令の施行状況について
厚生労働省「「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します

 

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■夏季休業のご案内

社会保険労務士サムライズでございます。
平素より格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。

弊事務所では、誠に恐縮ではございますが以下の期間を夏季休業とさせていただきますので、ご案内申し上げます。

〇夏季休業 2024年8月10日(土)~2024年8月15日(木)まで〇

2024年8月16日(金)午前9時より通常通り営業いたします。
ご不便をおかけいたしますが、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。

8月6日 2025年4月から厳格化される育児休業給付の延長手続き

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

育児休業の延長・再延長時には、一定の要件を満たした場合、雇用保険の育児休業給付金についても支給が延長されることになっています。2025年4月1日より、この育児休業給付金の延長・再延長時の手続きが厳格化されます。以下では、この内容をとり上げます。

[1]手続き変更の背景

 今回、延長・再延長時の育児休業給付金の手続きの変更に関しては、令和5年の地方分権改革に関する提案募集において、自治体から「保育所等への入所意思がなく、給付延長のために申し込みを行う者への対応に時間が割かれる」、「意に反して保育所等への入所が内定となった方の苦情対応に時間を要している」として、見直しの要望があったという背景があります。これを受けて、「令和5年の地方からの提案等に関する対応方針」(2023年12月22日閣議決定)において、ハローワークで延長可否を判断することを明確化する方向で検討が行われ、検討の結果に基づいて必要な措置を講ずるとされていました。今回、これを受けて、雇用保険法施行規則が改正され、手続きの見直しが行われました。

[2]2025年4月以降の手続き
 2025年4月以降の延長時には、市区町村の発行する入所保留通知書などの確認に加え、保育所等の利用申し込みが、速やかな職場復帰のために行われたものであると認められることが必要になります。具体的には、次の書類を、延長時・再延長時の「育児休業給付金支給申請書」に必ず添付する必要があります。

  • 育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
  • 市区町村に保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し
  • 市区町村が発行する保育所等の利用ができない旨の通知(入所保留通知書、入所不承諾通知書など)

 育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書については、既に厚生労働省のホームページにおいて様式が公開されています。様式には保育所等の申込みの状況を記載することになります。裏面には記入する上での注意事項があり、従業員本人から会社に記載について質問が入る可能性があるため、先に目を通しておくとよいでしょう。

 今回の変更となる手続きの対象は、子が1歳に達する日または1歳6ヶ月に達する日が2025年4月1日以後となる従業員で、育児休業給付金の支給対象期間の延長を行う場合となります。円滑な手続きの実施のためには、書類を揃えておくように事前に従業員に案内しておくことが重要になります。厚生労働省から公開されているリーフレットを活用するなどして、早めに対象となる従業員に周知しておきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「育児休業給付金の支給対象期間延長手続き
厚生労働省「2025年4月から保育所等に入れなかったことを理由とする育児休業給付金の支給対象期間延長手続きが変わります

 

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7月30日 増加する精神障害の労災支給決定件数 求められるハラスメント対策

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

多くの企業で、従業員がメンタルヘルス疾患を発症し、欠勤や休職をするケースが増加しています。その中には、仕事による強いストレスがその原因となっている事例もあるようです。2024年6月に発表された厚生労働省の資料によると、精神障害を理由とした労災の請求件数、そして支給決定件数が大幅に増加しています。そこで以下では発表された資料の内容を確認した上で、企業に求められる対策について見ていきます。

 

[1]精神障害の労災補償状況
 精神障害の労災補償状況は図のとおりとなっています。2023年度の請求件数は3,575件で、前年度の2,683件から892件の大幅増加となりました。請求件数は過去最多となり、今回、3,000件を初めて超えています。

 また、支給決定件数については883件となり、前年の710件から173件の増加となり、こちらも過去最多となっています。そして、支給決定件数の中で、多い業種(中分類)の上位4つをみてみると、社会保険・社会福祉・介護事業112件、医療業105件、総合工事業57件、道路貨物運送業56件で、医療・福祉の業種で多いことが分かります。認定率については34.2%で、申請の3件に1件の割合で労災として認定されています。
※図はクリックで拡大されます。

 

[2]具体的な出来事
 支給の決定は、その傷病に繋がる具体的な出来事があったかを確認して判断されますが、支給決定の内容を具体的な出来事別に分類すると、その上位は以下の通りとなっています。

  1. 上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた(157件)
  2. 業務に関連し、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした(111件)
  3. セクシュアルハラスメントを受けた(103件)
  4. 仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった(100件)
  5. 特別な事情(71件)
  6. 同僚等から、暴行又はひどいいじめ・嫌がらせを受けた(59件)

 支給決定件数(883件)のうち、上司等からのパワーハラスメント(157件)がトップとなっています。近年は多くの企業でパワーハラスメント防止対策が進められていますが、この問題はまだまだ解決には至っていません。定期的に研修を開催したり、管理職同士で注意しあえる関係を作ったりするなど、継続的な防止対策が求められます。

 

■参考リンク
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)

 

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7月23日 来年4月に創設される「共働き・共育て」のための給付金

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

昨年12月25日に閣議決定された「こども未来戦略」では、共働き・共育ての推進として、「男性育休の取得促進」、「育児期を通じた柔軟な働き方の推進」および「多様な働き方と子育ての両立支援」の3つの方針が掲げられました。そこで今回は、これらの具体的な対応策として、2025年4月1日から始まる雇用保険の給付金をとり上げます。

 

[1]出生後休業支援給付金の創設
 育児休業を取得すると、従業員(雇用保険の被保険者)は所得の補てんとして育児休業給付を受け取ることができますが、育児休業を取得せずに給与を受け取ることと比較し、手取額が低くなります。このように手取額が低くなることが、男性の育児休業の取得が進まない理由の一つと言われています。
 その解消を目的として、子どもの出生直後の一定期間以内に、両親ともに14日以上の育児休業を取得する場合に、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額が「出生後休業支援給付金」として支給されることになります。この給付金に、出生時育児休業給付金または育児休業給付金をあわせると、給付率が80%となり、手取りとしては10割相当が支給される仕組みとなっています。なお、一定期間とは、男性が子どもの出生後8週間以内、女性が産後休業後8週間以内です。
 従業員の中には、配偶者が専業主婦(夫)であったり、ひとり親として育児をしていたりすることもあるため、配偶者が育児休業を取得していない場合であっても、出生後休業支援給付金が支給されます。

[2]育児時短就業給付金の創設
 育児休業中の支援の他に、2歳未満の子どもを養育するために、時短勤務をすることで給与額が下がる場合、時短勤務中に支払われた賃金額の10%を上限に「育児時短就業給付金」が支給されることになります。
 この給付金は、単に時短勤務を推奨するものではなく、育児休業よりも時短勤務を、さらには時短勤務よりも従前の所定労働時間で勤務することを推進する目的で創設されており、これを前提に10%という給付率が決められています。なお、時短後に支給される賃金と給付金の合計額が時短前の賃金を超えないように給付率を調整する仕組みです。

 出生後休業支援給付金の創設により、出生後育児休業(産後8週間以内に4週間を上限として2回に分けて取得できる休業)の申出の増加が予想されます。また、これまで育児の時短勤務は女性従業員の利用が中心でしたが、今後は男性従業員の活用が増えてくることも予想されます。今後の申請方法や、それに沿った社内の手続きの流れを確認していく必要があります。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和6年雇用保険制度の改正内容について(子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律)
こども家庭庁「こども未来戦略(リーフレット等)

 

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7月16日 重要となる職場の熱中症予防対策

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

2023年の職場における熱中症の発生状況を見ると、4日以上休業した死傷者数は1,106人、そのうち死亡者数は31人となり、前年を上回る結果となりました。厚生労働省の「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」(以下、「キャンペーン」という)も7月1日から7月31日までを重点取組期間としており、今夏についても積極的に熱中症の予防対策が求められます。

 

[1]熱中症の定義
 熱中症とは、高温多湿な環境下において、体内の水分と塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻するなどしたりして発症する障害の総称で、めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感、意識障害・痙攣・手足の運動障害、高体温などの症状が現れるとことです。それぞれの症状によって、熱失神、熱けいれん、熱疲労および熱射病といった病名がつけられています。


[2]実施期間の取り組み
 キャンペーンの実施期間は5月1日から9月30日までとされていますが、この期間、以下の3点について重点的な対策の徹底が求められています。

  1. 暑さ指数(WBGT)の把握とその値に応じた熱中症予防対策を実施すること
  2. 作業を管理する人および労働者に対してあらかじめ労働衛生教育を行うこと
  3. 糖尿病、高血圧症など熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病を有する人に対して、医師等の意見を踏まえた配慮を行うことなど
     

[3]重点取組期間の取り組み
 7月1日から7月31日までの重点取組期間中においては、実施すべき事項として、以下の内容が挙げられています。これらの項目を確実に実施しましょう。

  • 暑さ指数の低減効果を再確認し、必要に応じ対策を追加
  • 暑さ指数に応じた作業の中断等を徹底
  • 水分、塩分を積極的に取らせ、その確認を徹底
  • 作業開始前の健康状態の確認を徹底、巡視頻度を増加
  • 熱中症のリスクが高まっていることを含め教育を実施
  • 体調不良の人に異常を認めたときは、躊躇することなく救急隊を要請 

 参考リンクにある厚生労働省「学ぼう!備えよう!職場の仲間を守ろう!職場における熱中症予防情報」では、「働く人の今すぐ使える熱中症ガイト」が公開され、予防法として3つの注意点や暑熱順化などの情報が掲載されています。これらの内容も活用しながら、予防対策を徹底していきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン(職場における熱中症予防対策)
厚生労働省「学ぼう!備えよう!職場の仲間を守ろう!職場における熱中症予防情報

 

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7月9日 3年連続増加となった休業4日以上の死傷者数

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

7月1日から7日までは全国安全週間とされており、厚生労働省・都道府県労働局から各事業場に対して、積極的な労働災害防止活動の実施が働きかけられることになっています。これに関連して、先日、厚生労働省より昨年(令和5年)の労働災害発生状況が公表されました。以下では、労働災害による死傷者数と厚生労働省の取組みについてとり上げます。

 

[1]労働災害による死傷者数

 2023年1月から12月までの労働災害(新型コロナウイルス感染症へのり患によるものを除く)による休業4日以上の死傷者数(以下、「死傷者数」という)は135,371人で、前年より3,016人の増加となり、3年連続で増加となりました。
 業種別でみてみると、製造業の27,194人(対前年比500人増)が一番多く、小売業を含む商業が21,673人(同29人減)、社会福祉施設を含む保健衛生業が18,786人(同1,549人増)、陸上貨物運送事業が16,215人(同365人減)と続いています。
 業種別に事故の型別をみると、製造業では機械等による「はさまれ・巻き込まれ」が最多で、「動作の反動・無理な動作」が続いています。小売業では「転倒」が最も多く、「動作の反動・無理な動作」「墜落・転倒」が続いています。社会福祉施設では「動作の反動・無理な動作」が最も多く、「転倒」が続いています。

[2]厚生労働省の取組
 労働災害による死傷者数における状況を受け、厚生労働省では、小売業、社会福祉施設で多発している「転倒」や「動作の反動・無理な動作」等の減少を図るため、第14次労働災害防止計画に基づき、「労働者(中高年齢の女性を中心に)の作業行動に起因する労働災害防止対策」として、以下の事項を中心に取り組むとしています。

  • 中高年齢の女性労働者に多い転倒災害の発生状況の周知を行うとともに、転倒災害防止のための基本的事項(チェックリスト)の周知指導を行う。
  • エイジフレンドリー補助金等により、転倒災害防止等に資する装備や設備の導入のほか、理学療法士や健康運動指導士等の専門家による労働者の身体機能の維持改善のため取組みの支援を行う。
  • アプリ、動画等を活用した効率的・効果的な安全衛生教育(転倒防止教育を含む)の手法の普及啓発を行う。
  • 事業者による自発的な転倒災害防止対策の取組みの促進のため、転倒災害等による損失額の「見える化」及びその周知啓発を進めるほか、ナッジによる転倒災害防止対策等の行動経済学的アプローチについて引き続き研究を進める。

 労働災害を防止するためには、各事業場の安全衛生管理体制を確認し、不十分な場合は早めに整えていくことが求められます。また、安全作業マニュアルの整備・見直しを実施し、労働災害の防止につなげていきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「令和5年の労働災害発生状況を公表
厚生労働省「令和6年度「全国安全週間」を7月に実施

 

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7月2日 特別休暇を設ける際のポイントと注目を浴びる孫休暇

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

多くの会社では、年次有給休暇のほかにも従業員に慶弔が生じた際などに休暇を与える「特別休暇」を設けています。特別休暇は任意の制度であることから、安定的な運用を行うには、細かな取扱いのルールを決めておくことが重要です。以下では、その取扱いルールを規定する上でのポイントと最近注目を浴びる孫休暇をとり上げます。

 

[1]特別休暇の種類
 厚生労働省作成のパンフレット「特別休暇制度導入事例集2023」では、特別休暇を以下の3つに分けています。

  1. 年次有給休暇の取得促進に資する特別休暇
     例:病気休暇(有給)
  2. 予測できない事情に備えた特別休暇
     例:裁判員休暇・犯罪被害者等の被害回復のための休暇・災害休暇
  3. 従業員の多様な活動を支援する特別休暇
     例:ボランティア休暇・ドナー休暇・自己啓発休暇

[2]特別休暇を設ける際のポイント
 休暇は就業規則への必要記載事項になることから、特別休暇を設ける場合、就業規則等へ規定する必要があります。その際に検討するポイントとして、以下の項目が挙げられます。

  1. 特別休暇を取得できる従業員の範囲
     特別休暇はその趣旨に基づき、対象者を決定することが必要です。例えば、勤続1年以上の従業員や試用期間満了後の従業員など、対象者を限定することが可能です。
  2. 特別休暇の対象となる事由と休暇日数
     従業員の結婚や配偶者の出産、身内の不幸など、特別休暇の対象とする事由(取得目的)は様々です。会社において特別休暇を設ける事由や、そのときの休暇日数を検討します。
  3. 特別休暇取得時の賃金の取扱い
     年次有給休暇を取得したときには、その名称の通り、有給休暇として「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」等の支払いが会社に求められます。一方で、特別休暇を取得したときの賃金の取扱いについては、会社が自由に定めることができます。一般的に慶弔に関する特別休暇は、祝福やお悔やみの意味から有給とする会社が多いことを前提に取扱いを検討するとよいでしょう。

[3]注目を浴びる孫休暇
 最近、自治体等で、孫休暇を設ける動きが見られます。これは、祖父母である従業員が孫の世話や看病のために取得できる休暇です。子育て世代を支援し、子育てを社会全体で行う機運を醸成する目的として、創設を検討する動きが見られます。
 育児・介護休業法では規定されていない休暇であるものの、育児の支援策の一環として創設が期待される休暇でもあります。

 特別休暇の運用において、複数日取得できる休暇を分割して取得する申出があったり、事由が発生した日から相当程度の期間をおいて取得する申出があったりと、会社が対応に困ったというケースもあるでしょう。この機会に、過去の事例を振り返り、規定を見直してもよいかもしれません。

■参考リンク
働き方・休み方改善ポータルサイト「特別な休暇制度-資料

 

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6月25日 今国会で改正された育児・介護休業法の概要

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

2024年の通常国会で改正育児・介護休業法が成立し、同年5月31日に公布されました。2025年4月1日から段階的に施行されるため、その概要を確認しましょう。

 

[1]子どもの年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充

  1. 柔軟な働き方を実現するための措置等(公布後1年6ヶ月以内の政令で定める日に施行)
     3歳から小学校就学前の子どもを養育する従業員について、始業時刻等の変更、テレワーク等、保育施設の設置運営等、新たな休暇の付与および短時間勤務制度の5つの選択肢の中から、会社が2つ以上の制度を選択して導入し、従業員はその中から1つを利用できるようすることが義務づけられます。

  2. 残業免除の対象者の拡大(2025年4月1日施行)
     現行、3歳に満たない子どもを養育する従業員は、請求することで所定外労働の制限(残業免除)の制度を利用できますが、この制度の対象となる従業員の範囲が、小学校就学前の子を養育する従業員にまで拡大されます。

  3. 子の看護休暇の見直し(2025年4月1日施行)
     現行の「子の看護休暇」は、子どもの病気やけが、予防接種・健康診断の際に取得できるものですが、これらの取得事由の他に、感染症に伴う学級閉鎖等や入園(入学)式、卒園式が追加されます。これに合わせて休暇の名称も「子の看護等休暇」に変更となります。
     また、対象となる子どもの範囲が、現行の小学校就学の始期に達するまでから、小学校3年生修了までに延長されます。さらに、労使協定の締結により除外できる従業員について「引き続き雇用された期間が6ヶ月未満」という要件が廃止されます。

  4. 個別の意向聴取・配慮の義務化(公布後1年6ヶ月以内の政令で定める日に施行)
     妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、従業員の仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が会社の義務となります。


[2]育児休業の取得状況の公表義務の拡大(2025年4月1日施行)
 現行、従業員数1,000人超の企業に公表が義務づけられている育児休業取得状況の公表について、従業員数300人超の企業に拡大されます。

 

[3]介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等(2025年4月1日施行)

  1. 個別周知・意向確認の措置、情報提供の義務化
     介護に直面した旨の申出をした従業員に対し、介護両立支援制度等について個別の周知・意向確認を実施することが会社に義務づけられます。また、会社は、介護に直面する前の早い段階(40歳等)の従業員に対して、介護両立支援制度等に関する情報提供を行うことが必要になります。
  2. 雇用環境の整備の義務化
     仕事と介護の両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備として、介護休業に係る研修の実施や介護休業に係る相談窓口設置等の複数ある制度の中から1つ以上を選択して実施することが会社の義務となります。

  3. 介護休暇の対象者の変更
     労使協定の締結により除外できる従業員について「引き続き雇用された期間が6ヶ月未満」が廃止されます。この廃止の内容は子の看護休暇と同様のものです。


 このほかにも、3歳に満たない子どもを養育する従業員や、要介護状態の対象家族を介護する従業員がテレワークを選択できるような制度とすることが会社の努力義務となります。詳細は政省令の公布を待って、今後、厚生労働省から周知されると思われます。

■参考リンク
厚生労働省「育児・介護休業法について

 

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6月18日 今国会で改正された雇用保険法の注目ポイント

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

現在、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上引き続き雇用されることが見込まれる従業員については、雇用保険の被保険者となります。2024年の通常国会で改正雇用保険法が成立し、この被保険者となる従業員の範囲が拡大することになりました。施行日は2028年10月1日とまだ先ですが、どのように変わるのかを確認しておきましょう。

 

[1]雇用保険の適用拡大
 雇用保険の被保険者でなければ、基本手当(いわゆる失業手当)や、育児休業取得時の育児休業給付等は受給できません。働き方や生計維持のあり方の多様化が進展している中で、週の所定労働時間が短い労働者が増えています。そのような背景から、雇用保険の被保険者の範囲を拡大する必要があると判断され、「1週間の所定労働時間が20時間以上」という要件が「1週間の所定労働時間が10時間以上」に変更されることになりました。

[2]被保険者期間の算定基準
 基本手当を受給するには、退職日前2年間に、雇用保険の被保険者であった期間が12ヶ月以上(倒産・解雇等の理由により退職した場合は退職日前1年間に6ヶ月以上)必要になります。ここでの「1ヶ月」とは、賃金の支払の基礎となった日数が11日以上ある月または賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上である月を指します。
 適用拡大に伴い、被保険者の賃金の支払の基礎となった日数が6日以上ある月または賃金の支払の基礎となった時間数が40時間以上である月を「1ヶ月」とすることに変わります。

 

[3]給付制限の見直し
 現在は、自己都合で退職した者が基本手当を受給しようとすると、原則として2ヶ月間の給付制限期間(基本手当が支給されない期間)が設けられています。

 今回の改正で、退職した後や、退職日前1年以内に、一定の教育訓練を受講した場合には、この給付制限が解除されることになりました。また、2ヶ月間の給付制限期間を1ヶ月に短縮する通達改正が行われる予定です。なお、現状、5年間で3回以上、自己都合で離職した場合には給付制限期間が3ヶ月となりますが、この点は改正されない予定です。
 この給付制限の見直しは、適用拡大に先立ち、2025年4月1日に施行されます。

 今回の適用拡大により、被保険者となる従業員が増えることで、雇用保険料の会社負担の増加、そして、各種手続き数の増加による事務負担が生じます。適用拡大が施行されるまでにはまだ時間がありますが、特に短時間のパートタイマー・アルバイトが多い企業では、施行後の影響を事前に確認しておきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要

 

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6月11日 賃上げに取り組む企業への公的支援

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

今年は歴史に残る賃上げの春となりました。中小企業では、賃上げの原資となる業績の改善が見られない中でも、人材の確保・採用、物価上昇への対応などから賃上げを実施したところもあれば、今後、賃上げを検討しているところもあるでしょう。賃上げを行う企業に対しては、いくつかの公的支援が設けられていることから、今回はその内容をとり上げます。

 

[1]業務改善助成金
 業務改善助成金とは、事業場内で最も低い賃金を30円以上引き上げ、設備投資等を行った中小企業・小規模事業者等に、設備投資等の費用の一部を助成する制度です。
 本制度は、事業場内の最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内の事業場が対象となります。例えば地域別最低賃金が950円で、事業場内の最低賃金が985円の場合、差額が50円以内であることから対象となります。
 賃金引上げの際の注意点としては、地域別最低賃金の発効に対応して事業場内の最低賃金を引き上げる場合、発効日の前日までに引き上げる必要があります。また、今年度より、複数回に分けての事業場内の最低賃金引上げが認められなくなり、同一事業場の申請は年1回までとなりました。
 費用の助成率は、下表のとおりです。なお、引き上げる労働者の数と引上げ額の区分に応じて、助成上限額が設けられています。

表 費用の助成率

事業場内最低賃金 助成率
900円未満 9/10
900円以上950円未満 4/5(9/10)
950円以上 3/4(4/5)

※( )は生産性要件を満たした事業場の場合

[2]キャリアアップ助成金
 キャリアアップ助成金に設けられている「賃金規定等改定コース」は、有期雇用労働者等の基本給を定める賃金規定等を3%以上増額する形で改定し、その規定を適用させた場合に助成されるものです。要件としては、以下のすべてに当てはまる必要があります。

  1. キャリアアップ計画の作成・提出
    賃金規定等を増額改定する前日までにキャリアアップ計画を作成し、都道府県労働局へ提出していること。
  2. 賃金規定等の適用
    有期雇用労働者等の基本給を賃金規定等に定めていること。
  3. 賃金アップ
    2.の賃金規定等を3%以上増額改定し、改定後の規定に基づき6ヶ月分の賃金を支給していること。

 3%以上5%未満増額改定した場合に、1人当たり5万円(大企業3.3万円)、5%以上増額改定した場合に6.5万円(大企業4.3万円)が助成されます。なお、1年度1事業所あたりの支給申請上限人数は100人までです。

 

[3]事業再構築補助金
 事業再構築補助金には、成長分野進出枠(通常類型)、成長分野進出枠(GX進出類型)、コロナ回復加速化枠(通常類型)、コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)、サプライチェーン強靱化枠の5つがあります。この中で、短期的に大規模な賃上げを行う場合に補助率が引き上げられているものや、継続的な賃金引上げと従業員の増加に取り組む場合に補助上限の上乗せが設けられているものがあります。
 なお、この補助金は、期間を区切って公募されているため、最新情報を確認ください。

 上記の他、賃上げ促進税制という、中小企業の場合、全雇用者の給与等支給額の増加額の最大45%、大・中堅企業の場合、全雇用者の給与等支給額の増加額の最大35%を税額控除するものがあります。活用を検討される場合は、参考リンク先より詳細をご確認ください。

 

■参考リンク
厚生労働省「業務改善助成金
厚生労働省「キャリアアップ助成金
経済産業省「事業再構築補助金
経済産業省「賃上げ促進税制

 

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6月4日 労災保険特別加入者の給付基礎日額の変更

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労働者災害補償保険(労災保険)は、労働者の業務中や通勤途上の災害等に対して保険給付を行うものであり、労働者ではない事業主や法人の役員等は保険給付の対象になりません。ただし、中小企業の事業主等で、労働者でなくとも、業務の実態や災害の発生状況から見て、労働者に準じて保護することがふさわしいと認められる場合には、一定の手続きを経ることで、労災保険に任意で加入することができます。この仕組みを労災保険の特別加入といいます。以下では、特別加入における給付基礎日額の決定方法、変更方法と変更時の留意点をとり上げます。

 

[1]特別加入者の給付基礎日額の決定方法
 通常の労働者が業務中に発生した災害により、労災保険から休業したときの給付を受け取る場合等では、災害が発生したときの平均賃金をもとに給付基礎日額を計算します。これに対し、特別加入者の給付基礎日額は、事前に16に分かれた給付基礎日額(3,500円~25,000円)から一つを選択し、申請を行うことで決定されます。そして、一旦、決定された給付基礎日額は、年度の途中では変更できません。

[2]特別加入者の給付基礎日額の変更方法
 特別加入者の給付基礎日額は、年度単位(4月から翌年3月)で変更することができ、変更のタイミングは2つあります。1つ目が事前申請といわれ、3月2日から3月31日までに申請をすることで翌年度の給付基礎日額を変更することができます。2つ目が年度更新期間中である6月1日から7月10日までに行うことにより年度の初日に遡って変更することができます。この際、給付基礎日額の変更申請前に災害が発生している場合は、当年度の給付基礎日額変更は認められません。可能な限り、給付基礎日額の変更は、事前申請での対応としたいものです。

 給付基礎日額の変更によって、給付の額が変わります。まもなく年度更新の期間になることから、一度、給付基礎日額が適当な額になっているか確認しておくとよいでしょう。なお、特別加入をするときには、労働保険事務組合に労働保険の事務処理を委託している必要があります。

■参考リンク
厚生労働省「労災保険 特別加入制度のしおり(中小事業主用)

 

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5月28日 在宅勤務手当と割増賃金の算定基礎等の整理

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

新型コロナウイルス感染症の感染防止のために、在宅勤務を導入する企業が増加しましたが、5類移行後は、在宅勤務を廃止し、従業員に出社を求める企業もあるようです。今後、仕事と育児・介護との両立の観点から在宅勤務の活用が求められています。そこで今回は、在宅勤務者へ支給する「在宅勤務手当」の割増賃金に関する取扱いが整理されたため、関連事項も含めまとめます。

 

[1]社会保険の取扱い
 在宅勤務手当は、日本年金機構の「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の中で、社会保険の報酬や賞与(以下、「報酬等」という)に該当するか否かは、在宅勤務手当が実費弁償に当たるか否かによって、基本的に以下の判断基準で考えることになります。なお、支給要件や支給実態などを踏まえて個別に判断する必要があります。

  • 在宅勤務者に毎月5,000円を渡し切りで支給するように、従業員が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を会社に返還する必要がないものであれば、労働の対償として支払われる性質があるとして報酬等に含まれる。
  • 業務に使用するパソコンの購入や通信に要する費用を会社が従業員に支払うような場合、その手当が業務遂行に必要な費用にかかる実費分に対応するものと認められるのであれば、実費弁償に当たるものとして、報酬等に含まれない。

[2]割増賃金の取扱い
 割増賃金の基礎となる賃金(以下、「割増算定基礎賃金」という)には、家族手当、通勤手当、別居手当等の7つの除外賃金が定められており、除外賃金以外の賃金は割増算定基礎賃金に算入する必要があります。
 在宅勤務手当はこれまで除外賃金に含まれていませんでしたが、厚生労働省は「割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて」(令和6年4月5日基発0405第6号)を発出し、在宅勤務手当が事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給されていると整理される場合には、労働基準法上の「賃金」には該当せず、割増算定基礎賃金への算入は不要と示しました。

 

[3]所得税の取扱い
 所得税については、国税庁から「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」が公開されており、その中で「在宅勤務に通常必要な費用について、その費用の実費相当額を精算する方法により、企業が従業員に対して支給する一定の金銭については、従業員に対する給与として課税する必要はありません」と示されています。

 これまで割増算定基礎賃金として算入してきた在宅勤務手当を、割増算定基礎賃金から除外するときは、割増賃金額の減少につながり、労働条件の不利益変更に当たると考えられます。そのため、労使で十分な議論を行った上で見直しを進めることが求められます。

■参考リンク
日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集
厚生労働省「割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて
国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)

 

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5月21日 注意が必要な36協定の「1ヶ月の時間数」の考え方

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

労働基準法では、従業員に対し、1日8時間、1週40時間を超えて働かせてはならないとしています(法定労働時間)。また、休日については、毎週少なくとも1日与えなければならないとしています(法定休日)。この法定労働時間を超え、または法定休日に働かせる場合には、事前に「時間外労働・休日労働に関する協定」(以下、「36協定」という)を締結し、労働基準監督署に届出する必要があります。以下では、この36協定で定める時間外労働・休日労働の時間数についてとり上げます。
※本記事では、法定休日の労働のことを「休日労働」と呼びます。

[1]36協定で定める時間
 36協定には、以下の通り一般条項と特別条項があります。

[一般条項]
 36協定では時間外労働や休日労働の時間数を定めます。時間外労働については、以下の通り、上限の時間数が決まっています。

 1ヶ月:45時間(42時間)
 1年:360時間(年320時間)
※()内は1年単位の変形労働時間制の場合

[特別条項]
 一般条項の上限を超えて、一時的または突発的に時間外労働や休日労働等を命じなければならないことがあります。このようなときを想定し、一般条項を超える時間数を、特別条項として定めることができます。なお、特別条項にも以下の通り、上限の時間数が設けられています。

 1ヶ月:100時間未満(2~6ヶ月平均で80時間以内)
 1年:720時間以内

 さらに特別条項には、この上限の時間数のほか、1年について6ヶ月(6回)以内という回数の上限も設けられています。

[2]一般条項と特別条項の違い
 一般条項の1ヶ月の時間数は、時間外労働の時間数のみをカウントすることになっています。これに対し、特別条項の1ヶ月の時間数は、時間外労働に加え、休日労働の時間数もカウントすることになっています(以下の例参照)。

[36協定における1ヶ月の時間数の考え方]

●一般条項
 時間外労働:30時間
 →この時間数のみで判断し、30時間となる
 休日労働:24時間
 →カウントの対象にならない

●特別条項
 時間外労働:50時間
 休日労働:24時間
 →両方の時間数をカウントし、74時間となる

 このため、時間外労働と同時に休日労働も命じているときは、特別条項を適用する段階になって、想定した時間数を超える1ヶ月の時間数となっていることがあります。そのため、一般条項を適用しているときも休日労働の時間数を意識する必要があります。

 各種情報から1ヶ月当たり80時間を超えていると考えられる事業場に対して、労働基準監督署が指導を実施する方向となっています。特別条項の1ヶ月の時間数の上限は100時間未満となっていますが、特別条項を設けるときには、これを上限と考えるのではなく、特別条項の位置づけも念頭におき、実効性のある時間外労働等の時間数の削減も考える必要があります。

■参考リンク
厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

 

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5月14日 障害者雇用の現状と障害者を雇用する際の課題・配慮事項

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

障害者雇用に関しては、2024年4月より法定雇用率が2.5%に引き上げられ、更に2026年7月には2.7%に引き上げられます。法定雇用率の引き上げに対応すべく、新規雇用を進めている企業も多いかと思われます。重要性を増す障害者雇用ですが、これに関連して、先日、厚生労働省から「令和5年度障害者雇用実態調査」の結果(以下、「調査結果」という)が公表されました。以下では、この調査結果から、障害者雇用の現状と障害者雇用に当たっての課題・配慮事項について確認します。

 

[1]障害者雇用の現状
 この調査は、2023年6日1日現在(賃金および労働時間については2023年5月中)で実施されたもので、常用労働者5人以上を雇用している民営事業所(以下、「従業員規模5人以上の事業所」という)から無作為に抽出した約9,400事務所を対象に行われたものです。
 調査結果によれば、従業員規模5人以上の事業所に雇用されている障害者数は110万7,000人で、前回調査が行われた2018年度と比べて25万6,000人増加しました(2018年度は85万1,000人)。この内訳をみてみると、身体障害者が52万6,000人(同42万3,000人)、知的障害者が27万5,000人(同18万9,000人)、精神障害者が21万5,000人(同20万人)、発達障害者が9万1,000人(同3万9,000人)でした。
 一方、職業別に雇用者数の割合をみてみると、身体障害者と精神障害者では事務的職業、知的障害者と発達障害者ではサービスの職業がもっとも多くなっています。

[2]障害者雇用に当たっての課題・配慮事項
 障害者を雇用する際の課題について、すべての障害の種別において、「会社内に適当な仕事があるか」がもっとも多くなっています。また、身体障害者では、「職場の安全面の配慮が適切にできるか」という項目が続いています。
 次に、雇用している障害者への配慮事項について、割合の多いものをみてみると、以下のようになっています。障害の種別に応じて、様々な配慮が行われていることが分かります。

 

※()は割合

[身体障害者]
休暇を取得しやすくする、勤務中の休憩を認める等休養への配慮(40.2%)
通院・服薬管理等雇用管理上の配慮(38.3%)
短時間勤務等勤務時間の配慮(37.9%)

[知的障害者]
能力が発揮できる仕事への配置(51.1%)
短時間勤務等勤務時間の配慮(50.9%)
業務実施方法についてのわかりやすい指示(50.3%)

[精神障害者]
短時間勤務等勤務時間の配慮(54.3%)
休暇を取得しやすくする、勤務中の休憩を認める等休養への配慮(50.9%)
通院・服薬管理等雇用管理上の配慮(49.2%)

[発達障害者]
休暇を取得しやすくする、勤務中の休憩を認める等休養への配慮(61.2%)
短時間勤務等勤務時間の配慮(50.9%)

 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、障害者の雇い入れや雇用の継続などに取り組む事業主に対する助成金制度を設けています。下記の参考リンクから、取り組み内容や目的別に利用可能な助成金を探すことが可能です。このような助成金も活用しながら、障害者の雇用・定着を進めていきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査の結果を公表します
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用納付金関係助成金 取り組み事例で探す

 

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5月7日 企業の不妊治療への支援制度と助成金制度

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

従業員が不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりに取り組む動きが広がりつつあります。不妊治療と仕事の両立については、2021年2月に次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定指針が改正され、一般事業主行動計画に盛り込むことが望ましい事項として追加され、2021年4月より適用されています。以下では、先月、厚生労働省から公表された「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」(以下、「調査」という)の結果から、企業の不妊治療への支援制度の導入状況を見ると同時に、関連する助成金制度についてとり上げます。

 

[1]不妊治療への支援制度
 この調査は、「女性の活躍推進企業データベース」においてデータ公表を行っている企業を対象として、2023年7月から8月にかけて実施されたもので、回答があった従業員規模10人以上の企業1,859社(労働者アンケート調査については男女労働者2,000人)に行い、その調査結果を集計したものが公表されています。
 調査結果によると、不妊治療のための制度がある企業は26.5%で、もっとも多く導入されている制度は、不妊治療に利用可能な休暇制度が47.8%、不妊治療に利用可能な勤務時間や場所等の柔軟性を高める制度(テレワークを含む)が19.4%、不妊治療に利用可能な通院や休息時間を認める制度が14.3%となりました。この不妊治療に利用可能な勤務時間や場所等の柔軟性を高める制度については、半日単位・時間単位の休暇制度がもっとも多く、テレワーク(在宅勤務)、短時間勤務、フレックスタイム制度と続いています。

[2]両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)
 このような企業の取組を支援する助成金として、両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)が設けられています。これは、不妊治療と仕事との両立に資する職場環境の整備に取り組み、不妊治療のために利用可能な休暇制度や両立支援制度を従業員に利用させた中小企業が対象となる助成金です。対象となる事業主の要件と支給額は以下の通りです。

[対象となる事業主]
次の1から6のいずれかまたは複数の制度を導入し、従業員に利用させた事業主です。
1.不妊治療のための休暇制度(多目的・特定目的とも可)
2.所定外労働制限制度
3.時差出勤制度
4.短時間勤務制度
5.フレックスタイム制度
6.テレワーク

[支給額]
A「環境整備、休暇の取得等」
 最初の従業員が休暇制度・両立支援制度を合計5日(回)利用 30万円
B「長期休暇の加算」
 Aを受給し、従業員が不妊治療休暇を20日以上連続して取得 30万円
※A・Bとも1事業主あたり1回限りの支給

 申請にあたっては、企業トップが制度の利用促進についての方針を全従業員に周知し、社内ニーズの調査を行い、制度の利用の手続き等を就業規則等に定めて周知することが必要です。このほか、両立支援担当者の選任、不妊治療両立支援プランの策定も必要です。

 厚生労働省のサイトには、事業主向けに「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」、本人、職場の上司、同僚向けに「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」が公開されています。今後、企業の支援制度を検討する際には、このようなマニュアル等も活用するとよいでしょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」結果について
厚生労働省「不妊治療と仕事との両立のために

 

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4月30日 今後注目が高まる仕事と介護の両立における課題

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

異次元の少子化対策として、仕事と育児の両立に注目が寄せられていますが、一方で高齢化や高齢者雇用の増加に伴う仕事と介護の両立も、企業が取り組むべき重要課題となっています。そんな中、経済産業省は、仕事をしながら家族の介護に従事する従業員(ビジネスケアラー)を取り巻く課題への対応として、企業経営における仕事と介護の両立支援が必要となる背景・意義や両立支援の進め方などをまとめた「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を公表しました。以下では、この背景とポイントをとり上げます。

[1]ガイドライン策定の背景
 ビジネスケアラーの数は現在増加傾向であり、2030年時点では約318万人に上り、経済損失額は約9兆円という試算が出されています。このような労働損失の影響を抑えることが必要になっています。
 企業にとっても、従業員が抱える介護の問題は、従業員本人のパフォーマンスの低下や介護離職などに繋がり、結果として、事業活動の継続にも大きなリスクを生じさせることになります。そのため、企業としての取り組みを進めるべき重要な時期に来ています。

[2]ガイドラインのポイント
 ガイドラインでは、経営者層を対象に、企業が取り組むべき事項を以下の3つのステップで、具体的に示しています。
 
[STEP1]経営層のコミットメント
仕事と介護の両立支援において全社的に取り組む意向を示す
□経営者自身が知る
 「介護」を知り、企業活動への影響の可能性を認識しているか?
□経営者からのメッセージ発信
 仕事と介護の両立施策推進に向けて、ポリシーを発信しているか?
□推進体制の整備
 担当役員設置/担当者の指名、管理職層の巻き込みができているか?

[STEP2]実態の把握と対応
組織内での仕事と介護の両立における影響・リスクを把握
□アンケート・聴取
 社内の介護に関する状況をしっかりと把握できているか?
□人材戦略の具体化
 介護を行う従業員が活躍できるよう人材戦略を設計できているか?
□適切な指標の設定
 仕事と介護の両立支援に関して適切な指標を設定できているか?

[STEP3]情報発信
企業がプッシュ型の情報発信を行うことで、従業員個人の将来的なリスクを低減
□基礎情報の提供
 介護保険制度などの基礎情報をプッシュ型で提供できているか?
□研修の実施
 全社員向けにリテラシー向上の研修や管理職向けの両立支援推進に関する研修の機会を提供できているか?
□相談先の明示
 社内での相談先・プロセスを社員向けに明示的に伝えられているか?

 このステップに加え、企業の実情やリソースに応じて、人事労務制度の充実、個別相談の充実やコミュニティ形成等、企業独自の取組の充実も求められます。

 今国会には、育児・介護休業法の改正法案も提出され、成立すれば、介護離職を防止するための仕事と介護の両立支援制度の強化が企業に求められることになります。従業員の仕事と介護の両立への具体的対応が今後必要となります。

■参考リンク
経済産業省「「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を公表します

 

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4月23日 業務災害で死亡や休業が発生した場合に提出が求められる死傷病報告

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

労働災害が発生し、労働者が休業したり、死亡したりした際には、労働基準監督署に労働者死傷病報告(以下、「死傷病報告」という)を提出することが義務付けられています。この提出を怠ると、「労災かくし」として問題になります。以下では、労災かくしとはどのようなものか、死傷病報告の提出に関して誤解しやすい点を確認します。

 

[1]労災かくしとは

 労災かくしとは、故意に死傷病報告を提出しないこと、虚偽の内容を記載した死傷病報告を提出することを言います。
 そもそも、この死傷病報告は労働安全衛生法において、同様の労働災害の再発防止のための対策を検討することを目的として提出義務が課せられています。死傷病報告には、労働災害の程度により2種類の様式があり、死亡および休業4日以上の場合(様式第23号)と休業4日未満の場合(様式第24号)とに分かれます。提出期限は、死亡および休業4日以上の場合は遅滞なく、休業4日未満の場合は四半期ごとの翌月末日までとなっています。なお、提出先はいずれも管轄する労働基準監督署です。

[2]死傷病報告の提出に際して誤解しやすい点
 死傷病報告は、労働災害が発生した際に提出すべきものであるため、休業4日未満で労災保険の休業補償給付を受けない場合であっても、提出する必要があります。労災保険の休業補償給付を受けたときに提出するものだと誤解しているケースがありますが、労災保険の給付の有無に関わらず、死亡または休業した場合に提出が必要です。なお、通勤途上の災害による休業や死亡の場合には、提出は不要です。
 また、派遣労働者が労働災害にあった場合は、派遣元事業主、派遣先事業主ともに管轄する労働基準監督署へ死傷病報告を提出する義務があります。流れとしては、まず派遣先事業主が、管轄する労働基準監督署に死傷病報告を提出し、その写しを派遣元事業主に送付します。そして、派遣元事業主は、その写しの内容を踏まえて死傷病報告を作成し、派遣元を管轄する労働基準監督署に提出を行います。

 死傷病報告をはじめとした労働安全衛生関係の一部の手続きについて、2025年1月1日より電子申請での提出が義務となります。詳細は今後公表されると思いますが、今のうちから電子申請に対応できるよう準備を進める必要があります。

 

■参考リンク
厚生労働省「労災かくしとは何ですか。
厚生労働省「「労災かくし」は犯罪です。
厚生労働省「労働者死傷病報告の提出の仕方を教えて下さい。
厚生労働省「労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます

 

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4月16日 今すぐ確認したい転倒災害の現状と防止対策

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

労働災害における事故の型別では「転倒」が最多であり、2022年の発生状況では、死傷災害全体に占める割合で4分の1を超えています。そこで、転倒災害の実態と防止対策をとり上げます。

 

[1]転倒災害の実態
 2022年の発生状況における転倒の性別・年齢別の割合をみると、以下のようになっています。50歳以上の女性の割合が約47%を占めており、高齢者雇用が進む中、確実な対策が求められる事項となっています。

[男性]
 40歳~49歳 7.3%
 50歳~59歳 10.8%
 60歳以上  14.6%
[女性]
 40歳~49歳 6.6%
 50歳~59歳 18.5%
 60歳以上  29.1%

 転倒によるケガの内容としては「骨折」が約70%を占め、転倒災害による平均休業日数(※)47日です。また、転倒時の類型では「つまずき」が37.8%、「滑り」が31.8%となっています。
※労働者死傷病報告による休業見込日数

[2]必要となる防止対策
 厚生労働省発行のリーフレット「労働者の転倒災害(業務中の転倒による重傷)を防止しましょう」では、この「つまずき」や「滑り」について、次のように原因ごとに対策を挙げています。

[つまずき]

  • 何もないところでつまずいて転倒、足がもつれて転倒
    ⇒対策:転倒や怪我をしにくい身体づくりのための運動プログラム等の導入
  • 作業場・通路に放置された物につまずいて転倒
    ⇒対策:バックヤード等も含めた整理、整頓(物を置く場所の指定)の徹底

[滑り]

  • 凍結した通路等で滑って転倒
    ⇒対策:従業員用通路の除雪・融雪/凍結しやすい箇所への融雪マット等の設置
  • 作業場や通路にこぼれていた水、洗剤、油等により滑って転倒
    ⇒対策:水、洗剤、油等がこぼれていることのない状態の維持(清掃中エリアの立入禁止、清掃後乾いた状態を確認してからの開放の徹底)
  • 水場(食品加工場等)で滑って転倒
    ⇒対策:滑りにくい履き物の使用
        防滑床材・防滑グレーチング等の導入、摩耗している場合は再施工
        隣接エリアまで濡れないよう処置

[3]職場のチェックリスト
 転倒事故の防止のためには、以下のような項目についてチェックを行い、できていない項目については対策を行う必要があります。

  • 通路、階段、出口に物を放置していないか
  • 安全に移動できるように十分な明るさが確保されているか
  • 転倒を予防するための教育を行っているか
  • 作業靴は、作業に適したものを選んでいるか
  • ヒヤリハット情報を活用して、転倒しやすい場所の危険マップを作成・従業員に周知しているか

 従業員の転倒災害防止の取組を支援するものとして、エイジフレンドリー補助金があります。以前は60歳以上の労働者を雇用する中小事業者が対象でしたが、2024年度からは全ての中小事業者に拡充されています。このような補助金も活用しながら、転倒災害の防止対策を行っていきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和4年の労働災害発生状況を公表
厚生労働省「労働者の転倒災害(業務中の転倒による重傷)を防止しましょう
厚生労働省「エイジフレンドリー補助金について

 

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4月9日 今年も4月より始まった「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーン

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

新年度になり、新しくアルバイトを始める学生も多いことから、厚生労働省では例年実施している「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンを今年も実施しています。今回はこのキャンペーンの内容について確認をしましょう。

[1]主な取組内容

 今回のキャンペーンでは、4月1日から7月31日にかけて都道府県労働局による大学等への出張相談や大学等でのリーフレットの配布等による周知・啓発等が実施されることになっています。具体的にはアルバイトを始める前に労働条件の確認を促すことなどが呼びかけられます。特に重点的に呼びかけが行われる項目として、以下の5点が挙げられています。

  1. 労働条件の明示
  2. シフト制労働者の適切な雇用管理
  3. 労働時間の適正な把握
  4. 商品の強制的な購入の抑止とその代金の賃金からの控除の禁止
  5. 労働契約の不履行に対してあらかじめ罰金額を定めることや労働基準法に違反する減給制裁の禁止

[2]特に注意したいシフト制での勤務
 学生アルバイトについては、学業との両立があることからシフト制で働くことで時間の調整が可能となり、企業側にとっても業務の状況により勤務を柔軟に調整できるというメリットがあります。ただし、企業が半ば一方的にシフトを変更するようなケースも見られ、学生アルバイトが予定していた勤務がなくなることで思うように収入が得られなくなったり、急なシフト変更により学業との両立が難しくなったりするなどのトラブルに発展することがあります。

 このシフト制に関しては、2022年1月に厚生労働省より「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」が公表されています。この中で、特に留意する事項として「始業・終業時刻」、「休日」が挙げられ、例えば「休日」については、具体的な曜日等が確定していない場合でも、休日の設定にかかる基本的な考え方などを明記することが求められています。


※表はクリックで拡大されます。

 2024年4月より労働条件の明示ルールが変わり、書面明示事項が追加となりました。これに対応した労働条件通知書を用いて、労働条件の明示を行い、合わせて口頭で説明するなどして、学生アルバイトが安心して働くことができるようにしていきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「令和6年度「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンを全国で実施します
厚生労働省「いわゆる「シフト制」について

 

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4月2日 労働基準監督署の「定期監督等」において違反件数が多い項目

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

厚生労働省では、毎年、労働基準監督年報を発行しており、労働基準監督署等による様々な活動実績を見ることができます。今回は、令和4年版の労働基準監督年報の中から、多くの方の関心が高いと思われる「定期監督等」の違反状況とその注意点をとり上げます。

[1]定期監督等における違反の上位10項目

 労働基準監督官が企業に訪問するような調査(監督)は、年間171,528件行われており、そのうち、毎月一定の計画に基づいて実施される「定期監督等」が142,611件(全体の83.1%)、労働者からの申告に基づいて実施される「申告監督」が16,639件、(全体の9.7%)、再監督が12,278件(全体の7.2%)となっています。このように見ると大半が「定期監督等」であることが分かります。
 そして、この「定期監督等」における違反状況について、件数の多いものからみてみると、以下のようになっています。このように健康診断や安全基準など、労働安全衛生に関する違反の指摘が多くなされており、労働時間や割増賃金が続いています。

項目 令和4年 令和3年
1 健康診断(労働安全衛生法66条~66条の6) 29,974件 22,139件
2 安全基準(労働安全衛生法20~25条) 27,041件 23,823件
3 労働時間(労働基準法32条) 22,305件 18,007件
4 割増賃金(労働基準法37条) 20,554件 16,521件
5 年次有給休暇(労働基準法39条) 14,264件 9,783件
6 労働条件の明示(労働基準法15条) 13,853件 10,025件
7 賃金台帳(労働基準法108条) 12,254件 10,030件
8 年次有給休暇管理簿(労働基準法施行規則24条の7条) 11,264件 7,370件
9 就業規則(労働基準法89条) 9,546件 9,148件
10 時間把握(労働安全衛生66条の8の3) 8,837件 6,414件

 

[2]2024年4月以降に注意したい「労働条件の明示」に関する違反
 2024年4月より、労働条件の明示ルールが変わり、明示事項が追加されます。これにより、来年度以降の労働基準監督署の調査において、この確認が行われることが考えられます。2024年4月1日以降に締結するものより対応が必要になりますので、まだ準備していない場合は早めに対応しましょう。

 労働条件の明示以外の項目についても、法令の条文に立ち返って問題がないか確認し、労働基準監督署から指摘を受けないようにすることが求められます。

■参考リンク
厚生労働省「労働基準監督年報

 

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3月26日 労働者数が50人以上の事業場で求められる労働安全衛生法上の対応

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近年の労働基準行政においては過重労働対策に重きが置かれており、労働者に対する安全や健康に対する配慮義務が強く求められています。加えて、事業場の労働者数が常時50人以上になると、労働安全衛生法の中で実施が求められる事項があります。以下ではその内容をとり上げます。

 

[1]常時50人以上の労働者を使用する事業場とは
 まず常時雇用する労働者の定義を確認します。労働安全衛生法の対象となる「労働者」とは、原則、労働基準法と同じとされています。次に「常時使用する」とは、企業の通常の状況により判断するとされており、臨時的に雇い入れた場合や欠員を生じた場合は労働者の数に変動が生じたものとして取り扱う必要はないものの、パートタイマー・アルバイトであっても臨時的な雇入れでなければ、常時使用する労働者数に含める必要があるとされています。
 そして、労働安全衛生法では、職場で働くすべての労働者の安全を守る法律であることから、派遣労働者を受け入れている事業場は、常時雇用する労働者数に派遣労働者を含めて算出することになります。例えば、事業場で雇用している労働者数が45人で、派遣労働者が5人いる場合には、合計50人となります。

[2]労働者50人以上の事業場で実施が求められている事項
 労働者数が50人以上の事業場において実施が求められている事項は、以下の5点です。

  • 衛生管理者の選任・報告
  • 衛生委員会の開催
  • 産業医の選任・報告
  • ストレスチェックの実施・報告
  • 定期健康診断結果報告書の提出

 この中で、衛生管理者の選任については、業種を問わず選任する必要があり、50人以上の事業場が複数ある場合は事業場ごとに選任することになります。選任後、衛生管理者が休業等やむを得ない事由によって職務を行うことができないときは、代理の選任が必要です。その際、代理者の資格については、通達(昭和23年1月16日 基発第83号、昭和33年2月13日 基発第90号)で、以下のように示されています。

  1. 衛生管理者の資格を有する者がいれば、その者に代理させること
  2. 上記によることが不可能または不適当な場合は、保健衛生の業務に従事している者または保健衛生の業務に従事した経験のある者

 また、同じ通達の中で、衛生管理者が長期にわたって職務を行うことができない場合には、別に衛生管理者を選任することとされています。そのため、衛生管理者が育児休業や介護休業などの取得で長期休業に入る場合については、別に選任する必要があります。

 

 年度末や新年度を迎える中で、従業員の入退社が多い時期になります。労働者数を確認し、50人以上の事業場に該当する場合は、上記の事項を着実に実施していきましょう。

 

■参考リンク
東京労働局「衛生管理の充実
厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等
厚生労働省「健康診断結果報告の提出の仕方を教えて下さい。

 

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3月19日 3月分以降の協会けんぽの健康保険料率・介護保険料率

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

 

全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険料率および介護保険料率は、例年3月分(4月納付分)から見直しが行われています。今回は2024年度の各都道府県の保険料率についてお伝えします。

[1]2024年度の健康保険料率

 協会けんぽの保険料率は、各都道府県支部別に設定されますが、2024年3月分から適用される健康保険料率は下表のとおりとなりました。※表はクリックで拡大されます。
 47都道府県のうち、前年度より健康保険料率が引上げとなったのが24、引下げとなったのが22、変更なしが1でした。そして、もっとも高い保険料率は佐賀県の10.42%、もっとも低い保険料率は新潟県の9.35%となっており、佐賀県と新潟県の保険料率の開きは大きなものになっています。

 

[2]引下げとなった介護保険料率
 介護保険料率は単年度で収支が均衡するよう毎年見直しが行われますが、2024年3月分からは、1.82%から1.60%への引下げとなりました。

 健康保険料率および介護保険料率は3月分から変更になるため、3月に賞与を支給する会社では、賞与にかかる保険料から新しい保険料率で計算して賞与からの控除が必要となります。また、給与計算では自社の社会保険料の控除のタイミングに合わせて控除する保険料率を変更しましょう。なお、健康保険組合に加入している会社においては、各健康保険組合の情報をご確認ください。

 

■参考リンク
協会けんぽ「令和6年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます

 

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3月12日 2024年4月1日から労災保険率が変更になります

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

労災保険率は、業種ごとに定められており、それぞれの業種の過去3年間の災害発生状況などを考慮して原則3年ごとに改定されています。3年前の見直しでは、労災保険率の改定は行われなかったため、今回は6年ぶりの改定となります。

 

[1]労災保険率
 2024年4月からの労災保険率は、全体の平均では4.5/1000から4.4/1000となり、1000分の0.1の引き下げとなります。54業種のうち、引下げとなるのは17業種、引上げとなるのは3業種です。主な変更業種は以下のとおりです。※表はクリックで拡大されます。

[2]特別加入保険料率
 一人親方などの特別加入に係る第2種特別加入保険料率の改正も行われ、25区分のうち、以下の5区分が引下げとなります。※表はクリックで拡大されます。

[3]請負による建設の事業に係る労務費率
 労災保険料は、事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払う賃金の総額(以下、「賃金総額」という)に、労災保険率を乗じて算定することを原則としていますが、事業の特殊性により賃金総額を正確に算定することが困難な場合は、賃金総額算定方法の特例が認められています。
 この特例では、請負金額に労務費率を乗じて得た額を賃金総額としますが、ここで用いる労務費率についても改定が行われ、鉄道又は軌道新設事業が24%から19%に引下げとなり、その他の建設事業が24%から23%に引下げとなります。

 2024年度の年度更新の際には、概算保険料について、新しい労災保険率で計算することになります。また、来年度に向けた事業計画検討の中で人件費の予算策定などを行う際には、自社に適用される労災保険率が変更されていないか確認しましょう。

■参考リンク
厚生労働省「令和6年度の労災保険率について(令和6年度から変更されます)

 

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3月5日 広範な変更が予定される雇用保険法の改正動向

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1月26日に開会された通常国会には、雇用保険法の改正に関する法案(改正法案)が提出されました。改正は広範にわたりますが、その中で実務に大きな影響が出ることが想定される点について、以下で確認します。

[1]被保険者範囲の拡大
 現在の法令では、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用されることが見込まれる人が、雇用保険の被保険者とされています。
 この被保険者の範囲について、2028年10月1日以降は、1週間の所定労働時間が10時間以上の人も対象となる予定です。

[2]出生後休業支援給付金の創設
 現在、一定の要件を満たした従業員(雇用保険の被保険者)が育児休業を取得する場合、出生時育児休業給付金または育児休業給付金が支給されます。
 これらの給付率は、休業開始時賃金日額の67%または50%とされていますが、2025年4月1日以降、従業員とその配偶者がともに14日以上の育児休業を取得するときには、28日間を限度に、出生後休業支援給付金として、休業開始時賃金日額の13%が支給されることになる予定です。

 

[3]育児時短就業給付金の創設
 育児・介護休業法には、3歳未満の子どもを養育する従業員が希望したときには、1日所定労働時間を6時間に短縮する育児短時間勤務制度があります。
 育児短時間勤務制度を利用する場合、ノーワークノーペイの原則により、短縮した時間分の給与を支払わない企業が多いことから、2025年4月1日以降は、2歳未満の子どもを養育するために育児短時間勤務をし、給与が少なくなったときには、給付率10%を上限として、育児時短就業給付金が支給される予定です。

[4]高年齢雇用継続給付の変更
 高年齢雇用継続給付の変更の改正はすでに決定しており、今回の改正法案の内容ではありませんが、今後の動きとしてとり上げます。
 高年齢雇用継続給付は、原則として60歳以上の従業員の給与が、60歳時点よりも一定割合を超えて低下したときに支給されるものです。現在の給付率の上限は15%となっていますが、2025年4月1日以降は、給付率の上限が10%に引き下げられることが決まっています。

 このほかにも、教育訓練給付や就業促進手当も改正法案に盛り込まれています。自己啓発や学び直しを考えている従業員が活用できるような内容が含まれているため、改正法が成立したときには、全体の内容をしっかり押さえておく必要がありそうです。

 

■参考リンク
厚生労働省「第202回労働政策審議会職業安定分科会資料

 

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2月27日 36協定を締結する際の注意点

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

「時間外労働・休日労働に関する協定」(以下、「36協定」という)を締結する際、前年と同じ内容で、日付と人数だけ確認して36協定の協定書を作成しているケースが見受けられます。会社は協定した内容を遵守する必要があり、協定内容を超えて時間外労働・休日労働を命じることは、労働基準法違反となります。以下では、36協定の締結において理解しておきたい労働者数と休日労働に関する項目の意味について解説します。

 

[1]労働者数とは
 協定事項には、労働者数がありますが、この労働者数とは、在籍している労働者の人数ではなく、時間外労働・休日労働を行わせることが想定される人数をいいます。
 この労働者数については、協定の有効期間中に、入社や退職により記入した人数と実態が乖離することがあります。このような場合であっても、再度、36協定を締結して届け出る必要はなく、締結後に入社した労働者に対しても協定の範囲内で時間外労働や休日労働を命じることができます。

[2]休日労働に関する項目 

協定事項には「労働させることができる休日の日数」があり、36協定の協定届には「労働させることができる法定休日の日数」と「労働させることができる法定休日における始業及び終業の時刻」があります。
 まず、「労働させることができる法定休日の日数」とは、法定休日に労働させる可能性のある日数をいいます。厚生労働省が公開しているリーフレット「36協定の適正な締結」にある36協定届の記載例では、「1か月に1日」という内容になっており、この場合、法定休日に労働させることができるのは1ヶ月に1日のみとなります。そのため、例えば繁忙期は法定休日のうち、2日は出勤してもらう可能性がある場合には、「1ヶ月に2日」と記載します。
 次に、「労働させることができる法定休日における始業及び終業の時刻」とは、法定休日に労働させる場合の始業時刻と終業時刻をいいます。この時刻について、会社の通常の始業時刻と終業時刻を記載しているケースを見かけますが、この時刻が法定休日に労働させることのできる始業時刻と終業時刻となります。通常の始業時刻よりも早く出勤させる可能性がある場合などは、会社が想定する時刻を記載しましょう。

 年度末に向け、36協定の締結に係る準備を始める企業も多いかと思います。協定する内容や数字にどのような意味があるのかを確認した上で、業務の実態を踏まえ、内容を決定し、締結しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「労働時間・休日
厚生労働省「36協定の適正な締結

 

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2月20日 給与計算をする際に押さえておきたい端数処理の実務

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

給与計算をしていると、労働時間や円未満の賃金額の端数が出ることがあります。今回はこうした端数処理について、法律に沿った扱いがどのようなものであるかを確認しましょう。

[1]労働時間の端数処理
 給与計算をする際には、まず労働時間を集計することになりますが、労働時間は1分単位で集計し、賃金を支払うことが大原則となっています。そのため、所定労働時間、時間外労働時間、深夜労働時間、休日労働時間の各々を1分単位で集計する必要があります。
 その際、1ヶ月における時間外労働・深夜労働・休日労働の各々の合計については、端数処理をすることが認められています。具体的には、合計時間について1時間未満の端数がある場合には、30分未満を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げても差し支えないとされています。

[2]割増賃金の端数処理
 割増賃金を計算する際に端数処理については、1時間あたりの賃金額を計算した際に端数処理をすることが認められており、その際には50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上を切り上げることとなります。具体的には以下のとおりです。

【例】
1ヶ月の所定賃金額:230,000円 1ヶ月の(平均)所定労働時間数:168時間の場合
1時間あたりの賃金額=230,000÷168時間=1,369.0476…
→50銭未満の端数の切り捨てを行うと、1時間あたりの賃金額:1,369円

 この取扱いは1ヶ月における時間外労働・深夜労働・休日労働の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合も同様となります。

[3]賃金支払時の端数処理
 賃金の支払いについては、従業員の指定する銀行口座への振込みが多いため、賃金支払時に端数処理を行うことは稀かと思われますが、1ヶ月の賃金支払額における端数処理についても一定の範囲内で認められています。
 具体的には、1ヶ月の賃金支払額に100円未満の端数が生じた場合に、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を切り上げて支払うことが認められています。また、1ヶ月の賃金支払額に生じた1,000円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越すことも認められています。なお、この取扱いをするためには賃金規程にその旨の定めが必要です。

 端数処理について、すべて切り捨てるなどという誤った取扱いをしていないか、この機会に確認しましょう。お困りごと等ございましたら、当事務所までお問合せください。

■参考リンク
東京労働局「3.残業手当等の端数処理はどうしたらよいか

 

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2月13日 民間企業の障害者実雇用率 過去最高の2.33%の実績

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

先日、厚生労働省から「令和5年 障害者雇用状況の集計結果」(以下、「集計結果」という)が公表されました。現在の民間企業の障害者に係る法定雇用率は2.3%とされており、従業員数43.5人以上規模の企業において障害者を雇用する義務があります。以下では、実際の障害者雇用状況を確認しましょう。

 

[1]障害者雇用数と法定雇用率達成企業
 障害者の雇用義務のある43.5人以上規模の民間企業で雇用されている障害者の数は642,178.0人で、前年より28,220.0人増加し、過去最多となりました。障害種別にみると、以下のようにいずれの種別でも増加していますが、特に精神障害者の雇用が伸びていることが分かります。

  • 身体障害者 360,157.5人(前年比2,390人増加)
  • 知的障害者 151,722.5人(前年比5,296.5人増加)
  • 精神障害者 130,298.0人(前年比20,533.5人増加)

 これにより、法定雇用率を達成している企業の割合は、50.1%と半数を超えました。これを企業規模別にみると、43.5~100人未満が47.2%(前年45.8%)、100~300人未満が53.3%(同51.7%)、300~500人未満が46.9%(同43.9%)、500~1,000人未満が52.4%(同47.2%)、1,000人以上が67.5%(同62.1%)となり、すべての規模の区分で前年より増加しています。

 

[2]障害者雇用率達成の指導状況
 今回の集計結果において、実雇用率は2.33%となっています。この実雇用率の過去20年間の動きをみてみると下図のように着実に増加していることが分かります。※図はクリックで拡大されます。

 一方で、実雇用率が低い企業に対しては、障害者雇用率が達成できるように、ハローワークから指導が行われますが、2022年度の指導に係る実績は以下のとおりです。

  • 障害者雇入れ計画作成命令の発出 244社
  • 障害者雇入れ計画の適正実施勧告 94社
  • 特別指導の実施 55社

 2024年4月より法定雇用率が2.5%に引上げとなります。そのため、対象となる企業においては法定雇用率を達成できるよう、継続的に採用と定着の取り組みを進める必要があります。

■参考リンク
厚生労働省「令和5年 障害者雇用状況の集計結果

 

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2月6日 29.7%の企業が70歳まで働ける制度を導入

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

2021年4月から改正高年齢者雇用安定法が施行され、65歳までの雇用確保措置の義務に加え、70歳までの就業機会を確保する措置(以下、「就業確保措置」という)が努力義務として定められました。先月、厚生労働省から公表された2023年の「高年齢者雇用状況等報告」に関する集計結果(以下、「集計結果」という)では、この就業確保措置の努力義務に対応した企業の状況等を確認することができます。※表はクリックで拡大されます。

 

[1]就業確保措置

 就業確保措置としては、以下の1~5のいずれかの措置を講ずることが企業の努力義務とされています。65歳までの雇用確保措置と異なり、雇用だけでなく、業務委託契約など直接雇用をしない形で、70歳まで就業できる機会を与えることも措置に含まれています。

  1. 70歳までの定年引上げ
  2. 定年制の廃止
  3. 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
    ※特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む
  4. 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  5. 70歳まで継続的に以下の社会貢献事業に従事できる制度の導入
    1. 事業主が自ら実施する社会貢献事業
    2. 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業


[2]就業確保措置の実施状況

 今回の集計結果では、報告した全企業の中で就業確保措置が実施済みである企業が全体の29.7%となっています。企業規模別では、中小企業では30.3%(前年比1.8ポイント増加)、大企業では22.8%(前年比2.4ポイント増加)となっており、中小企業よりも大企業において対応を進める動きが強まっています。なお、この集計では従業員21人~300人規模を「中小企業」、301人以上規模を「大企業」としています。
 また、就業確保措置の内訳を全体でみると、70歳までの定年引上げが2.3%、定年制廃止が3.9%、継続雇用制度の導入が23.5%、創業支援等措置の導入が0.1%となっています(※)。
※端数処理の都合上、合計数にズレが生じています。

 

[3]定年制の状況
 就業確保措置に向けた対応や人材確保の観点から、定年年齢を引き上げるケースが見受けられます。企業における定年制の状況については、65歳以上定年企業(定年制の廃止企業を含む)は全体の30.8%で、年齢区分でみてみると以下のようになっています。

  • 60歳    66.4%
  • 61~64歳 2.7%
  • 65歳    23.5%
  • 66~69歳 1.1%
  • 70歳以上 2.3%

 深刻な人手不足の中、65歳以降の人材をどのように活用していくか悩まれている企業は少なくないでしょう。今回の集計結果なども参考にしながら、検討を進めましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和5年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します

 

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1月30日 2024年4月から変わる無期転換に関する明示ルール

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

2024年4月から労働条件の明示ルールが変わり、すべての労働者に対し、「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要になりますが、これ以外にも、有期契約労働者に対して新しく追加される明示事項があります。そこで今回は、明示ルールに追加される無期転換に関連する事項と実務上の注意点をとり上げます。

[1]無期転換とは

 そもそも無期転換とは、パートタイマーやアルバイト、契約社員などの有期契約労働者について、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超える契約を締結した場合、有期契約労働者からの申込みにより、次の契約から無期労働契約に転換できるというものです。
 図のように労働契約期間が1年の場合、5回目の更新後に無期転換申込権が発生し、無期転換の申込みをすることができます。※図はクリックで拡大されます。

[2]追加される無期転換に関する事項の明示
 2024年4月からは、この無期転換申込権が発生する有期契約労働者に対して、無期転換の申込みができることを労働条件通知書で明示する必要があります。さらに、無期転換後に有期労働契約時の労働条件から変わる場合には、その内容も明示することになります。なお、その内容については別紙を添付するなどして明示することも認められています。これらの内容に係る労働条件通知書の記載例は以下のとおりです。

本契約期間中に会社に対して期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の締結の申込みをすることにより、本契約期間の末日の翌日(〇〇年〇月〇日)から、無期労働契約での雇用に転換することができる。
この場合の本契約からの労働条件の変更の有無(無・有(別紙のとおり))

[3]実務上の注意点
 実務上の注意点として2点あります。1点目は、無期転換に関する明示は、無期転換の申込みができる有期契約労働者が対象になります。有期契約労働者全員が対象になる訳ではないため、有期労働契約が通算5年を超えているか否かの管理が必要です。
 2点目は、定年後の再雇用の取扱いです。定年後の再雇用においては、1年契約を更新していくことが一般的ですが、このような定年後に再雇用する従業員も有期労働契約に含まれます。この定年後に再雇用した従業員については、労働局に申請をして認定を受けることで、有期労働契約が通算5年を超えたとしても無期転換申込権が発生しない、という特例が認められています。一方、労働局の認定を受けていない場合は、定年後に再雇用した従業員も有期労働契約が通算5年を超えると、原則通り、無期転換の申込みができることになりますので、この場合には2024年4月から変更される労働条件の明示事項に関して、無期転換の申込みができること等を労働条件通知書に明示する必要が出てきます。

 定年後の再雇用者の取扱いに関して、労働局の認定の必要性を検討し、認定を受ける場合は準備を進めましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます
厚生労働省「無期転換ルールについて

 

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1月23日 2024年1月から新設された育休代替要員等に対する助成金

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

昨年6月に政府が閣議決定した「こども未来戦略方針」では、男女ともに職場へ気兼ねなく育児休業を取得できるようにするため、育児休業を支える体制整備を行う中小企業に対する助成措置を大幅に強化することが示されました。これを踏まえ、2024年1月1日から両立支援等助成金に、「育休中等業務代替支援コース」が新設されました。そこで、今回はこの概要を確認しておきましょう。

[1]新設される助成金の概要
 今回の新設コースは、両立支援等助成金のいくつかのコースに設けられていた「代替要員加算」が廃止・再編されたものです。
 支給は、労働者が育児休業を取得するか、育児短時間勤務制度を利用する場合において、育児休業期間中に代替要員の新規雇用(派遣社員の受け入れも含む)、または、育児休業期間中や育児短時間勤務制度利用期間中に業務を代替する労働者への手当支給等を行うときに対象になります。整備・運用した制度によって表の額が支給されます。なお、助成の対象は中小企業に限ります。※表はクリックで拡大されます。

[2]助成金の加算
 新設されるコースには、助成金に以下の加算が設けられています。

  1. 有期雇用労働者加算
    育児休業取得者・育児短時間勤務制度利用者が有期雇用労働者の場合は10万円が加算される。
  2. 情報公表加算
    自社の育児休業等の取得状況に関する情報を厚生労働省のホームページ「両立支援のひろば」で公表した場合には2万円が加算される。

 同僚が育児休業を取得すると、その職場で一緒に働く労働者には何らかの負担が生じることがあるでしょう。このような助成金を活用することで、その負担が少しでも軽減し、職場内で、スムースに育児休業の送り出しができる環境を構築したいものです。

■参考リンク
厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内

 

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1月16日 今後数年のうちに施行される人事労務関連の法令改正

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

人事労務管理を行う中で、実務に関連する法令改正の動向を押さえておくことはとても重要です。特に近年、人事労務分野においては様々な法令改正が頻繁に行われています。そこで、今回は今後数年のうちに施行が予定される法令改正の内容を確認しておきます。

 

[1]注目すべき法令改正
 現時点で施行が決定されている主な法令改正は下表のとおりです。細かな対応として、労働条件通知書のひな形を修正したり、障害者の法定雇用率が2024年4月と2026年7月に引き上げとなることから、法定雇用率を満たしていない場合は障害者雇用を強化したりしていくなどの必要があります。

表 今後の主な法令改正内容

施行時期 内容
2024年4月 建設業・自動車運転業務・医師等の限度基準適用除外の廃止
トラック・バス・タクシー運転者の拘束時間・休息期間の変更
障害者法定雇用率を2.5%に引き上げ
短時間労働者(週10時間以上20時間未満の重度身体障害者、重度知的障害者および精神障害者)の実雇用率に算定する特例
労働条件の明示事項に、就業場所・業務の変更の範囲、更新上限の有無・内容、無期転換申込機会・無期転換後の労働条件が追加
通算契約期間・有期労働契約の更新回数について、上限を定めたり、引き下げたりしようとするときの理由の事前説明
募集時の明示事項に、就業場所・業務の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準が追加
裁量労働制の対象者の要件変更、手続き変更、報告期間変更、健康福祉確保措置導入、苦情処理措置導入等
障害者雇用調整金・報奨金の支給方法の見直し
2024年10月 社会保険加入(週20時間等の加入基準)の適用拡大(51人以上の従業員規模)
2025年4月 高年齢雇用継続給付の給付率を10%に縮小
障害者雇用における除外率の引き下げ
2026年7月 障害者法定雇用率を2.7%に引き上げ

 

[2]影響が大きい社会保険加入の適用拡大
 直近で企業に大きな影響が出ることが想定されるものとして、社会保険の適用拡大があります。2024年10月1日より、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業では、週の所定労働時間が20時間以上で、その他の要件を満たす従業員について、社会保険の加入が必要となります。新たに適用拡大の対象となる予定の企業で、例えば2024年4月からの労働条件について、週の所定労働時間を25時間、契約期間1年間で締結した場合、契約当初は社会保険の加入要件を満たさなくても、2024年10月1日からは加入要件を満たすことになります。

 厚生労働省では、年収の壁を意識せずに働ける環境づくりとして、年収の壁・支援強化パッケージを用意しています。従業員に大きな影響の出る内容です。こうした支援策の活用も含めて、早めに対応を検討していきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます
厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト
厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ

 

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1月9日 2024年4月1日より変わる裁量労働制

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

裁量労働制には、専門業務型裁量労働制(以下、「専門業務型」という)と企画業務型裁量労働制(以下、「企画業務型」という)という2つの制度があります。令和5年就労条件総合調査によると、専門業務型を採用している企業割合は2.1%、企画業務型を採用している企業割合は0.4%と採用している企業割合は少ないですが、今回、比較的大きな制度改正が行われ、2024年4月1日より施行されます。以下では、その主な変更点をとり上げます。

[1]専門業務型
 専門業務型とは、業務の性質上、その遂行の方法を大幅にその業務に従事する労働者の裁量に委ねる必要があるため、業務の遂行の手段や時間配分の決定等に関して、会社が具体的な指示をすることが困難なものとして定められた業務の中から、対象となる業務等を労使協定で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使協定であらかじめ定めた時間労働したものとみなす制度です。
 2024年4月1日より、この対象業務にいわゆるM&Aアドバイザーの業務が加わります。そして、この専門業務型を適用する場合には、労働者本人の同意が必要になります。その際、会社は労使協定の内容等の制度の概要、賃金・評価制度の内容、同意しなかった場合の配置・処遇について明示した上で説明することが求められています。


 

また、以下の事項を労使協定に追加する必要があります。

  • 労働者本人の同意を得ること
  • 労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしないこと
  • 同意の撤回の手続き
  • 同意とその撤回に関する記録を協定の有効期間中およびその期間満了後3年間保存すること

[2]企画業務型
 企画業務型とは、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査および分析の業務であって、業務の性質上、これを適切に遂行するには、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、業務遂行の手段や時間配分の決定等に関し、会社が具体的な指示をしないこととする業務等について労使委員会で決議し、労働基準監督署に決議の届出を行い、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使委員会の決議であらかじめ定めた時間労働したものとみなす制度です。


 もともとこの企画業務型は労働者本人の同意が必要とされていますが、2024年4月1日からは同意の撤回手続きを定める必要があります。
 また、労使委員会で決議が必要となる事項として、以下の3点が追加されます。

  • 同意の撤回の手続き同意とその撤回に関する記録を協定の有効期間中およびその期間満了後3年間保存すること
  • 対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うこと
  • 同意とその撤回に関する記録を協定の有効期間中・その期間満了後3年間保存すること

 これら以外にも細かな変更点があります。2024年4月1日以降、新たにまたは継続して導入する企業は、早めに法改正対応の準備を進めましょう。

■参考リンク
厚生労働省「裁量労働制の概要

 

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■年始のご挨拶■

あけましておめでとうございます。
社会保険労務士法人サムライズです。

新しい年が始まりました。

2024年は・・・

4月から時間外労働の上限規制(建設事業、自動車運転の業務、医師)の適用、労働条件明示のルールの追加、裁量労働制の導入・継続の手続きの見直し、障害者雇用率の変更があります。

10月から社会保険加入対象企業の拡大があります。

今年も法改正を含め、お役に立てる情報をお届けして参りますので、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

12月26日 拡充されたキャリアアップ助成金「正社員化コース」

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

有期雇用労働者等を正社員に登用したり、処遇改善の取組を実施したりする企業への支援としてキャリアアップ助成金が設けられていますが、2023年11月29日に、キャリアアップ助成金の「正社員化コース」が拡充されました。以下ではこの内容をとり上げます。

[1]キャリアアップ助成金の正社員化コース
 「正社員化コース」とは、就業規則等で規定した制度に基づき、有期雇用労働者等を正社員化した場合に助成されるものです。有期雇用労働者以外にも、無期雇用労働者を正社員に転換した場合、また、正社員への転換だけでなく、多様な正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)に転換した場合等も「正社員化コース」の対象となります。

[2]拡充された内容
 今回、拡充された内容は以下の4点です。

  1. 助成金の見直し
     支給対象期間が「6ヶ月」から「12ヶ月」に拡充されたことに伴い、助成金額も有期雇用労働者が正社員に転換した場合、6ヶ月(1期)で57万円(大企業の場合42.75万円)だったものが、12ヶ月(2期)で80万円(大企業の場合60万円)に拡充されました。また、無期雇用労働者が正社員に転換した場合についても、6ヶ月(1期)で28.5万円(大企業の場合21.375万円)だったものが、12ヶ月(2期)で40万円(大企業の場合30万円)に拡充されています。

  2. 対象となる有期雇用労働者の要件緩和
     有期雇用労働者から正社員に転換する場合、有期雇用の期間が6ヶ月以上で、通算3年以内という要件が設けられていましたが、「6ヶ月以上」に緩和されました。なお、有期雇用の期間が通算5年を超えた有期雇用労働者を正社員に転換する場合、助成金額は、無期雇用労働者が正社員に転換した場合と同額になります。

  3. 正社員転換制度の規定に関する加算措置
     今回、新たに正社員転換制度の導入に取り組む場合に、20万円(大企業の場合15万円)が加算されます。なお、1事業所あたり1回のみです。
  4. 多様な正社員制度規定に関する加算措置
     多様な正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)制度を新たに規定し、この雇用区分に転換等した場合の助成金額が、9.5万円(大企業の場合7.125万円)から40万円(大企業の場合30万円)に大幅拡充されました。なお、これも1事業所あたり1回のみです。

    このキャリアアップ助成金を利用する際は、事前にキャリアアップ計画書を管轄の労働局へ提出することが必要です。手続きについては、キャリアアップ計画書がチェックボックス式に変更され、記載方法が簡素化されています。

■参考リンク
厚生労働省「キャリアアップ助成金「正社員化コース」を拡充しました!2023年11月29日以降における変更点のご案内

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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12月19日 退職後に引き続き傷病手当金を受給する際のポイント

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

健康保険の傷病手当金を受給している従業員が、職場復帰の目途が立たないことから退職するケースがありますが、一定の要件を満たすことで、退職後も引き続き傷病手当金を受給することが可能です。以下では、退職後に引き続き傷病手当金を受給する際のポイントを解説します。

[1]傷病手当金を受給するための要件
 傷病手当金は、被保険者である従業員が病気やけがによる療養のために会社を休み、給与を受けられないときに、その所得の補てんとして受けることできるものです。この給付を受けるためには以下の4つの要件をすべてを満たす必要があります。

  1. 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
  2. 仕事に就くことができないこと
  3. 連続する3日間(待期期間)を含み4日以上仕事に就けなかったこと
  4. 休業した期間について給与の支払いがないこと

[2]継続給付の要件
 [1]の受給要件を満たした上で、退職後も引き続き傷病手当金を受給するためには、更に以下の2つの要件を満たす必要があります。

  1. 健康保険の資格喪失日の前日(退職日等)までに被保険者期間が継続して1年以上あること
  2. 健康保険の資格喪失日の前日(退職日等)に傷病手当金の支給を受けているか、または、受けられる状態にあること

 上記の2.について、退職日に引継ぎ等で出勤した場合は、医師が労務不能と証明していたとしても、仕事ができる状態になったと判断され、退職後に傷病手当金を受給できなくなります。

 

[3]傷病手当金を受給しないまま退職した場合の取扱い
 傷病手当金を受給しないまま、年次有給休暇を取得し、退職となるようなケースがありますが、傷病手当金の受給は[1]でとり上げたとおり、連続する3日間の待期期間と4日目以降に傷病手当金を受給できる状態であれば、傷病手当金を受給していなかったとしても退職後に受給することが可能です。年次有給休暇を取得して退職したときは、給与が支払われていることになるため[1]の4.の要件について該当せず、受給できる状態であるものの、不支給という判断が行われます。そして、給与が支払われなくなった退職後から支給が開始されます。

 

[4]傷病手当金の受給期間
 2021年1月より、傷病手当金の受給期間は、同一傷病について受給を開始した日から、支給期間を通算して1年6ヶ月とされています。そのため、退職後は、残りの期間について傷病手当金を受給することができます。

 私傷病により退職する場合には、この継続給付は貴重な収入となります。対象となる従業員には、要件を確認の上、通常の退職手続きに加えて説明をすることが求められます。

 

■参考リンク
協会けんぽ「傷病手当金について

 

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12月12日 2024年4月から変わる有期労働契約の更新上限に関する事項

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

2024年4月から労働条件の明示ルールが変わり、すべての労働者に対し、「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要になりますが、これ以外にも、有期契約労働者に対して新しく追加される明示事項があります。そこで今回は、追加される更新上限に関連する事項についてとり上げます。

[1]更新上限の明示事項
 パートタイマーやアルバイト、契約社員などの有期契約労働者について、「契約期間は通算4年を上限とする」、「契約の更新回数は3回まで」といった更新上限を設定しているケースがありますが、このように更新上限を設定しているときは、2024年4月から労働条件通知書にこの更新上限の明示が必要になります。
 実際に記載する際に、労働契約の当初から数えた回数を記載するのか、残りの契約更新回数を記載するのかなど対応に迷うことがありますが、記載方法は、労働者と会社の認識が一致するような明示となっていれば差し支えないとされています。例えば、契約の当初から数えた更新回数または通算契約期間の上限を明示し、その上で、現在が何回目の契約更新であるか等を併せて示しておくと、認識のズレを避けることができるでしょう。

[2]更新上限を新設・短縮する場合の説明事項
 現在締結している労働契約には更新上限を設定していないものの、何らかの理由があり今後について、更新上限を新設するといったケースもあり得ます。例えば、当初予定していた出資が受けられず、担当してもらう予定の事業を縮小することになったため、更新上限を設定するケースや、通算契約期間の上限を5年としていたが3年に短縮したいといったケースなどが考えられます。このような更新上限を新設・短縮しようとする場合には、その理由を労働者に説明することが必要になります。
 説明方法については、文書を交付して個々の労働者ごとに面談等により説明を行う方法が基本とされていますが、説明資料を交付する方法や説明会を行う等の方法も考えられます。会社としては、労働者に対して分かりやすく説明することが求められます。

 有期契約労働者の労働条件通知書については、以前から明示が必要となっている雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口の項目が漏れているケースが見受けられます。この機会に、ひな形に不備がないか点検し、問題があれば改善しましょう。

■参考リンク
厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます

 

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12月5日 年休の取得率 初めて60%超え

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

就職活動における企業選びの条件として、労働時間の短さや休日の多さを重視する傾向が強まっています。厚生労働省では「令和5年就労条件総合調査」において、年間休日総数や年次有給休暇(以下、「年休」という)の取得状況などの調査結果を公表しており、自社の状況を一般的な水準と比較することができます。そこで以下では、この調査の中から年間休日総数、年休の取得状況、特別休暇制度の運用状況をとり上げます。

[1]1企業平均の年間休日総数
 令和4年(または令和3会計年度)の1企業平均の年間休日総数は110.7日となりました。前年調査は107.0日でしたので、3.7日増えたことになります。この年間休日総数を従業員規模別にみてみると、30~99人が109.8日、100~299人が111.6日、300~999人が115.7日、1,000人以上が116.3日となっています。

[2]年休の取得状況
 年休の取得状況について、令和4年(または令和3会計年度)の1年間に企業が付与した年休の日数(繰越日数は除く)は、労働者1人平均で17.6日(前年調査も17.6日)となりました。そのうち労働者が取得した日数は10.9日(同10.3日)で取得率は62.1%(同58.3%)となりました。取得率については、昭和59年以降、過去最多となり、初めて60%を超えました。この取得率を従業員規模別にみてみると、30~99人が57.1%、100~299人が62.1%、300~999人が61.8%、1000人以上が65.6%となっています。

 年次有給休暇以外の休暇として、会社が恩恵的に設けているものとして特別休暇制度があります。今回の調査結果では、夏季休暇、病気休暇等の特別休暇がある企業の割合は55.5%(前年58.9%)となっており、種類別にみると下表のようになっています。※表はクリックで拡大されます。

 人材採用において休日日数は重要な判断要素となっています。採用力を確保するためにも、こうした調査資料を活用し、自社の課題を検討するとよいでしょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況

 

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11月28日 事業主の証明により円滑化される被扶養者認定

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

複数ある年収の壁のうち、「130万円の壁」は健康保険の被扶養者および国民年金第3号被保険者の壁であり、年収130万円(※)以上となることで、国民健康保険および国民年金の保険料の支払いが生じ、手取り収入が減ってしまうというものです。これまでも年収の壁への課題認識はあったものの、最低賃金の大幅な引上げにより就業調整の問題が大きくなり、年収の壁の存在がこれまで以上にクローズアップされています。今回、その対策として被扶養者認定の円滑化が行われることになりました。
※認定・確認対象者が60歳以上または一定の障害者の場合は180万円

※図はクリックで拡大されます。

 

[1]130万円の壁への対応
 130万円の年収の壁については、被扶養者の収入が一時的に増加した場合に、すぐに被扶養者から外すことのないように、厚生労働省から被用者保険の保険者に通知がされていました。ただし、雇用契約書等の書類の提出が求められるなど、認定や資格確認に多くの時間を要することもありました。
 そこで今回、パートタイマーやアルバイト等が繁忙期に労働時間を延ばすことなどにより、収入が一時的に増加したとしても、事業主がその旨を証明することで、認定や資格確認が円滑に進む仕組みが設けられました。

[2]一時的な収入の増加
 一時的な収入増加とは、主に時間外勤務手当や臨時的に支払われる繁忙手当等が支給されたことが想定されています。主なケースとしては、以下が示されています。

  • 他の従業員が退職したため、労働者の業務量が増加した
  • 他の従業員が休職したため、労働者の業務量が増加した
  • 業務の受注が好調だったことにより、会社全体の業務量が増加した
  • 突発的な大口案件により、会社全体の業務量が増加した

 ただし、基本給が上がった場合や、恒常的に支給される手当が新設された場合など、引き続き収入が増えることが確実な場合は、一時的な収入増加とは認められません。

 

[3]事業主が行う証明
 被扶養者については、新たに被扶養者の認定を受ける際や被用者保険の保険者が被扶養者の資格確認を行う際に年間収入が確認されます。このタイミングで、被扶養者が勤務する会社で一時的な収入変動である旨の証明(厚生労働省から様式の公開あり)を発行してもらい、被保険者である家族が勤務している会社を通じて各被用者保険の保険者に対して、通常提出が求められる書類と併せて、この事業主の証明を提出することになります。
 このため、各被用者保険の保険者が行う被扶養者の資格確認のタイミング等に合わせて、被扶養者の勤務する事業主から一時的な収入増加である旨の証明を取得することになります。

 最終的な被扶養者の認定や資格確認の判断は、被用者保険の保険者が行うことになります。事業主の証明があれば必ず認められるとは限りませんので、運用する際には十分な注意が必要になります。なお、事業主の証明で認められるのは連続2回までとされています。

■参考リンク
厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ

 

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11月21日 2024年4月から変わる労働条件「就業場所・業務の変更の範囲」の明示ルール

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

労働契約締結の際や有期労働契約の更新のタイミングごとに、すべての労働者に対し労働条件を明示する必要があります。
明示事項である「就業場所」と「業務の内容」は、現在は雇入れ直後のものを明示すれば足りるとされていますが、2024年4月以降は、これらに加えて「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要となります。そこで今回は、その具体的な記載方法や注意点についてとり上げます。

[1]就業場所・業務の変更の範囲の記載方法
今回追加となる「就業場所・業務の変更の範囲」とは、今後の見込みも含め、その労働契約の期間中における就業場所や従事する業務の範囲のことを指します。そのため、将来の可能性も含めたうえで、その範囲を明示していくことになりますが、就業場所・業務がどの程度限定されるかによって、記載が異なります。以下ではいくつか記載例を紹介します。

  1. 就業場所・業務に限定がない場合
    • 就業場所
       (雇入れ直後)〇〇営業所 (変更の範囲)会社の定める営業所
    • 従事すべき業務
       (雇入れ直後)〇〇に関する業務 (変更の範囲)会社の定める業務
  2. 就業場所・業務の一部に限定がある場合
    • 就業場所
       (雇入れ直後)〇〇営業所 (変更の範囲)◇◇県内の営業所
    • 従事すべき業務
       (雇入れ直後)〇〇企画業務 (変更の範囲)本社における〇〇または△△の企画業務
  3. 就業場所や業務の変更が想定されない場合
    • 就業場所
       (雇入れ直後)〇〇営業所 (変更の範囲)〇〇営業所
    • 従事すべき業務
       (雇入れ直後)〇〇企画業務 (変更の範囲)〇〇企画業務

正社員については、上記1の「就業場所・業務に限定がない場合」に該当することが多いかと思いますが、「会社の定める営業所」「会社の定める業務」と記載するほか、変更の範囲を一覧表として添付することも考えられます。後になってトラブルとならないように、できる限り就業場所・業務の変更の範囲を明らかにし、労使で共通認識を持つことが求められます。

 

[2]適用のタイミング
今回の改正は、2024年4月1日以降に締結される労働契約から適用されます。そのため、2024年4月1日入社の従業員について、2024年3月31日以前に労働契約を締結する場合は改正前のルールが適用され、新たな明示ルールに基づく明示は不要です。
なお、労働条件に関する従業員の理解を深めるために、2024年3月31日以前から新たなルールにより対応することは、望ましい取組みとされています。

就業場所・業務の変更の範囲の明示方法については、厚生労働省発行のパンフレット「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?」にもさまざまな記載例が紹介されています。早めにどのように記載する必要があるのかを検討し、労働条件通知書のひな形を直しておきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます
厚生労働省「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?

 

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11月14日 最低賃金引上げに伴い賃上げに取り組む企業への公的支援

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2023年度の最低賃金は、過去最大の引上げ幅となりました。この引上げに伴い、賃上げに取り組む企業への公的支援が設けられています。助成金・補助金には予算額が設けられているため、いざ活用しようと考えたときに、受付が終了している可能性があります。
活用される場合は、早めに検討しましょう。

 

[1]業務改善助成金
業務改善助成金とは、事業場内で最も低い賃金を30円以上引き上げ、設備投資等を行った中小企業・小規模事業者等に、設備投資等の費用の一部を助成する制度です。
事業場内の最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内の事業場が対象となります。例えば地域別最低賃金が950円で、事業場内の最低賃金が985円の場合、差額が50円以内であることから対象となります。また、2023年8月31日より、事業場規模が50人未満で、2023年4月1日から2023年12月31日までに事業場内の最低賃金の引き上げを実施した場合は、賃金引き上げ後に申請することも可能です。
費用の助成率は、下表のとおりです。なお、引き上げる労働者の数と引上げ額の区分に応じて、助成上限額が設けられています。※図はクリックで拡大されます。

[2]キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金に設けられている「賃金規定等改定コース」は、有期雇用労働者等の基本給を定める賃金規定等を3%以上増額する形で改定し、その規定を適用させた場合に助成されるものです。要件としては、以下のすべてに当てはまる必要があります。

  1. キャリアアップ計画の作成・提出
    賃金規定等を増額改定する前日までにキャリアアップ計画を作成し、都道府県労働局へ提出していること。
  2. 賃金規定等の適用
    有期雇用労働者等の基本給を賃金規定等に定めていること。
  3. 賃金アップ
    2.の賃金規定等を3%以上増額改定し、改定後の規定に基づき6ヶ月分の賃金を支給していること。

3%以上5%未満増額改定した場合に1人当たり5万円(大企業3.3万円)、5%以上増額改定した場合に6.5万円(大企業4.3万円)が助成されます。1年度1事業所あたりの支給申請上限人数は100人までです。

 

■参考リンク
厚生労働省「最低賃金引き上げに伴う支援を強化しています
厚生労働省「業務改善助成金
厚生労働省「キャリアアップ助成金」

 

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11月7日 今年も11月に実施される過重労働解消キャンペーン

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

厚生労働省では、長時間労働の削減等の過重労働解消に向けた気運を更に高めるために、例年11月に実施している過重労働解消キャンペーンを、今年も2023年11月1日(水)から11月30日(木)までの1ヶ月間において実施することにしています。

 

[1]過重労働解消キャンペーン

このキャンペーンは、2014年に施行された過労死等防止対策推進法に基づき、11月が過労死等防止啓発月間となっていることから実施されるものであり、過労死等の一つの要因である長時間労働の削減等、過重労働解消に向けた取組を推進するため、使用者団体・労働組合への協力要請、リーフレットの配布などによる周知・啓発等の取組が集中的に実施されます。

[2]過重労働解消キャンペーンの実施内容

過重労働解消キャンペーンの一つとして、長時間労働が行われていると考えられる事業場等への重点監督が予定されています。監督の対象となる事業場等や確認される事項は以下のとおりです。

  1. 監督の対象となる事業場等
    1. 長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場や各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場等
    2. 労働基準監督署およびハローワークに寄せられた相談等から、離職率が極端に高いなど若者の「使い捨て」が疑われる企業等
  2. 重点的に確認される事項
    1. 時間外・休日労働が、時間外・休日労働に関する協定届(36協定)の範囲内であるか等について確認され、法違反が認められた場合は是正指導が行われる。
    2. 賃金不払残業が行われていないかについて確認され、法違反が認められた場合は是正指導される。
    3. 不適切な労働時間管理が行われているときは、労働時間を適正に把握するよう指導される。
    4. 長時間労働者に対しては、医師による面接指導等、健康確保措置を確実に講じるよう指導される。
  3. 書類送検
    監督指導の結果、重大・悪質な法違反が認められた場合は、送検され、公表される。

 なお、監督指導の結果、1年間に2回以上、同一条項の違反について是正勧告を受けた場合等は、ハローワークにおいて、求人を一定期間受理しないこととされています。また、職業紹介事業者や地方公共団体に対しても、ハローワークと同様の取組を行うように要請されています。

 

 この機会に、自社の労働時間の状況を把握し、適正な労働時間の管理が行われているかも確認しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「過重労働解消キャンペーン
厚生労働省「11月は「過労死等防止啓発月間」です

 

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10月31日 協会けんぽの被扶養者資格の再確認

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

全国健康保険協会(以下、「協会けんぽ」という)では、健康保険の被扶養者になっている人について、毎年一定の時期に被扶養者の要件に該当しているかの確認を行っています。
今年度は、10月下旬から11月上旬にかけて確認のための被扶養者状況リストが送付されることになっていることから、今回は、再確認の実施状況とその際の注意点をとり上げます。

 

[1]再確認の目的と2022年度実施の状況
健康保険の被扶養者は、健康保険料を支払うことなく、一定の保険給付が受けられます。そのため、要件に該当しない被扶養者が被扶養者となっていると、医療費および高齢者の医療費への拠出金が不当に高くなり、保険料が増加することとなります。被扶養者資格の再確認は、それを防止する目的で実施されています。
昨年度(2022年度)実施の際には、被扶養者から削除となった人は約7.8万人(2023年3月31日現在)となっており、結果、9億円程度の前期高齢者納付金の負担削減効果が見込まれたと公表されています。被扶養者から削除となった主な理由としては、「就職して健康保険の資格を取得したものの、被扶養者から削除する届出を年金事務所へ提出していない」というものが大半でした。

 

[2]再確認時の注意点
再確認は協会けんぽから会社に送付されてくる状況リストに従い、被扶養者の要件を満たしているかについて、書面や口頭で、各被保険者(従業員)に対して行います。
再確認時の注意点として、被保険者と別居している被扶養者がいるケースでは、仕送りの事実と仕送り額の確認できる書類を提出する必要があります(※)。具体的には、振込の場合は預金通帳の写し、送金の場合は現金書留控えの写しを提出する必要があります。預金通帳の写しを提出する場合で、仕送りとは関係のない箇所が見られたくないときはマスキング(黒く塗りつぶす等)をして差し支えありません。

※学生の場合はこの添付を省略できます。

提出期限は2023年12月8日ですが、従業員に被扶養者の要件を満たしていることが確認できる書類を準備してもらうケースがあるため、早めに依頼しましょう。

 

[3]被扶養者認定を円滑化へ 年収の壁見直し策
 被扶養者の認定には、過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書などの確認が必要ですが、政府は2023年10月から「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」という暫定的な取り組みを始めます。
パート・アルバイトで働く人が、繁忙期に労働時間を延ばすなどして一時的に130万円以上となっても事業主がその旨を証明することで、引き続き扶養に入り続けられるようにします。これにより、パート・アルバイトで働く人は国民年金・国民健康保険の保険料支払いの負担を回避できます。扶養されている主婦だけでなく、学生も対象となります。注意点は以下の通りです。
1. 「一時的な収入変動」として認められる必要がある
2. 「一時的な事情」の認定は連続2年まで
3. フリーランス・個人事業主は対象外

1. 「一時的な収入変動」として認められる必要がある
厚労省によると、一時的な収入変動とは、以下のような理由で、主に時間外勤務(残業)手当や臨時的に支払われる繁忙手当などが想定されています。

  • ほかの従業員が退職したことで、当該労働者の業務量が増加した
  • ほかの他の従業員が休職したことで、当該労働者の業務量が増加した
  • 業務の受注が好調だったことで、当該事業所全体の業務量が増加した
  • 突発的な大口案件により、当該事業所全体の業務量が増加した

 一方で、基本給が上がった場合や、恒常的な手当が新設された場合など、今後も引き続き収入が増えることが確実な場合は、一時的な収入増加とは認められません。
 また、被扶養者が被保険者と同一世帯に属している場合、被扶養者の年間収入が被保険者の年間収入を上回る場合は被扶養者から外れることになります。
 ただし、「一時的な収入変動」の具体的な上限額は明らかになっていません。仮に上限を設けた場合、当該上限が新たな「年収の壁」となりかねず、一時的な事情によるものかどうかは収入金額のみでは判断が困難であることためだといいます。

2. 「一時的な事情」の認定は連続2年まで
 事業主の証明による被扶養者認定の円滑化は「一時的な事情」としての認定のため、同一の者について原則として連続2回までとなります。
 社会保険の被扶養者の収入確認は、少なくとも年1回は保険者が確認し、被扶養者の要件を引き続き満たしていることを確認することが望ましいとされています。そのため、被扶養者の収入確認を年1回実施する場合は、連続2年までとなります。

3. フリーランス・個人事業主は対象外
 厚労省によると、事業主の証明による被扶養者認定の円滑化は、あくまでも事業主の人手不足などによる一時的な収入変動を対象としています。そのため、特定の事業主と雇用関係にない人は対象となりません。ただし、フリーランスや自営業者としての収入と、勤務先からの給与収入の両方がある場合、給与収入が一時的な収入変動で増加したことにより被扶養者の認定基準額を超えた場合は、対象になります。

事業主の証明による被扶養者認定の円滑化は、2023年10月からの被扶養者認定や被扶養者の収入確認に適用します。なお、それ以前の扶養認定や被扶養者の確認には遡及しません。被扶養者認定の円滑化は暫定的な対応ですが、政府は2025年に予定している次期年金制度改正に向けて、議論を開始しています。その制度改正も踏まえて、今後の方針が決まる見込みです。

■参考リンク
協会けんぽ「事業主・加入者のみなさまへ「令和5年度被扶養者資格再確認について」
協会けんぽ「事業主・加入者のみなさまへ「令和4年度被扶養者資格の再確認にご協力いただきありがとうございました

 

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10月24日 12月から始まるアルコール検知器によるアルコールチェック

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

2022年10月からアルコール検知器によるアルコールチェックの義務化は、アルコール検知器の供給状況から、当分の間、目視等で行うことが認められていました。今回、十分なアルコール検知器が市場に流通するようになる見通しが立ったことから、2023年12月よりアルコール検知器によるアルコールチェックが始まります。以下では、改めてこの内容をとり上げます。

 

[1]安全運転管理者とは
乗車定員が11名以上の自動車を1台以上使用している事業所、その他の自動車を5台以上(自動二輪車は、原動機付自転車は除き1台を0.5台で計算)使用している事業所は、安全運転管理者を選任する必要があります。さらに、自動車20台以上を使用している事業所は、20台ごとに副安全運転管理者を1人選任することになっています。
この安全運転管理者は自動車使用の本拠ごとに選任する必要があり、例えばA市にある本社(使用車両10台)、B市にある支店(使用車両5台)であった場合、それぞれで選任する必要があります。この台数の判断に当たっては、使用するすべての自動車が対象となり、従業員の持ち込み車両やリース車両も含まれます。なお、安全運転管理者の業務として、以下の9つがあります。

  1. 運転者の状況把握
  2. 安全運転確保のための運行計画の作成
  3. 長距離、夜間運転時の交代要員の配置
  4. 異常気象時等の安全確保の措置
  5. 点呼等による過労、病気その他正常な運転をすることができないおそれの有無の確認と必要な指示
  6. 運転者の酒気帯びの有無の確認(アルコールチェック)
  7. 酒気帯びの有無の確認内容の記録・保存
  8. 運転日誌の備え付けと記録
  9. 運転者に対する安全運転指導

 

[2]12月からの変更点
上記6のアルコールチェックについて、現在は、運転前後の運転者の状態を目視等で確認することで、酒気帯びの有無を確認することが認められています。2023年12月より、運転者の状態を目視等で確認するほか、国家公安委員会が定めるアルコール検知器を用いて確認し、さらにアルコール検知器を常時有効に保持する必要があります。
この国家公安委員会が定めるアルコール検知器とは、呼気中のアルコールを検知し、その有無またはその濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能を有する機器であれば足りるとされています。そして、アルコール検知器を常時有効に保持する際には、正常に作動し、故障がない状態で保持しておくことが求められます。そのため、安全運転管理者は、アルコール検知器の取扱説明書に基づき、適切に使用し、検知器に定められた使用期限や使用回数を厳守しつつ、定期的に故障の有無を確認するなどの保守管理を行っていくことが必要です。

12月に向けて、これからアルコール検知器を用いて運用していく企業もあるでしょう。安全運転管理者の業務内容を確認したり、アルコールチェックを記録するためのフォーマットを見直したりするなど、準備を進めていきましょう。

 

■参考リンク
警察庁「事業主・職業運転者の交通事故防止関連

 

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10月17日 厚生労働省が乗り出した扶養の壁対策

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

社会保険には、年収106万円以上で健康保険・厚生年金保険に加入することになることから、社会保険料の負担を避けて就業調整をするいわゆる「106万円の壁」と、年収130万円以上で国民年金・国民健康保険に加入することになることから、社会保険料の負担を避けて就業調整をするいわゆる「130万円の壁」があります。
9月下旬、厚生労働省からこれらの壁を意識せずに働くことのできる環境づくりを後押しするための施策「年収の壁・支援強化パッケージ」が公表されました。

[1]106万円の壁への対応

[キャリアアップ助成金の変更]
現在あるキャリアアップ助成金に「社会保険適用時処遇改善コース」が新設されることとなりました。このコースは、短時間労働者が社会保険の加入により手取り収入が減少することを意識せず働くことができるよう、従業員の収入を増加させる取組みを行った会社に対して、従業員1人当たり最大50万円の支援を行うものとなっています。なお、実施に当たっては、支給申請の事務が簡素化される予定です。
また、従業員の収入を増加させる取組みとしては、賃金の引上げや所定労働時間の延長が考えられますが、これらのほか、社会保険の適用に伴う社会保険料の負担を軽減するために「社会保険適用促進手当」を支給する場合も、助成金の支給対象にするとしています。

[社会保険適用促進手当]
この「社会保険適用促進手当」については、新たに発生した本人負担分の社会保険料相当額を上限として、従業員の標準報酬月額・標準賞与額の決定の際には考慮しない取扱いとなります。この取扱いの適用は最大2年間とされています。

[2]130万円の壁への対応
被扶養者の認定の基準の1つに「年収130万円未満であること」があります。この被扶養者の認定基準について、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入の変動によるときは、その旨を会社の証明を添付することにより迅速で円滑な判断ができるように変更されます。

このほか、特に中小企業において、配偶者手当の見直しを後押しするために、見直しの手順をフローチャートで示す等のわかりやすい資料を作成・公表するといった対応も図られることになっています。詳細は今後示されることになりますので、厚生労働省のホームページで確認するとよいでしょう。

■参考リンク
厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ

 

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10月10日 時間単位年休と子の看護休暇等の時間単位の取扱いの違い

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

各種休暇の中で、従業員が時間単位で取得できるものとして年次有給休暇(以下、「年休」という)と子の看護休暇・介護休暇(以下、「子の看護休暇等」という)があります。それぞれの違いに着目し、内容を確認しましょう。

[1]労使協定の位置づけ

年休は原則、暦日単位での取得になっており、時間単位で取得するには労使協定を締結する必要があります。

一方、子の看護休暇等については、2021年1月1日より、労使協定を締結することなく、時間単位でも取得できるようにすることが義務となりました。なお、子の看護休暇等を時間単位で取得させることが困難と認められる業務に従事する従業員を、時間単位での取得から除外することが可能ですが、その際は労使協定を締結することが必要です。

[2]取得単位の考え方
時間単位年休は、1時間未満を取得単位とすることはできず、1時間以上の単位での取得となります。例えば2時間単位での取得とすることもできますが、この場合、労使協定にその単位となる時間数を定めることが求められます。
子の看護休暇等は、1時間単位での取得が原則であり、年休のように2時間単位での取得とすることはできません。一方で、15分などの分単位で取得できるようにすることは、法令を上回る取扱いとして認められます。

 

[3]1日の時間数の取扱い
1日分の年休を時間単位年休に換算するときで、1時間未満の端数があるときは、時間単位に切り上げることとされています。例えば所定労働時間が7時間30分の場合、1日8時間に換算した上で、時間単位の取得をさせることになります。
一方、子の看護休暇等も同様に考えることが原則ですが、分単位で取得できるようにした場合については、1日の所定労働時間数に1時間に満たない端数があったとしても、従業員にとって不利益にならなければ、端数を時間単位に切り上げなくても差し支えないとされています。

 

[4]中抜けの取扱い
時間単位年休については、取得する時間帯を制限することはできません。そのため、所定労働時間の途中に時間単位年休を取得するいわゆる「中抜け」としての取得もできます。
子の看護休暇等については、始業時刻から連続、または終業時刻まで連続して取得することになっており、法令上は中抜けでの取得を認めていません。なお、会社が任意で、子の看護休暇等に対し、中抜けの取得を認めることは問題ありません。

時間単位年休と子の看護休暇等の時間単位での取得について、取扱いを整理すると、上記のようなさまざまな違いがあります。細かな点について、知識があいまいになっているケースもあるため、この機会に再確認しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト「時間単位の年次有給休暇制度とは
厚生労働省「子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります!

 

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10月3日 過去最大の引上げ幅となった2023年度の最低賃金

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。

仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。

したがって、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。また、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められ、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。

[1]最低賃金の種類と改定タイミング
賃金については、都道府県ごとにその最低額(最低賃金)が定められており、企業はその額以上の賃金を労働者に支払うことが義務付けられています。
この最低賃金には、都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類がありますが、このうち「地域別最低賃金」は、毎年10月に改定されることになっています。2023年度について全都道府県の「地域別最低賃金」が決定しました。

[2]2023年度の地域別最低賃金と発効日
2023年度の地域別最低賃金と発効日は、下表のとおりとなっています。改定額の全国加重平均額は1,004円(昨年度961円)となり、43円の引上げです。これは1978年度に現在の目安制度が始まって以降で最高額となります。
なお、最低賃金の地域間格差も課題とされていましたが、最高額(1,113円)に対する最低額(893円)の比率は、80.2%(昨年度79.6%)となり、9年連続の改善となっています。※図はクリックで拡大されます。

 

パートタイマー・アルバイト等の時給者の賃金が最低賃金を下回っていないかを確認するとともに、月給者についても1時間あたりの賃金額を算出し、確認するようにしましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧

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9月26日 有期契約労働者を雇用する際の注意点

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

期間の定めのある労働契約(有期労働契約)については、契約更新を繰り返し、一定期間雇用をしていたにも関わらず、突然、契約更新をせずに期間満了をもって退職させるなどして、トラブルになることが少なくありません。以下では、有期契約労働者を雇用する際の注意点をとり上げます。

【1】契約締結時の労働条件の明示

有期契約労働者と労働契約を締結する際には、労働契約期間とあわせて、契約更新の有無と更新する際の判断基準を明示する必要があります。更新の判断基準については、例えば以下のようなものが挙げられます。

  • 契約期間満了時の業務量により判断する
  • 労働者の勤務成績、態度により判断する
  • 労働者の能力により判断する
  • 会社の経営状況により判断する
  • 従事している業務の進捗状況により判断する

労働条件通知書が実態とあった内容となっているかを確認し、必要に応じ見直しをしましょう。

【2】雇止めにおける手続き

労働契約を更新してきた有期契約労働者を、現在の労働契約をもって更新せずに終了する。「雇止め」を行う場合には、契約期間が満了する。少なくとも30日前までに伝える必要があります(雇止めの予告)。この雇止め予告の対象は、以下のいずれかに該当する人です。

① 有期労働契約を3 回以上更新している人

② 1 年以下の契約期間の労働契約を更新し、1年を超えて雇用している人

③最初から1年を超える契約期間の労働契約を締結している人

 なお、現在の労働契約をもって契約更新をしない旨が明示されている場合は、この雇止め予告を行う必要はありません。

 

【3】雇止めに係る証明

雇止めの予告をした後に、有期契約労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合、会社は遅滞なくこの証明書を交付する必要があります(雇止めの理由の明示)。

また、雇止めの後についても、有期契約労働者から請求があれば証明書の交付が必要です。  

明示する雇止めの理由は、契約期間の満了とは別の具体的な理由とすることが必要です。例えば以下のようなものが挙げられます。

  • 前回の契約更新時に、 本契約を更新しないことが合意されていたため
  • 契約締結当初から、 更新回数の上限を設けており、 本契約はその上限に係るものであるため
  • 担当していた業務が終了・中止したため
  • 事業縮小のため
  • 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
  • 職務命令に対する違反行為を行ったため

雇止めに関するトラブルを防ぐために、労働条件通知書に契約更新の判断基準を明示することと併せて、雇入れ時や契約更新時に、会社から有期契約労働者に対して、どのような契約内容かを分かりやすく説明しておくことが望まれます。

 

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9月19日 2022年度の労基署による賃金不払事案の指導金額は121億円

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

先月、厚生労働省は「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和4年)」を公表しました。これは2022年1月から2022年12月までに、全国の労働基準監督署が、賃金不払が疑われる事業場に対して実施した監督指導の結果を取りまとめたものです。この取りまとめは、これまで支払額が1企業で合計100万円以上の割増賃金不払事案のみが対象とされていましたが、今回から、それ以外の事案を含めた賃金不払事案全体が集計されています。以下ではその結果と実際の監督指導の事例をとり上げます。

 

[1]監督指導状況

 2022年に全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払事案の件数、対象労働者数及び金額は以下のとおりです。

  • 件数 20,531件
  • 対象労働者数 179,643人
  • 金額 121億2,316万円

 このうち、2022年中に労働基準監督署の指導により企業が賃金を支払い、解決されたものの状況は以下のとおりです。

  • 件数 19,708件(96.0%)
  • 対象労働者数 175,893人(98.0%)
  • 金額 79億4,597万円(65.5%)

 この支払われた金額の中で、1事案における最大支払金額は2.7億円でした。

[2]監督指導の対象となった事案
 本結果の中では「監督指導による是正事例」が紹介されていますが、自社の労働時間管理の在り方を見直す際の参考となりますので、ここでは労働時間の記録と労働実態の乖離の事例をとり上げます。

[概要]

  • 過重労働による労災請求を基に、労働基準監督署が監督指導を実施。
  • 労働時間はタイムカードにより出退勤時刻を把握し、残業時間は残業申請により把握。
  • 聴取調査において、管理者が出退勤時刻と残業申請の時刻に乖離があっても労働者への確認が不十分なまま黙認していたとのことであったため、出退勤記録と残業申請との間の乖離の原因究明や不払となっている割増賃金を支払うよう指導。

[企業が実施した解消策]

  • タイムカードによる出退勤記録と労働者からのヒアリングなどを基に乖離の原因や割増賃金の不払の有無について調査を行い、不払となっていた割増賃金を支払った。
  • 賃金不払残業の解消のために次の取組を実施した。
    1. 日々、出退勤時刻と残業申請の時刻に乖離があった場合には、管理者及び労働者に対し通知を行い、注意喚起を行うこととした。
    2. 毎月、人事担当部署において、出退勤時刻と残業申請の確認を行い、2つの記録に乖離がある場合については、労働者に乖離の理由を確認することとした。
    3. 管理者を集めた会議を開催し、部下とのコミュニケーションを促進することにより、適切な労働時間申請が行われる環境を整える必要性についての意識向上を図った。
    4. 全社員を集めた会議を開催し、労働時間管理の重要性を周知し、会社としてもワーク・ライフ・バランスを重視していることを説明し、労使一体となって適正な労働時間管理の重要性についての認識の共有を図った。

 労働時間の記録と労働実態の乖離がある場合は、上記の取組のように労働者に確認し、乖離を防止するため、労働者本人と管理者に対して注意喚起するなどの取組みが求められます。自社においても、労働時間記録と労働実態の乖離が生じていないか確認し、問題があれば早めに対応しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和4年)を公表します

 

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9月12日 改めて見直したい永年勤続表彰金の社会保険の取扱い

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

長期勤続をした従業員に対し、褒賞金(永年勤続表彰金)を支給したり、特別休暇を付与したりすることがあります。
福利厚生の一環として行われることが多いこれらの制度ですが、制度を運用する上で、社会保険・労働保険の取扱いに注意すべき点があります。以下では所得税のことにも触れつつ、この内容をとり上げます。

[1]社会保険の取扱い

社会保険(健康保険・厚生年金保険)では、労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計に充てられるすべてのものを「報酬等」として扱います。
2023年6月27日に日本年金機構が公表している「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」が改正され、永年勤続表彰金について、以下の要件をすべて満たすような支給形態であれば、恩恵的に支給されるものとして、原則として報酬等に該当しないことが示されました。

  1. 表彰の目的
    企業の福利厚生施策又は長期勤続の奨励策として実施するもの。なお、支給に併せてリフレッシュ休暇が付与されるような場合は、より福利厚生としての側面が強いと判断される。
  2. 表彰の基準
    勤続年数のみを要件として一律に支給されるもの。
  3. 支給の形態
    社会通念上いわゆるお祝い金の範囲を超えていないものであって、表彰の間隔が概ね5年以上のもの。

なお、これらの要件を一つでも満たさないことをもって、直ちに報酬等と判断するのではなく、その性質について十分確認した上で、総合的に判断するとされています。

 

[2]労働保険の取扱い

労働保険では、賃金、手当、賞与、その他名称を問わず、労働の対償として会社が従業員に支払うすべてのものを賃金として扱います。
賃金とするもの、賃金としないものは具体的に列挙されており、「勤続褒賞金」は、労働協約・就業規則等の定めがあるか否かを問わず、賃金としないとされています。永年勤続表彰金とは名称が異なりますが、勤続褒賞金と同義と考えられますので、賃金として扱わなくてもよいでしょう。

 

[3]所得税の取扱い
所得税については、国税庁のホームページで、以下のように示されています。

創業記念で支給する記念品や永年にわたって勤務している人の表彰に当たって支給する記念品などは、次に掲げる要件(※)をすべて満たしていれば、給与として課税しなくてもよいことになっています。
なお、記念品の支給や旅行や観劇への招待費用の負担に代えて現金、商品券などを支給する場合には、その全額(商品券の場合は券面額)が給与として課税されます。
※要件は「参考リンク」からご確認ください。

支給目的は同じであっても、それぞれの法令で取扱いが異なります。適切な運用がされているか、この機会に確認しておきましょう。

 

■参考リンク
日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集
厚生労働省「令和5年度事業主の皆様へ(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方
国税庁「No.2591 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき

 

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9月5日 マイナンバーカードでの被保険者確認と窓口における対応

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健康保険証とマイナンバーカードの一体化が始まり、医療機関や薬局(以下、「医療機関等」という)の窓口で、マイナンバーカードによる健康保険の被保険者や被扶養者資格の確認が始まっています(オンライン資格確認)。
そこで、現段階でオンライン資格確認を行った際に発生することがある課題とその対応について確認します。

1]資格確認端末における表示
医療機関等の窓口では、資格確認端末にマイナンバーカードを置いたり、かざしたりすることでオンライン資格確認を行いますが、被保険者や被扶養者資格があるにも関わらず「資格(無効)」、「資格情報なし」と表示されることがあります。
表示される理由は複数ありますが、例えば、転職により転職先での資格取得手続きを行っているものの、オンライン資格確認の時点では、資格情報が登録されていないようなケースがあります。

 

2]資格確認ができないときの対応
資格確認ができないときは医療機関等の窓口において、本来、医療費の全額(10割)を支払い、後日、協会けんぽ等の保険者に一部負担金を除いた額を請求する必要がありますが、従業員や家族が一時的に医療費を立て替える負担は小さくありません。そこで、オンライン資格確認ができない場合の対応として、統一した取扱いが示されています。
具体的には、医療機関等にある機器が不良でオンライン資格の確認ができない場合、従業員や家族が持っているスマートフォン等からマイナポータルにアクセスして資格情報の画面を提示したり、健康保険証を持参しているときにはそれを提示したりすること等により資格確認を行うことができます。
このような確認ができないときには、マイナンバーカードにある氏名や生年月日等の情報、連絡先、加入している保険者等に関する事項等を「被保険者資格申立書」に記入することで、一部負担金の支払いとすることができます。なお、被保険者資格申立書は医療機関等の窓口に用意されており、場合によっては口頭確認のみで済むこともあるかもしれません。

 

3]会社に求められる対応
本来は資格取得手続きをすることで、被保険者等の情報が速やかに登録されるのであれば、このような課題は解消されますが、それまでの期間についてはあらかじめ従業員に以下のようなアナウンスをしておくとよいでしょう。

  • オンライン資格確認をする際にはデータ登録の関係上、医療機関等で「資格(無効)」や「資格情報なし」と表示される場合がある
  • 医療機関等の機器不良等によりオンライン資格確認ができないことがある
  • オンライン資格確認ができないときには、「被保険者資格申立書」の提出等により一部負担金の支払いで済むことがある
  • データ登録の状況をお知らせする仕組みが整備されるまでの間、初めてマイナンバーカードで医療機関を受診する場合や、転職等により新しい健康保険証が交付された場合などは、マイナポータルで資格情報を確認するか、念のためマイナンバーカードとあわせて健康保険証を持参してほしい

今後もマイナンバーカードの活用においては、様々な課題が発生するかもしれません。情報収集をして、必要な情報を従業員に提供できるようにしておきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)

 

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8月29日 厳格な運用が求められる 変形労働時間制

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

変形労働時間制を適用し、複数のシフトパターンにより労働させているケースがありますが、就業規則にすべてのシフトパターンが記載されていなかったとして変形労働時間制が無効とされた裁判例が出ています。以下では、変形労働時間制を運用する際の注意点をとり上げます。

【1】定めが必要な事項

例えば1ヶ月単位の変形労働時間制を導入し、就業規則に定める場合、以下の事項をすべて定める必要があります。

① 対象労働者の範囲
② 対象期間・起算日
③ 労働日・労働日ごとの労働時間

①の「対象労働者の範囲」は、変形労働時間制の対象となる労働者の範囲を明確に定める必要があります。
②の「対象期間・起算日」は、例えば「毎月1日を起算日とし、1ヶ月を平均して1 週間当たり40 時間以内とする」のように、具体的に対象期間と起算日を定める必要があります。なお、対象期間は1ヶ月以内の期間であれば、2 週間や4 週間とすることも可能です。
③の「労働日・労働日ごとの労働時間」は、シフト表や会社カレンダーなどで、②の対象期間すべての労働日ごとの労働時間をあらかじめ具体的に定める必要があります。
 シフト制労働者で月ごとにシフトを作成する場合は、全ての始業・終業時刻のパターンとその組み合わせの考え方、シフト表の作成手続・その周知方法等を定めておく必要があります。

【2】運用する際の注意点

 複数のシフトパターンがある場合、就業規則には、代表的なものだけを記載しているようなケースや、様々なパターンに関する記載があるものの実態とずれていたり、実態はさらに細かいシフトパターンがあったりするようなケースがあるでしょう。

 

 変形労働時間制が無効になった裁判例では、「原則として」と記載し、4 つのシフトパターンを定めたのみで、すべてのシフトパターンを記載していなかったとして、労働基準法第32 条2の「特定された週」または「特定された日」の要件を充足するものではないことから、変形労働時間制は無効であると裁判所が判断しました。
 ひとつの裁判例であるものの、会社は、就業規則にすべてのシフトパターンの記載があるかを確認し、記載がなければ追加し、また、今後において、記載されたシフトパターン以外の時間で勤務しないように管理していくことが求められます。

変形労働時間制は、特定した労働日、労働日ごとの労働時間を会社の都合で変更することはできないとされています。会社の都合で変更するような誤った運用もみられることから、適正に運用できているのかについても確認し、問題があれば改善しましょう。

■参考リンク週40時間労働制の実現 1ヵ月又は1年単位の変形労働時間制 (mhlw.go.jp)

 

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8月22日 こども未来戦略方針から見る今後の社会保険制度の変更

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2023年6月13日、大きな話題となっていた「こども未来戦略方針」(以下、「方針」という)が閣議決定され、正式な内容が公表されました。今後、この方針に沿った法改正等が進められることから、方針の中で触れられている社会保険に関連した内容をとり上げます。

 

[1]社会保険の2つの壁

従業員が加入する社会保険(健康保険・厚生年金保険)には、それぞれ加入基準が定められており、その基準を満たすことで、従業員自身が被保険者となり、会社とともに保険料を負担します。この保険料負担に関しては以下の2つの壁が存在しています。

  1. 106万円の壁
     厚生年金保険の被保険者数101人以上の企業(特定適用事業所)では、以下の3つの基準をすべて満たすことで、社会保険に加入し、保険料を負担することになっています。

    • 週の所定労働時間が20時間以上
    • 所定内賃金が月額8.8万円以上
    • 学生でない

     106万円とは、月額8.8万円を年間に換算した額であり、この壁を超える(年収が106万円以上となる)ことで、保険料の負担が発生することを示しています。

  2. 130万円の壁
     健康保険の被扶養者および国民年金の第3号被保険者として認定される要件の1つに、「年収が130万円未満であること」があります。被扶養者(第3号被保険者)は、健康保険料や国民年金保険料を直接負担する必要がありません。
     この壁を超える(年収が130万円以上となる)ことで、国民健康保険の被保険者や、国民年金の第1号被保険者となり、保険料の負担が生じることを示しています。

 

[2]社会保険の適用拡大
 106万円・130万円の壁があることで、これらの年収以上とならないように労働時間や賃金額を抑制する従業員が一定数存在しています。方針では、「いわゆる106万円・130万円の壁を意識せずに働くことが可能となるよう、短時間労働者への被用者保険の適用拡大や最低賃金の引上げに取り組む」としています。そして、それにより男女ともにキャリアを築き、男女ともに育児を行うこと等を促進しようとしています。

 

[3]雇用保険の適用拡大
雇用保険は、週の所定労働時間が20時間以上であることが加入基準の一つとされており、加入し、支給要件を満たすことで失業等給付や育児休業給付等を受給することができます。
方針では、雇用保険の加入基準を拡大し、週の所定労働時間が20時間未満の従業員にも失業等給付や育児休業給付等を受給できるようにするとしています。
なお、拡大する範囲は「制度に関わる者の手続や保険料負担も踏まえて設定する」としており、施行時期は適用対象者数や事業主の準備期間等を勘案して2028年度までを目途としています。

上記[2]に関しては、被用者が新たに106万円の壁を超えても手取りの逆転を生じさせないための当面の対応が検討されており、今年中に実行するとしています。今後の動きにも注目しましょう。

 

■参考リンク
内閣官房「こども未来戦略方針

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8月15日 労働基準監督署の「定期監督等」における違反件数が多い項目

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

厚生労働省では、毎年、労働基準監督年報を発行しており、そこでは労働基準監督署等による様々な活動実績を見ることができます。今回は、令和3年版の労働基準監督年報の中から関心が高いであろう「定期監督等」の違反状況とその注意点をとり上げます。

[1]定期監督等の違反 上位10項目
 労働基準監督官が企業に訪問するような調査(監督)は、年間149,379件行われており、そのうち、毎月一定の計画に基づいて実施される「定期監督等」が122,054件(全体の81.7%)、労働者からの申告に基づいて実施される「申告監督」が16,101件、(全体の10.8%)、再監督が11,224件(全体の7.5%)となっています。このように見ると大半が「定期監督等」であることが分かります。
 そして、この「定期監督等」における違反状況について、件数の多いものからみてみると、以下のようになっています。

 項目  令和3年  令和2年
 1  労働安全衛生法20~25条(安全基準)  23,823件  22,432件
 2  労働安全衛生法66条~66条の6(健康診断)  22,139件  20,153件
 3  労働基準法32条(労働時間)  18,007件  19,493件
 4  労働基準法37条(割増賃金)  16,521件  16,701件
 5  労働基準法108条(賃金台帳)  10,030件  9,893件
 6  労働基準法15条(労働条件の明示)  10,025件  10,817件
 7  労働基準法39条(年次有給休暇)  9,783件  3,486件
 8  労働基準法89条(就業規則)  9,148件  9,088件
 9  労働基準法施行規則24条の7条(年次有給休暇管理簿)  7,370件  5,443件
 10  労働安全衛生66条の8の3(時間把握)  6,414件  5,607件

[2]特に注意したい「年次有給休暇」に関する違反
 上記10項目の中で、7位の労働基準法39条(年次有給休暇)は、前年に比べて2.8倍の大幅増となっています。また、9位の労働基準法施行規則24条の7条(年次有給休暇管理簿)も前年に比べると1.4倍と急増しています。
 働き方改革関連法の中で改正が行われた年次有給休暇に関する指摘が増えていることから、年10日以上の年次有給休暇が付与されたすべての従業員について、付与した日から1年以内に5日の取得ができているのか、従業員ごとに年次有給休暇を取得した日付、取得日数、基準日が記載された年次有給休暇管理簿が作成されているのかなどについて確認しておきましょう。

 年次有給休暇以外の項目についても、法令の条文に立ち返って問題がないか確認し、労働基準監督署から指摘を受けないようにすることが求められます。

■参考リンク
厚生労働省「労働基準監督年報

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8月8日 増加する精神障害の労災支給決定件数 求められるハラスメント対策

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

従業員数にはよるもののメンタルヘルス疾患を発症し、従業員が欠勤したり、休職したりする企業は少なくありません。
また、その原因が仕事による強いストレスとなっている事例もあるようです。
2023年6月に発表された厚生労働省の資料によると、精神障害を理由として実際に労災の支給決定を受ける件数が増加しています。そこで以下では発表された資料の内容を確認した上で、企業に求められる対策について見ていきます。

[1]精神障害の労災補償状況

精神障害の労災補償状況は下図のとおりです。2022年度の請求件数は2,683件で、前年度の2,346件から337件増加しました。
請求件数が増えている理由には、精神障害における労災請求の仕組みが認知されるようになったと考えられます。
また、支給決定件数については710件となり、前年の629件から81件の増加となり、過去最多となりました。
支給決定件数の中で、多い業種(中分類)の上位3つをみてみると、社会保険・社会福祉・介護事業85件、医療業79件、道路貨物運送業37件で、医療・福祉の業種で多くなっています。認定率については35.8%で、申請の3件に1件の割合で労災として認定されています。

 

[2]具体的な出来事
支給の決定には、その傷病に繋がる具体的な出来事があったかを確認して判断されますが、支給決定件数を具体的な出来事別に分類すると、その上位は以下の通りとなっています。

  1. 上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた(147件)
  2. 悲惨な事故や災害の体験、目撃をした(89件)
  3. 仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった(78件)
  4. 同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた(73件)
  5. セクシュアルハラスメントを受けた(66件)

支給決定件数(710件)のうち、パワーハラスメントやいじめ・嫌がらせ、セクシュアルハラスメントといったハラスメントに関するものが全体の4割を占めています。このように、職場におけるハラスメントの問題は、メンタルヘルス疾患の大きな原因となっています。ハラスメントを防止するための措置のひとつに、相談窓口の設置がありますが、改めて相談窓口の周知を行い、問題が発生する前や小さいうちに従業員から相談してもらえるようにしていきましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省
令和4年度「過労死等の労災補償状況」を公表します
厚生労働省
職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)

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8月1日 長時間労働者に対して求められる労務管理

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、一部の企業においては、需要の急回復による人手不足から長時間労働にならざるを得ないような状況が見られます。

そこで今回は、長時間労働者に対して企業が実施すべき労務管理の内容についてとり上げます。

[1]医師の面接指導
 医師の面接指導の対象となる従業員は、法令で時間外・休日労働時間が月80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる者と定められています。時間外・休日労働時間が月80時間を超えた従業員が、疲労の蓄積があり、面接の希望を申し出した場合に、医師の面接指導を受けさせる必要があります。
 なお、対象となる従業員は、正社員やパート・アルバイトだけでなく、管理監督者も含まれます。

 

[2]労働時間に関する情報の通知
 面接指導の申出を促す目的から、時間外・休日労働時間が月80時間を超えた従業員に対して、会社は速やかに超えた時間に関する情報を通知する必要があります。通知は、労働時間に関する情報だけでなく、面接指導の実施方法・時期などの案内も併せて行うことが望まれます。
 この通知は、給与明細に時間外・休日労働時間数を記載している場合は、これを労働時間に関する情報の通知としても差し支えありません。また、労働時間の適用除外となっている管理監督者、事業場外労働のみなし労働時間制の適用者についてもこの通知の対象となっています。
 労働時間の状況の把握は、割増賃金の計算の目的以外の健康管理のためにも、必要かつ重要です。

 

[3]産業医等に対する必要な情報提供
 常時使用する労働者数が50人以上の事業場においては、産業医を選任する義務があります。そして、会社はこの産業医に対して、従業員の健康管理等に必要な情報を提供する義務があり、この必要な情報のひとつとして「時間外・休日労働時間が月80時間を超えた従業員の氏名」と、「その従業員の超えた時間に関する情報」があります。
 また、月80時間を超えた従業員がいなかった場合も、該当者がいなかった旨の情報を産業医に情報提供する必要があります。情報提供の漏れがないように、連絡する定例日を決めるなどして、確実に実施していきましょう。

 医師の面接指導については、時間外・休日労働時間が月80時間を超えると、従業員からの申出に関わらず実施しているケースや、月80時間の時間数を月60時間などに引き下げて実施しているケースなどがあります。健康障害の防止のためには、このように会社独自の基準を設けて、過重労働対策を行うことを効果的です。
※高度プロフェッショナル制度対象の従業員、研究開発業務従事者については、取り扱いが異なる場合があります。

■参考リンク
厚生労働省「働き方改革関連法により2019年4月1日から「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されます

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7月25日 2024年4月から変わる求人を行う際の労働条件の明示ルール

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

2024年4月より、労働条件の明示のルールが変更になることが既に決まっていますが、これと同様の趣旨で、求人を行う際の労働条件の明示についても変更となります。以下ではその内容をとり上げます。

1]業務・就業場所の変更の範囲の明示
求人を行う際に明示すべき労働条件として、「業務内容」と「就業場所」があります。現在は、各々雇入れ直後のものを明示すれば足りるとされていますが、2024年4月以降は、これらに加えて「業務内容の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」の明示も必要になります。この変更の範囲は、将来の配置転換など雇入れ後の見込みも含めた、締結する労働契約の期間中における変更の範囲のことをいいます。
例えば、雇入れ直後は法人営業を予定しているものの、締結する労働契約の期間中に、製造業務を除く業務全般に携わる可能性があれば、変更の範囲の箇所には、製造業務を除く当社業務全般のように明示することとなります。

 

2]有期労働契約を更新する場合の基準
2024年4月以降、有期契約労働者を雇入れたり、契約を更新したりする場合には、更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容を明示する必要になります。そして、労働契約の更新がありうるとしたときは、その判断基準を明示する必要があります。求人を行う際も同様に、労働契約の更新を「あり」とした場合は、この更新の判断基準の明示が必要となります。

3]明示する際の注意点
2024年4月以降、ハローワーク等への求人の申込みや自社のホームページで募集等を行う場合、求人票や募集要領に、上記でとり上げた事項を明示する必要があります。その際、求人広告のスペースが足りない等、やむを得ない場合は、「詳細は面談時にお伝えします」のように記載した上で、別のタイミングで明示することも可能とされています。この場合、原則、面接などで求職者と最初に接触する時点までに、すべての労働条件を明示する必要があります。

求人を現場単位で行っている場合、明示すべき項目が網羅されているか把握・管理する必要が今後出てきます。いまのうちに求人を行う際の社内のフローを整理しておくとよいでしょう。

■参考リンク
厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます

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7月18日 解雇を実施する際の留意点

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

雇用契約の終了には、定年や自己都合退職の他、解雇や雇止めがあります。この中でも、解雇を行う際には様々な注意点があり、トラブルとならないようにする必要があります。
以下では、普通解雇・整理解雇を実施する際の留意点についてとり上げます。

 1]普通解雇
解雇とは、使用者(会社)からの申出による一方的な雇用契約の終了のことをいいます。使用者はいつでも自由に解雇を行えるというものではなく、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、解雇をしても無効となります。
また、一定の場合については法律で解雇が禁止されています。主なものは以下のとおりです。

[労働基準法]

  • 業務上の傷病による休業期間とその後 30日間の解雇
  • 産前産後の休業期間とその後 30 日間の解雇
  • 労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇

[男女雇用機会均等法]

  • 労働者の性別を理由とする解雇
  • 婚姻・妊娠・出産・産前産後の休業をしたこと等を理由とする解雇

[育児・介護休業法]

  • 労働者が育児・介護休業等の申出等をしたこと、育児・介護休業等を取得したことを理由とする解雇

 解雇をするときは、合理的な理由があったとしても、原則として少なくともその30 日前に解雇の予告をすることが求められます。予告を行わない場合には、30 日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。なお、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)において、契約期間の途中で労働者を解雇することは、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断されます。

2]整理解雇
解雇の一種に整理解雇があります。これは、使用者が不況や経営不振などの理由により、解雇せざるを得ない場合に人員削減のために行う解雇を指します。以下の4つの要素に照らして整理解雇が有効か厳しく判断されます。

  1. 人員削減の必要性
    人員削減措置の実施が不況、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいているか
  2. 解雇回避の努力
    配置転換、希望退職者の募集など他の手段によって解雇回避のための努力をしているか
  3. 人選の合理性
    整理解雇の対象者を決める基準が客観的、合理的で、その運用も公正であるか
  4. 解雇手続の妥当性
    労働者等に対して、解雇の必要性とその時期、規模、方法について納得を得るために説明を行っているか

雇用契約の終了の一つで解雇に似ているものとして「退職勧奨」がありますが、これは使用者が労働者に対して退職を勧めることをいいます。労働者が自由意思によりその勧奨に応じる場合は問題となりませんが、使用者が労働者の自由な意思による決定を妨げる勧奨は、違法な権利侵害に当たると判断される場合があります。トラブルを避けるためには、対象となる労働者としっかり向き合い、丁寧に説明することが求められます。

 

■参考リンク
厚生労働省「労働契約の終了に関するルール

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7月11日 ハローワークを通じた障害者の就職件数 コロナ禍以前と近い水準に

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

民間企業における法定雇用率については、2023年4月から1年間は2.3%で据え置きとなりましたが、2024年4月から2.5%、2026年7月から2.7%と段階的な引上げが行われることになっています。
こうした状況を受け、今後更なる障害者雇用を計画されている企業も多いと思われますので、今回は厚生労働省より公表された令和4年度のハローワークを通じた障害者の職業紹介状況について確認します。

[1]新規求職申込件数・就職件数
ハローワークへの新規求職申込件数は233,434件(前年度223,985件)となっており、対前年度に比べ4.2%増加しています。
次に、障害者の就職件数は102,537件(前年度96,180件)となっており、対前年度に比べ6.6%増加しています。この就職件数の内訳をみると、身体障害者が21,914件、知的障害者が20,573件、精神障害者が54,074件、その他の障害者が5,976件となっています。2013年度以降、精神障害者の就職件数が身体障害者の就職件数を上回っています。この10年間で、身体障害者の就職件数は減少傾向にあり、知的障害者の就職件数は横ばい、精神障害者の就職件数は増加傾向にあることが分かります(下図参照)。

 

[2]産業別・職業別の就職状況
産業別に就職状況を見てみると、就職件数全体(102,537件)のうち「医療、福祉」が 39,122件と全体の約3分の1を占めており、「製造業」12,765件、「卸売業、小売業」11,222件、「サービス業」10,723件と続いています。
また職業別に就職状況を見てみると、「運搬・清掃・包装等の職業」が33,097件と全体の約3分の1を占めており、「事務的職業」24,383件、「サービスの職業」12,877 件、「生産工程の職業」11,977 件と続いています。障害種別の就職状況では、身体障害者については「事務的職業」、知的障害者および精神障害者については「運搬・清掃・包装等の職業」の割合が、職業別の中で一番高くなっています。

障害者の採用にあたっては、企業はハローワークに障害者専用求人を出すことができますが、2022年度の専用求人数は240,486人で、前年度(213,416人)より12.7%増加しています。障害者法定雇用率の引き上げを受け、多くの企業が障害者雇用に力を入れている状況ですので、安定した雇用の確保のためには、早めの対応が求められます。

 

■参考リンク
厚生労働省
令和4年度 ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況などの取りまとめを公表します」 
ハローワークインターネットサービス
障害者の方の雇用に向けて

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7月4日 年次有給休暇の平均取得率 50%~75%未満が4割

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休暇の取りやすさは、働きやすさという点で従業員が企業に期待する大きな要素の一つに数えられます。年次有給休暇(以下、「年休」という)については、働き方改革関連法の中で1年に10日以上の年休が付与される従業員について、少なくとも1年に5日を取得させなければならないというルールが設けられました。
今回は厚生労働省の「令和4年度 仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業 仕事と育児等の両立支援に関するアンケート調査報告書」(以下、「調査」という)の中から、年休の平均取得率について取り上げます。

 

[1]従業員規模別の年休の平均取得率
この調査は、従業員数50人以上の企業等を対象としたもので、2022年12月から2023年1月にかけて行われました。それによれば、正社員・職員の年休の平均取得率(令和3年度実績)は、「50%以上~75%未満」が 41.3%でもっとも回答割合が高く、次いで「25%以上~50%未満」が33.3%、「75%以上」が16.8%となっています。これを従業員規模別に見てみると、従業員規模が大きくなるにつれて、「50%以上~75%未満」と「75%以上」の占める割合が高くなっています(図1参照)。 

 

[2]業種別の年休の平均取得率
業種別の年休の平均取得率を見ると、業種によって大きな開きがあることが分かります。中でも、宿泊業、飲食サービス業では年休の平均取得率が他の業種よりも低くなっており、「0%超~25%未満」が42.0%、「25%以上~50%未満」が31.3%、「50%以上~75%未満」が8.5%、「75%以上」が18.4%となっています。

深刻な人手不足が続いており、年休の取得が進まないという企業も少なくありませんが、人材の採用・定着を考えた場合、年休取得率の引き上げは重要なテーマとなります。

 

■参考リンク
厚生労働省「仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業

 

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6月27日 治療と仕事の両立支援を検討する際のポイント

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労働者の約3人に1人が何らかの疾病を抱えながら働いているとされます。また職場において労働力の高齢化が進むことに伴い、今後、労働者が治療と仕事を両立していくことのできる環境の整備がより一層求められることになります。
そこで、今回は治療と仕事の両立支援を検討する際のポイントをとり上げます。

 

 1]両立支援の現状
厚生労働省が公表している「令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」によると、傷病(がん、糖尿病等の私傷病)を抱えた何らかの配慮を必要とする労働者に対して、治療と仕事を両立できるような取組みが行われている事業所の割合は41.1%となっています。
その取組内容(複数回答)をみると、「通院や体調等の状況に合わせた配慮、措置の検討(柔軟な労働時間の設定、仕事内容の調整等)」が91.1%、「両立支援に関する制度の整備(年次有給休暇以外の休暇制度、勤務制度等)」が36.0%、「相談窓口等の明確化」が32.1%と続いています。

 

2]勤務制度・休暇制度を検討する際の選択肢
このように両立支援の取組としては、柔軟な勤務制度や特別休暇などの制度の導入が多く行われています。以下では、これらの具体的な選択肢について見ていきましょう。

  1. 勤務制度
    • 時差出勤制度
      通院のためや通勤による身体の負担を軽減するために始業・終業時刻を変更することです。時差出勤の場合、1日の所定労働時間に変更がないため、短時間勤務制度と異なり、給与が減額とならないというメリットがあります。
    • 短時間勤務制度
      フルタイム勤務が難しい場合、所定労働時間を短くして引き続き働くことができるようにするものです。
    • テレワーク
      通勤による身体の負担を軽減し、在宅勤務などリモートで働いてもらうというものです。

  1. 休暇制度
    • 時間単位の年次有給休暇
      年次有給休暇は1日単位で取得することを原則としていますが、労使協定を締結することで、年5日を上限として、1時間単位で取得することができるようになります。これにより、通院等で必要な時間を年次有給休暇で活用することができます。
    • 積立年次有給休暇
      年次有給休暇は付与日から2年が経過すると請求権がなくなりますが、この請求権がなくなった年次有給休暇を積み立てておき、病気治療による通院などの場合に利用できる制度を会社独自に設けておくものです。
    • 病気休暇
      会社独自の制度として、入院治療や通院のために利用できる休暇制度を設けておくものです。

こうした勤務制度や休暇制度については、運用方法と併せて管理職が制度を理解するための研修も必要になります。実際に運用していくまでには時間がかかることから、早めに検討を始めるとよいでしょう。

■参考リンク
厚生労働省「治療と仕事の両立について
厚生労働省「調査の概要

 

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6月20日 今後の最低賃金引き上げの方向性

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

近年、最低賃金は大幅な引上げが行われており、企業経営に大きな影響を与えています。
今年10月の最低賃金引き上げはどうなるのか、更にはその後も現在のような高水準での引上げが継続されるのかについて強い関心をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、2023年4月12日に、内閣官房新しい資本主義実現本部事務局が公表した「三位一体労働市場改革の論点案」の中から最低賃金に関する今後の論点について見ていきましょう。

[1]「三位一体労働市場改革の論点案」
最低賃金に関して「三位一体労働市場改革の論点案」の中に記載されている内容をまとめると、以下のとおりとなります。

  1. 今年は、全国加重平均1,000円を達成することを含めて、公労使三者構成の最低賃金審議会で、しっかりと議論してもらう。
  2. 地域間格差の是正を図るため、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げることも必要。
  3. 今夏以降は、1,000円達成後の最低賃金引上げの方針についても(新しい資本主義実現会議で)議論を行う。

これはあくまでも今後の議論の方向性ということで、実際には今後の議論が待たれるところではありますが、今年も例年相当、もしくはそれ以上の最低賃金引上げの可能性が出てきています。

 

[2]最低賃金の地域間格差縮小への動き
[1]の2.でも最低賃金の地域間格差是正が論点となっていますが、この点については既に具体的な動きが見られます。最低賃金は、中央最低賃金審議会から示される引上げ額の目安を参考にしながら、各都道府県の地方最低賃金審議会で地域の実情を踏まえた審議・答申を得た後、異議申出に関する手続きを経て、都道府県労働局長により決定される仕組みとなっています。

この目安については、従来A~Dの4区分が設けられており、東京・大阪などの都市部と地方では目安額に差が設けられることが通例となっていました。今回、この区分がA~Cの3区分へ再編されることとなり、最低賃金の地域間格差の縮小が図られることとなっています。

諸外国との賃金格差の縮小が大きな課題となる中、最低賃金に関しても、今後、大きな動きが予想されます。人手不足による採用難もあり、賃金は上昇傾向にありますので、今後の賃上げに備えた生産性の向上がまずは求められます。

 

■参考リンク
内閣官房新しい資本主義実現本部事務局
三位一体労働市場改革の論点案」 
厚生労働省
第65回中央最低賃金審議会 資料

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6月13日 高年齢者・障害者雇用状況報告を行う際の確認事項

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

一定数以上の従業員を雇用している企業は、毎年6月1日現在の高年齢者の雇用状況と障害者の雇用状況を報告する義務があり、2023年7月18日までにそれぞれの雇用状況報告書を提出する必要があります。

以下では、今年より変更となる高年齢者雇用状況等報告書の様式の内容と、障害者雇用状況報告の際に求められる注意点についてとり上げます。

[1]様式が変更となった高年齢者雇用状況等報告書
高年齢者雇用状況等報告書の様式は昨年から変更が行われており、例えば、もともと「過去1年間の定年到達者等の状況(65歳未満)」と表現されていた欄が、「65歳まで働ける制度の過去1年間の適用状況」に変更されています。高年齢者雇用状況等報告書および障害者雇用状況報告書の記入要領には、今回変更となった欄に関して、記入にあたっての考え方が記載されていますので、記入する際に目を通すことをお勧めします。
また、高年齢者雇用状況等報告の記入方法については、現在、厚生労働省のYouTubeで解説動画が公開されています。このような解説動画も活用しながら、準備を進めましょう。

[2]障害者雇用状況報告の際に求められる注意点
障害者雇用状況の報告にあたり、障害者の把握を行うことがありますが、プライバシーに配慮した障害者の把握・確認が求められます。そのため、原則として、すべての従業員に対して画一的な手段で申告を呼びかける必要があります。その呼びかけを行う方法としては、以下のようなものがあります。

  • 従業員全員が社内 LAN を使用できる環境を整備し、社内 LAN の掲示板に掲載する。
  • 従業員者全員に対して一斉にメールを配信する。
  • 従業員全員に対して、チラシ、社内報等を配布する。
  • 従業員全員に対する回覧板に記載する。
  • 従業員全員が定期的に見ると想定される事業所内の掲示板に掲示する。

呼びかけの際に利用目的として、障害者雇用状況の報告のために用いる旨を明示することが必要です。併せて、この呼びかけに対して回答することが業務命令ではないことを明らかにすることが望まれます。

この高年齢者雇用状況等報告と障害者雇用状況報告は、e-Govを使用する電子申請による方法のほか、郵送またはハローワークに出向くことにより提出ができます。電子申請にも対応していますが、今年から電子証明またはGビズIDが必要になりました。これからGビズIDの発行を検討される場合、発行に時間を要することから早めにデジタル庁のホームページを確認しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「令和5年高年齢者・障害者雇用状況報告の提出について
厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告書及び記入要領等
厚生労働省「障害者雇用状況報告書及び記入要領等
デジタル庁

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6月6日 常時雇用労働者の定義・カウント方法

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就業規則の届出については常時使用する労働者の数が10人以上の事業場、衛生委員会の開催は常時使用する労働者の数が50人以上の事業場といったように、労働者の人数を基準に法令上の義務が定められているものがあります。そこで今回は、常時雇用する労働者の定義・カウント方法を確認します。

[1]労働基準法
 まず「労働者」の定義を確認すると、労働基準法では第9条で、職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者をいう、としています。ここには日雇労働者やパートタイマー等も含まれます。
 これを踏まえ「常時使用する」については、企業の通常の状況により判断するとされており、臨時的に雇い入れた場合や臨時的に欠員を生じた場合は労働者の数に変動が生じたものとして取り扱う必要はないものの、パートタイマー・アルバイトであっても臨時的な雇入れでなければ、常時使用する労働者数に含める必要があるとされています。

[2]労働安全衛生法
 労働安全衛生法の対象となる労働者は、原則、労働基準法と同じですが、労働安全衛生法が、職場で働くすべての労働者の安全を守る法律であることから、派遣労働者を受け入れている事業場は、派遣労働者も含めて常時雇用する労働者数を算出します。例えば事業場の労働者の数が45人で、派遣労働者が5人いる場合、合計50人となり、衛生管理者の選任等が必要になります。

[3]障害者雇用
 現在、常時雇用する労働者が43.5人以上の事業主(企業)は、障害者を1人以上雇用することが義務付けられています。この常時雇用する労働者は、1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者であって、1年を超えて雇用される人(見込みを含む)が対象となります。
 計算方法は、週所定労働時間が30時間以上の労働者については1人としてカウントし、20時間以上30時間未満の労働者については1人を0.5人としてカウントします。

[4]次世代育成支援対策推進法等
 次世代育成支援対策推進法や女性活躍推進法では、常時雇用する労働者が101人以上の事業主(企業)に対して、一般事業主行動計画の策定・届出を義務付けています。
 この常時雇用する労働者には、期間の定めなく雇用される人、過去1年間に引き続き雇用されている人または雇入れ時から1年以上雇用されると見込まれる人が含まれます。

それぞれの内容によって、常時雇用する労働者の定義が異なり、またカウントの範囲が事業場の場合と事業主(企業単位)の場合があります。それぞれ正しく労働者数が算出できているか、この機会に確認しましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「事業場の規模を判断するときの「常時使用する労働者の数」はどのように数えるのでしょうか。」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09985.html
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「令和4年度障害者雇用納付金制度「ご案内」」
https://www.jeed.go.jp/disability/q2k4vk000002t1yo-att/q2k4vk000003p1yn.pdf
厚生労働省「次世代育成支援対策推進法関係パンフレット」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/pamphlet/26.html

 

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5月30日 定期健康診断以外の健康診断が必要となる労働者

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

会社は、常時使用する労働者に対し、一般健康診断として雇入れ時および1年以内に1回の定期健康診断や特定業務従事者に対する健康診断を行う義務がありますが、その他にも、有害業務等に従事する労働者に対して実施する特殊健康診断や歯科医師による健康診断等があります。以下ではこれらの内容を確認しておきましょう。

【1】特定業務従事者の健康診断  
特定業務従事者の健康診断は、労働安全衛生規則に掲げる業務に常時従事する労働者に対して、実施することが義務付けられています。  


具体的な業務には、多量の高熱物体を取扱う業務や著しく暑熱な場所における業務、多量の低温物体を取扱う業務および著しく寒冷な場所における業務、ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務等があり、深夜業を含む業務等も含まれています。  これらに該当する業務へ労働者を配置替えする際、6ヶ月以内ごとに1回これらの業務に常時従事する労働者に対して実施が必要です。

【2】特殊健康診断  
特殊健康診断は、以下の有害な業務に常時従事する労働者等に対して、一般健康診断とは 異なる項目に係る健康診断の実施が義務付けられています。
① 有機溶剤業務 ② 鉛業務 ③ 四アルキル鉛業務 ④ 特定化学物質業務 ⑤ 高気圧業務 ⑥ 放射線業務 ⑦ 除染等業務 ⑧ 石綿業務  
原則として、雇入れ時、配置替えの際と6ヶ月以内ごとに1 回の実施が必要です。また、上記のうち、一定の特定化学物質業務や石綿業務などについては、それらの業務に従事しなくなった場合でも特殊健康診断の実施が必要です。

【3】歯科医師による健康診断
歯科医師による健康診断は、有害業務(塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、フッ化水素、黄りんその他歯またはその支持組織に有害な物のガス、蒸気または粉じんを発散する場所における業務)に常時従事する労働者に対して、雇入れ時、配置替えの際と6ヶ月以内ごとに1 回の実施が必要です。  

この健康診断を実施した場合、常時使用する労働者の数が50人以上の事業場に実施結果を報告することが義務付けられていましたが、2022 年10 月より、事業場規模にかかわらず、すべての事業場に報告が義務付けられました。  
歯科健康診断結果の報告書様式が新たに 定められているため、報告する際には新様式を使用しましょう。

派遣労働者は派遣元で雇用されていますが、実際に業務を行う場は派遣先となります。そのため、 派遣労働者の定期健康診断・特定業務従事者の健康診断は派遣元、特殊健康診断・歯科医師による健康診断は派遣先で実施することが義務付けられています。健康診断の実施がもれないようにしましょう。

 

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5月23日 導入を検討したい 勤務間インターバル制度

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

勤務間インターバル制度の導入は企業の努力義務とされ、国は2025年までに導入している企業の割合を15%以上とするという数値目標を定めています。2022年10月に厚生労働省から公 表された「2022年の就労条件総合調査の結果」からその導入状況、そして制度の導入を検討する際のポイントをとり上げます。

【1】勤務間インターバル制度の  導入状況

 勤務間インターバル制度を導入している企業の割合をみると、「導入している」が5.8% (2021年調査 4.6%)、「導入を予定又は検討し ている」が12.7%(同 13.8%)「導入予定はなく、検討もしていない」が 80.4%(同 80.2%)となっています。企業規模別でみると、おおむね従業員数が多くなるにつれて導入済み、または導入に向けた動きをしている割合が高くなります。

【2】勤務間インターバル時間

 制度を導入する際には、終業時刻から始業時刻までの間に空ける時間、いわゆる「インターバル時間数」の設定をします。法令で時間数の定めは特段ありませんが、通勤時間や食事の時間等を勘案した上で、一定の睡眠時間の確保ができる時間設定が必要になります。

【3】制度導入を検討する際のポイント

制度を導入する際の主な検討項目は次のとおりです。

①制度の適用対象となる従業員の範囲

②インターバル時間数

③インターバルを確保することにより、翌日の始業時刻を超える場合の取扱い

④インターバル時間の確保に関する申請手続き  

この中で、③については、インターバル時間と翌日の始業時刻が重複する部分を働いたも のとみなすという方法と、翌日の始業時刻を繰 り下げる方法の2つが考えられます。また、後者の取扱いについて、「翌日の終業時刻も繰り下げる」「翌日の終業時刻は変更しない」 、 等の方法が考えられ、導入をする際には取扱いを定めておく必要があります(下図参照)

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5月16日 年次有給休暇の取得義務にまつわるよくある質問

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

2019年4月より、年10日以上の年次有給休暇(以下、「年休」という)が付与される従業員について、付与された年休の日数のうち5日は会社が時季を指定するなどして取得させることが義務となりました。そのため、付与日から四半期や半期を経過したタイミング等で、取得状況の確認をしている企業も多いのではないでしょうか。今回はこの年休の取得義務に関連し、よくある質問をとり上げます。

[1]私傷病により休職している従業員の対応
 年休は労働日に取得ができ、また取得させるものですが、休職は、本来の労働日について労働義務が免除される取り扱いです。付与日以前から休職をしていて、付与日から1年間のすべてが休職となっていた(1年間の途中一度も復帰しなかった)場合は、そもそも労働日がなく、会社にとって年休を取得させることが不可能であるため、5日の取得ができないとしても法違反に問われるものではありません。

[2]育児休業中の従業員の対応
 育児休業も、休職と同様に休業を申し出た期間について労働義務が免除されるため、付与日から1年間のすべてについて、育児休業を取得しているようなときは、[1]と同様の考え方になります。
 ただし、付与日から1年経過する途中に育児休業から復帰した従業員は年休の取得義務の対象になります。その際、復帰した日から付与日から1年経過する日までにある労働日が、取得義務となっている年休の日数より少なく、年5日の年休を取得させることができないときは、取得できなくてもやむを得ないこととなります。
 実務の場面では例えば、付与日から1年経過する日が3月31日であり、3月16日に復帰する従業員がいるときには、3月16日から3月31日までの期間に合計して年5日の年休を取得させなければならないようなケースが発生します。このように年休の付与日から1年経過する日と復帰日が隣接しているような場合であっても、年5日取得できる労働日があるのであれば、取得させる義務があります。復帰にあたっては年休の取得日も併せて確認しておくべきでしょう。

[3]パートタイマーから正社員に転換した従業員の対応
 年10日以上の年休が付与されているパートタイマーについても、付与日から1年以内に5日の年休を取得させる義務があります。このパートタイマーが正社員に転換した場合は、年休の残日数を引継ぎ、取得義務も継続します。
 正社員に転換する際に、例えば、パートタイマーのときには10月1日であった付与日を、正社員については統一付与日である4月1日に前倒しして変更することがあります。このような場合、年5日の取得義務について、パートタイマーの期間と正社員の期間について、重複が生じることになりますが、パートタイマーおよび正社員の期間それぞれで取得させることが原則になります。なお、重複が生じるそれぞれの期間を通じた期間の長さに応じた日数(比例按分した日数)をその期間に取得させることも認められています。
 上記事例の他、管理監督者も年休の付与義務の対象となっています。日常的に多忙で年休を取得する余裕がないという管理監督者の声を耳にすることがありますが、取得義務の期限が迫って、業務に支障を来すことがないように、計画的に取得できるようにしましょう。

■参考リンク

厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」
https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf


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5月9日 2024年4月施行が検討される主な法令等の改正

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

人事労務関連の法令等の改正は年度に合わせて施行されることが多くなっています。その関係もあり、2024年4月施行の法令等の改正が検討されています。以下では、多くの企業で対応が必要となることが予想されるトピックスを紹介しましょう。

【1】有期労働契約期間・上限に関する変更
期間を定めて従業員を雇用すること(有期労働契約)がありますが、この場合には「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」 に従った対応が求められます。今回、この基準の改正により、有期労働契約の変更または更新の際、通算契約期間や有期労働契約の更新回数について、上限を定めたり、引き下げようとしたりするときは、あらかじめ、その理由を従業員に説明しなければならないことになる予定です。例えば、従来は通算契約期間を定めていなかったものを5 年までと定める場合や、更新回数を4回までとしていたものを2 回までにする場合が該当します。

【2】無期転換申込権発生時の対応  
有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、従業員の申し込みにより、無期労働契約に転換できるルールがあります。
この無期転換の申込ができるようになる(無期転換申込権が発生する)契約更新時の労働条件の明示事項に、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件が追加される予定です。現在は、無期転換申込権の発生について、会社が従業員に周知する義務まではありませんが、この改正により、労働条件通知書等により周知する必要が出てきます。また、無期転換後は、有期労働契約のときとは異なる労働条件を設定することもあります が、その内容についても、無期転換申込権が発生する契約更新の際に明示が必要になる予定です。

【3】労働条件の明示事項の追加  
労働契約を締結するときには、法令により定められた労働条件を明示する必要があります。この労働条件の明示事項に、就業場所・業務の変更の範囲が追加される予定です。  

また、有期労働契約の場合には、これらに加え、通算契約期間または有期労働契約の更新回数の上限も追加される予定です。  
現在の明示事項である、「就業場所」と「従事すべき業務の内容」の欄は、雇入れ直後のものを記載することで足りるとされていますが、改正されることにより、将来の見込みも踏まえて明示が必要になります。

2024年10月には 51人以上の従業員規模に対して社会保険の適用拡大が行われ、2025年4月には高年齢雇用継続給付の給付率の上限が15%から10%に縮小されます。従業員の働き方に大きく影響するものもあるため、施行される影響の範囲を考えながら人事施策を検討していきましょう

■参考リンク
厚生労働省
「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」
230330労働条件明示改正リーフレット (mhlw.go.jp)
「モデル労働条件通知書」
モデル労働条件通知書 (mhlw.go.jp)


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5月2日 採用と年齢制限

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

企業がどのような人材を採用するかは、原則として会社が任意に決めることができます。ただし、 従業員の募集や採用に当たって、年齢制限を設けることはできません。厚生労働省は、企業に年齢にとらわれない人物本位、能力本位の募集・採用を求めていることから、募集・採用時におけ る年齢制限について確認します。

[1]年齢制限を設けた募集・採用
日本では、一定の年齢に達したことにより、雇用を終了させるという定年の仕組みがあります(定年が満65歳未満の場合、65 歳までの継続雇用義務あり)。このような年齢による雇用の区別を認めているものの、雇用対策法の規定により従業員の募集・採用においては、例外 事由に該当しない限り、年齢を不問としなければならないことになっています。これはハローワークで求人をするときはもち ろんのこと、民間の職業紹介事業者、求人広告などを通じて募集・採用する場合や、企業が自 社のホームページなどで直接募集・採用する場合も含まれます。さらには、形式的に求人票を「年齢不問」と すれば良いわけではなく、年齢を理由に応募を断ったり、書類選考や面接で年齢を理由に採否を決定したりすることも禁止されています。また、応募者の年齢を理由に雇用形態や職種などの求人条件を変えることもできません。

[2]年齢制限の例外事由
例外的に年齢制限を行うことができる事由 としては以下の6つが定められています。年齢制限を設けた募集・採用を考える際には該当する事由がないかを確認しましょう。

  1. 定年年齢を上限として、その上限年齢未満 の労働者を無期契約の対象として募集・採用する場合
  2. 労働基準法その他の法令の規定により年齢制限が設けられている場合
  3. 長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を無期契約の対象として募集・ 採用する場合
  4. 技能・ノウハウの継承の観点から、特定の 職種において労働者数が相当程度少ない 特定の年齢層に限定し、かつ、無期契約の対象として募集・採用する場合
  5. 芸術・芸能の分野における表現の真実性などの要請がある場合
  6. 60 歳以上の高年齢者、就職氷河期世代(昭和43年4月2日から昭和63年4月1日ま でに生まれた人)または特定の年齢層の雇 用を促進する施策(国の施策を活用しよう とする場合に限る)の対象となる者に限定して募集・採用する場合

実務上、年齢制限を行うケースとしては、例外事由の 3 を用いることがあるかと思いますが、この例外事由では、「対象者の職業経験について不問とすること」および「新卒者以外の者について、新卒者と同等の処遇にすること」の二つが必要です。人材不足により、採用活動が厳しくなる中で、年齢を含め、どのような人材を採用していくのか、人材採用戦略の明確化が求められます。

■参考リンク
厚生労働省「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」

000708105.pdf (mhlw.go.jp)

厚生労働省「労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A」
000708081.pdf (mhlw.go.jp)

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4月25日 2024年4月から適用となるトラック運転者の時間外労働の上限と改善基準告示

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

いよいよ2024年4月1日より、自動車運転業務、建設事業、医師について、時間外労働の上限規制が適用となります。これに併せて自動者運転業務に従事するトラック運転者、バス運転者、タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示が2022年12月23日に改正されました。以下では、2024年4月1日より施行されるトラック運転者に関する改正内容について解説します。

【1】時間外労働の上限
トラック運転者について、特別条項付き36協定を締結する場合、年間の時間外労働の上限が年960時間となります。なお、この960時間には法定休日労働の時間数は含みません。ただし、一般企業等ですでに適用されている以下の2つについては適用されません。

  1. 時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2〜6ヶ月平均80時間以内
  2. 時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月まで

そのため、1ヶ月の上限については規定がありませんが、例えばある月の時間外労働が100時間となった場合、他の月の時間外労働を削減すること等により、年960時間を超えないようにする必要があります。

【2】改善基準告示
トラック運転者の改善基準告示が改正され、以下のようになります。

  • 1年の拘束時間

3,516時間 ⇒ 原則:3,300時間(最大:3,400時間)

  • 1ヶ月の拘束時間

原則:293時間(最大:320時間)⇒ 原則:284時間(最大:310時間)

  • 1日の休息期間

継続8時間 ⇒ 継続11時間を基本とし、継続9時間を下回らない

この他、改正はありませんが、1日の拘束時間や運転時間など様々な基準が設けられています。

【3】労働局に編成された「荷主対策チーム」
厚生労働省では、上記の改善基準告示を広く周知するために、「荷主特別対策チーム」が編成されています。この「荷主特別対策チーム」の活動として、トラック運転者の長時間労働の是正のため、発着荷主等に対して、長時間の荷待ちを発生させないことなどについての要請と、その改善に向けた働きかけが行われることになっています。
そのため、長時間の荷待ちに関する情報収集として、厚生労働省ホームページに、以下のような「長時間の荷待ちに関する情報メール窓口」が新設されており、発着荷主等が長時間の荷待ちを発生させていると疑われる事案などの情報を収集し、その情報を基に、労働基準監督署が要請等を行うとしています。

[長時間の荷待ちに関する情報メール窓口]
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/nimachi.html

2024年4月1日の施行まで1年足らずです。自動車運転者を雇用するトラック運送業等は、時間外労働時間の削減に向けた取組を行うとともに、荷主の企業もトラック運送業に対する対応が適切なものになっているか考える必要があります。

■参考リンク
厚生労働省「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/roudoujouken05/index.html
厚生労働省「改善基準告示の改正に伴い「荷主特別対策チーム」を編成しました」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29877.html

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4月18日 大幅な引上げとなる障害者の法定雇用率

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

企業は障害者雇用促進法に基づき、一定人数の障害者を雇用する義務があります。雇用すべき人数は、全労働者に対する対象障害者である労働者の割合を基準として算出する法定雇用率に基づき決まります。法定雇用率は、少なくとも5年毎に、この割合の推移を勘案して設定することとされていますが、2023年4月より新しい法定雇用率に見直されました。以下では、今後の法定雇用率の動き等についてとり上げます。

【1】法定雇用率

民間企業における法定雇用率は、2023年4月より7%に引き上げられましたが、引上げ幅が大きいこともあり、雇入れに係る計画的な対応ができるよう、2023年4月から1年間は2.3%で据え置きとなりました。そして、2024年4月から2.5%、2026年7月から2.7%と段階的に引上げとなります。

法定雇用率が2.5%となった場合、1人以上の障害者を雇用すべき企業の範囲が、現行の従業員数43.5人以上から40.0人以上になり、法定雇用率が2.7%となった場合は37.5人以上に広がります。

【2】除外率の引下げ

障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種(建設業、道路貨物運送業、医療業など)について、雇用する労働者数を計算する際に、除外率に相当する労働者数を控除(障害者の雇用義務を軽減)する制度があります。この除外率は、2004年4月以降、廃止に向けて段階的に引下げ・縮小が行われており、2025年4月からは10%引き下げられます。

この引下げにより、除外率が5~10%となっている非鉄金属製造業(非鉄金属第一次製錬精製業を除く)、倉庫業、航空運輸業、窯業原料用鉱物鉱業(耐火物・陶磁器・ガラス・セメント原料用に限る。)等の計9業種については除外率の適用対象外となります。その一方で、警備業、介護老人保健施設、介護医療院の3業種が新たに加えられます。

[3] 短時間労働者の実雇用率に算定する特例

現行、法定雇用率の算定に含めることのできる労働者は、週の所定労働時間が20時間以上の人だけですが、2024年4月より、週の所定労働時間10時間以上20時間未満の重度身体障害者、重度知的障害者および精神障害者について、就労機会の拡大のため、実雇用率において算定できるようになります。

法定雇用率の引上げに伴い、自社において障害者の雇用義務が発生するのか、発生する場合には何人の雇用が必要なのかを確認の上、採用等の対応を進めましょう。

■参考リンク
厚生労働省「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について

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4月11日 2023年度の雇用保険料率と雇用保険の給付概要

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

雇用保険料率は財政状況に応じて毎年度、見直しが行われています。2023年度の雇用保険料率は、2022年度の下期から引き上げられることになりました。今回は、その内容と従業員が雇用保険から受けられる各種給付について確認しましょう。

[1]2023年度の雇用保険料率
 2022年度はコロナ禍で雇用保険料率を引き上げることに対する労使の負担感が考慮され、上期と下期の2段階での引上げとなりました。2023年度は2022年度の下期の雇用保険料率から従業員負担・会社負担ともに1/1,000引き上げられ、下表のとおりとなります。

平成29年度雇用保険料率引き下げ決定です | 色はいろいろ

[2]雇用保険の給付
 雇用保険の給付を確認すると、まず「育児休業給付」と「失業等給付」に分かれます。前者の育児休業給付は、育児・介護休業法における育児休業および出生時育児休業を取得した際に行われる給付です。
 後者の失業等給付は、労働者が失業した場合や会社が従業員を継続して雇用することが難しくなるような事由が生じた場合に、従業員(退職者を含む)に必要な給付を行うとともに、その生活及び雇用の安定を図るための給付です。大きく分けて、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付の4 種類から構成されています。

[3]失業等給付における各給付の概要
 各給付の概要は以下の通りです。

  1. 求職者給付
    従業員が退職した場合に支給される基本手当を中心に、失業者の生活の安定を図るとともに、求職活動を容易にすることを目的として支給されるもの。
  2. 就職促進給付
    失業者が早期に再就職した際に支給される再就職手当等、失業者が再就職するのを援助、促進することが主目的とされるもの。
  3. 教育訓練給付
    労働者の主体的な能力開発の取組みを支援し、雇用の安定と再就職の促進を目的とするもの。
  4. 雇用継続給付
    労働者の職業生活の円滑な継続を援助、促進することを目的とするもの。

 なお、従業員が負担する雇用保険料は育児休業給付および失業等給付に対する給付の財源として充てられています。

 雇用保険料率が引き上げられ、従業員の負担感が増すタイミングであることから、雇用保険にどのような給付が設けられているか従業員にも周知すると良いでしょう。その際、教育訓練給付を利用することで、働きながらスキルアップできる仕組みがあることを伝えることができます。

■参考リンク
厚生労働省「令和5年度雇用保険料率のご案内
ハローワークインターネットサービス「雇用保険制度の概要

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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4月4日 STOP!熱中症 クールワークキャンペーン

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。
厚生労働省は、職場における熱中症予防対策を徹底するため、労働災害防止団体などと連携し、5月から9月まで、「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施します。

昨年1年間の職場における熱中症の発生状況は、死亡を含む休業4日以上の死傷者 805 人、うち死亡者は 28 人となっています。
業種別にみると、死傷者数については、建設業 172 件、製造業 144 件となっており、全体の約4割がこれら2つの業種で発生しており、また、死亡者数は、建設業、警備業の順に多くなっております。

熱中症といえば屋外の作業を思いがちですが、屋内でも熱中症のリスクは十分にあります。
熱中症と疑われる症状が発生したら、速やかに応急処置を行いましょう。

熱中症かな?と思ったら。。。


※参考:厚生労働省「職場で起こる熱中症
※参考:環境省「熱中症予防情報サイト

暑さが厳しくなる前に、熱中症に対する認識を深めておきましょう!

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3月28日 定期健康診断を実施しましょう!

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。
4月から新しい年度になり、定期健康診断を考えている御会社も多いのではないでしょうか?
定期健康診断は、年に一度の実施が労働安全衛生法で定められています。
常時使用する労働者が1名でもいれば、その時点で健康診断の実施義務は発生します。
今回は、定期健康診断の実施にあたり、よくある質問にお答えします!

Q1.定期健康診断の費用は誰が負担するべきですか。
A.事業主が負担することとなります。
健康診断実施は、労働安全衛生法で事業者の義務とされていますので、費用は事業主が負担することになります。

Q2.定期健康診断を受けている間の賃金はどうなるのでしょうか。
A.一般健康診断の実施に要した時間に対する賃金は労使間の協議によって定めるべきものになります。
ただし、円滑な受診を考えれば、受診に要した時間の賃金を事業主が支払うことが望ましいとされています。

Q3.定期健康診断の結果は労働者個人に通知しなければなりませんか。
A. 通知は必要となります。
労働安全衛生法に基づく健康診断の結果は、労働者自ら健康管理ができるようにその結果を労働者に通知することが義務づけられています。

Q4.経費節減のため、定期健康診断の項目の一部を省略することができると聞きましたが、問題ありませんか。
A.事業主の判断で省略はできません。
定期健康診断の項目は、労働安全衛生法で定められていますので、事業主の判断で省略はできませんが、医師の判断( 医師が必要でないと認めるとき)により健診項目の一部を省略できます。

Q5. 個人的に人間ドッグ等を受けた労働者に対しても健康診断を実施する必要がありますか。
A. 健診の必要はありません。
ただし、人間ドックの結果の写し等を会社に提出してもらう必要があります。
また、これと同様に市町村で実施している健康診断を受診した場合も、会社にその結果を提出してもらう必要があります。ただし、市町村が実施する健康診断の中には労働安全衛生法で定められている健康診断の項目を全て実施していないものがありますので、健診機関等で不足する項目を受診した結果を会社に提出してもらう必要があります。

Q6. 産休で休業している労働者がいます。定期健康診断の時期が来たのですが、定期健康診断を受診させなければなりませんか。
A.定期健康診断を受診させなくとも差し支えありません。
会社は、定期健康診断を実施すべき時期に、労働者が、育児休業、療養等により休業中の場合には、定期健康診断を実施しなくても差し支えありません。
ただし、休業終了後、速やかに、定期健康診断を実施しなければなりません。

■■健康診断費用には「協会けんぽ」から補助があります■■
令和5年度から自己負担額(会社負担額)が下がりました!

※参考:厚生労働省「生活習慣病予防検診のご案内
※参考:厚生労働省「健康診断を実施しましょう

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3月22日 従業員を雇うときのルール

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。
寒さも少し和らぎ、季節も春に向かっているのを感じるようになりました。
4月から新入社員を迎える御会社も多いのではないでしょうか?
今回は新入社員を迎えるにあたり、「雇用契約」と「労働契約」についてお話します。

「雇用契約」と「労働契約」どう違うのか? と、ご質問を受けることがあります。

「雇用契約」は、民法第623条で定めている「雇用」に関する契約のことをいいます。
雇用とは、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力が生じます。
 一方、「労働契約」は、労働契約法により、「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意すること」と規定されています。

この2つの大きな違いは、その対象としている「労働者」です。
労働契約法でいう「労働者」は「同居の親族のみを使用する業務」の場合は労働者から除外されており、「労働に従事する」すべての人を労働者と定義する民法とでは、労働者の範囲に違いがあります。
一般的に会社が従業員と締結する契約は「労働契約」になります。
労働契約には一定のルールがあります。

(1)労働条件の明示
労働契約を結ぶときには、使用者が労働者に労働条件を明示することが必要です。 さらに、特に重要な次の項目については、口約束だけではなく、きちんと書面を交付する必要があります。

これら以外の労働契約の内容についても、労働者と使用者はできる限り書面で確認する必要があると定められています。

(2)労働契約の禁止事項
労働法では、労働者が不当に会社に拘束されることのないように、労働契約を結ぶときに、会社が契約に盛り込んではならないことも定められています。

※参考:厚生労働省「従業員を雇う場合のルールと支援策

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3月14日 管理監督者、正しく理解していますか?

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。
「管理監督者」とは、どのような人をいうのでしょうか?
「店長」「工場長」「課長」「リーダー」等、肩書のある人を思い浮かべることでしょう。

管理監督者といっても取締役のような役員とはちがい、労働者であることに変わりはありません。
しかし、管理監督者は経営者に代わって同じ立場で仕事をする必要があり、その重要性や特殊性から労働時間等の制限を受けないこととなっています。

じつは管理監督者は、労働基準法に明確に定められているのです。
「管理職だから残業手当は必要ない」 よく聞くお話ですが、会社内で管理職としての地位にある従業員でも、労働基準法上の「管理監督者」に当てはまらないことがあります。
また、管理監督者であっても健康を害することのないように勤怠管理は必要とされています。

今回は、広くとらえられがちな「管理監督者」の範囲と定義についてお話いたします


これらにあてはまらない人は、社内で管理職とされていても、残業手当や休日出勤手当が必要です!

■■経営者と一体的な立場で仕事をしている■■
経営者と一体的な立場で仕事をするためには、経営者から管理監督、指揮命令にかかる一定の権限を委ねられている必要があります。
具体的には「採用」「解雇」「人事考課」「労働時間の管理」などです。
これらが自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事案について上司に決裁を仰ぐ必要があったり、上司の命令を部下に伝達するに過ぎないような場合は認められません。

■■出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていない■■
管理監督者は、時を選ばず経営上の判断や対応を求められることがあり、労務管理においても一般の従業員と異なる立場に立つ必要があります。このような事情から、管理監督者の出退勤時間を厳密に決めることはできません。また、勤務時間の制限がない以上、出退勤時間も自らの裁量に任されていることが必要です。遅刻、早退等により減給の制裁、人事考課での負の評価など不利益な取扱いがされる場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となります。

また、営業時間中は店舗に常駐しなければならない、あるいはアルバイト・パート等の人員が不足する場合にそれらの者の業務に自ら従事しなければならないなどにより長時間労働を余儀なくされている場合のように、実際には労働時間に関する裁量がほとんどないと認められる場合には、管理監督者性を否定する要素の1つとなります。

■■その地位にふさわしい待遇がなされている■■
管理監督者はその職務の重要性から、地位、給料その他の待遇において一般の従業員と比較して相応の待遇がなされていなければいけません。
基本給、役職手当等の優遇措置が、実際の労働時間数を勘案した場合に、割増賃金の規定が適用除外となることを考慮すると十分でなく、該当の労働者の保護に欠けるおそれがあると認められるときは、管理監督者性を否定する要素の1つとなります。

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3月7日 2023年4月より出産育児一時金の金額が50万円に増額されます!

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。
健康保険法施行令の改正により、2023年4月より出産育児一時金の金額が改定されることが決まりました。

出産育児一時金とは、健康保険法等に基づく保険給付として、健康保険や国民健康保険などの被保険者またはその被扶養者が出産したとき、出産に要する経済的負担を軽減するため、一定の金額が支給される制度です。

今般、社会保障審議会医療保険部会において、「出産育児一時金の額は、令和4年度の全施設の出産費用の平均額の推計等を勘案し、令和5年4月から全国一律で 50 万円に引き上げるべき」とされたことを踏まえ、現行の 40.8 万円から 48.8 万円に引き上げられます。

これにより、産科医療補償制度の加算対象となる出産に係る出産育児一時金の支給額は、以下のとおりとなります。

出産育児一時金の給付額は、多胎出産(双子、三つ子など)の場合、多児数に応じて支給額が決定されますので、2023年4月より、双子の場合は「50万円×2=100万円」となります(産科医療補償制度の加算対象の場合)。

■■支給を受ける要件■■
被保険者または家族(被扶養者)が、妊娠4か月(85日)以上で出産をしたこと。(早産、死産、流産、人工妊娠中絶(経済的理由によるものも含む)も支給対象として含まれます。)

■■出産育児一時金の支給方法■■
出産にかかる費用に出産育児一時金を充てることができるよう、出産育児一時金を医療機関等に直接支払う仕組み(直接支払制度)があります。
その場合、出産費用としてまとまった額を事前に用意する必要はありません。

なお、直接、医療機関等に出産育児一時金が支払われることを希望しない方は、出産後に被保険者の方が申請することにより、出産育児一時金を受給する方法を選択することも可能です。

※参考:全国健康保険協会「子どもが生まれた時

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2月28日 休業手当と休業補償、なにが違うの?

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。
新型コロナウイルスの影響により、会社が休業を余儀なくされることも増えています。
そこでよく混同されるのが「休業手当」「休業補償」です。
どちらも「休業」と付いていますが、その内容は全く別の制度です。
今回は「休業手当」と「休業補償」を整理していきましょう!

両者の違いを示すと次のようになります。

並べて見ると違いが良く分かりますね。
では、「会社都合で休業をするとき」とは、具体的にどのような時なのでしょうか?

◆休業手当の支給が必要な、会社都合に該当するもの事例
〇 工場などでの生産調整のための一時休業
〇 親会社の経営難から、下請工場が資材、資金を獲得できず休業
〇 新規学卒採用内定者に対する会社の都合による自宅待機期間の休業
〇 監督官庁の勧告により操業停止した場合の休業
〇 新型コロナウイルス感染症への感染が疑われる従業員を、会社側が自主的な判断でさせる休業

◆会社都合に該当しないもの事例
〇 天災事変による休業
〇 休電による休業
〇 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)に基づき、都道府県知事が要請する就業制限による休業

■■対象者と支給額の計算について■■
休業手当は、正社員やパート、アルバイト、契約社員など、雇用形態に関係なく全ての従業員が対象となります。
支給額の計算に使用する「平均賃金」は以下のように計算します。

事由の発生した日以前の3カ月間に支払われた賃金総額 ÷ 計算した3カ月間の総日数(暦日数)

■■一部休業日における支給額の計算■■
労働日の一部を休業した時は「平均賃金の60%と一部休業日に支払われた賃金の差額」を支払います。

休業手当=(平均賃金×60%)-(支払われた賃金額)

例えば、平均賃金が8,000円で、その日の一部勤務に対して支払われた賃金が2,000円の場合
8,000円×60%-2,000円=2,800円
2800円の休業手当の支給が必要となります。

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2月21日 時間外労働を行うには36協定が必要です!

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

時間外労働・休日労働に関する協定(通称 36(サブロク)協定)を届け出ていますか?
労働基準法では、1 日及び1 週間の労働時間並びに休日日数を定めていますが、これを超えて、時間外労働又は休日労働させる場合には、あらかじめ「36 協定」を締結し、労働基準監督署に届け出ることとなっています。

◆労働時間と休日のきまり
労働時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を除いた時間をいいます。
労働時間の長さは、原則として週40時間以内、1日8時間以内に制限されています。
また、休日とは、労働契約で労働義務がないとされている日のことをいいます。
会社は従業員に毎週少なくとも1回、あるいは4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。

◆時間外労働・休日労働をする場合
会社が法定労働時間を超えて従業員を働かせる場合や法定休日に働かせる場合には、各事業場(店舗)毎に、あらかじめ過半数を組織する労働組合がある場合にはその労働組合との間又は労働者の過半数代表者に、「時間外労働・休日労働に関する協定」を締結し、労働基準監督署長に届け出なければなりません。
この協定は労基法第36条に規定されていることから、「36協定(サブロク協定)」と呼ばれています。
また、会社が従業員に時間外労働・休日労働をさせた場合には割増賃金を支払うこととなります。

◆労働時間の上限
36協定において定める労働時間の延長の限度等に関しては、労基法で定められており、その上限を超えた時間を協定することはできません。

①限度時間 原則として月 45 時間以内、年360 時間以内

②限度時間を超えて労働させる場合
臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)には、①の限度時間を超えて労働させることが可能ですが、その場合でも次の事項を守らなければなりません。

③時間外労働及び休日労働の限度
36協定で定める時間数の範囲内であっても、時間外労働及び休日労働の合計の時間数については、1か月100時間未満、2~6か月平均80 時間以内としなければなりません。

◆届出
36協定は所轄の労働基準監督署長に届け出ることとなっています。
届出をすることにより36協定は有効になりますので、起算日と届出日に注意が必要です。

例えば、36協定届の起算日を「2023年4月1日」としたとします。しかし、実際に届出が受理されたのが4月15日になってしまうと、4月14日までの残業時間は法違反となります。

届出日より遡って36協定を有効にすることはできませんので、協定の締結後は速やかに提出しましょう!

※参考:厚生労働省「労働時間・休日
※参考:厚生労働省「36協定で定める時間外労働及び休日労働 について留意すべき事項に関する指針

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2月14日 こんな時どうする? 有給休暇の疑問にお答えします!!

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。
従業員を雇い入れている御会社で有給休暇管理は必須業務であります。
有給休暇の管理をしていく中で、「こんな時はどうするの?」にお答えいたします!

◆退職届を出した従業員に新しい有給休暇を付与する必要はあるか?
退職日が確定している従業員であっても、出勤率の要件を満たしている限り、付与日が到来すれば新しい有給休暇を付与する必要があります。
また、退職することが決まっていること(残りの在籍期間が少ないこと)を理由に、付与日数を少なくすることもできないこととなっています。

◆退職日以降の有給休暇はどうなるの?
退職したときに未消化で残っている有給休暇は、退職と同時に無効になります。
有給休暇は、出勤日(出勤の義務がある日)の勤務を免除して、賃金を支払うという制度です。
退職日以降は「出勤日」がありませんので、有給休暇を取得することができないのです。
なお、退職日までの期間に対して有給休暇の請求を受けた場合の会社の時季変更権は、退職日以降の日を指定することはできませんのでご注意ください。

◆退職で無効となった有給休暇は買い取りが必要なのか?
退職する従業員から、未消化の有給休暇を買い取るよう求められたとしても、会社は応じる義務はありません。
有休休暇の買い取りは、原則禁止されているのです。
ですが例外として、従業員が退職する時点で消化していない有給休暇について、買取りが認められています。
有給休暇を買い取るかどうかは会社の判断になりますので、買い取り金額も会社が自由に決めることができます。

◆出勤率80%未満の従業員の有給休暇付与について
出勤率が8割未満の従業員について、有給休暇の要件を満たしていないため、有給休暇を与える必要はありません。
有給休暇の付与日数は「0日」となります。

【付与の例】

ある1年に8割出勤しなかった場合、その年分の有給休暇の付与日数は0日になりますが、継続勤務年数の進行が止まったり、前年に戻ってしまう訳ではなく、2年6か月の勤続年数はあくまで2年6か月間の勤続年数であるとして、取得日数(12日)が付与されることになります。

◆5日の取得義務について
年10日以上の有給休暇が付与される従業員について、付与された有給休暇の日数のうち5日は会社が時季を指定するなどして取得させる義務があります。

[1]私傷病により休職している従業員の対応
休職は、「出勤日」について労働義務が免除される取り扱いです。付与日以前から休職をしていて、付与日から1年間のすべてが休職となっていた(1年間の途中一度も復帰しなかった)場合は、有給休暇を取得させることが不可能であるため、5日の取得ができないとしても法違反に問われるものではありません。

[2]育児休業中の従業員の対応
育児休業も、休職と同様に休業を申し出た期間について労働義務が免除されるため、付与日から1年間のすべてについて、育児休業を取得しているようなときは、[1]と同様の考え方になります。

ただし、付与日から1年経過するまでに育児休業から復帰した従業員は有給休暇の取得義務の対象になります。
その際、復帰した日から付与日から1年経過する日までにある「出勤日」が5日に未満であり、年5日の年休を取得させることができないときは、取得できなくてもやむを得ないこととなります。

※参考:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説

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2月7日 103万、106万、130万、150万円の壁とは?

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。
先日、岸田首相が衆院予算委員会で「年収130万円の壁」の制度見直しを表明しました。
年収の壁のお話は、よく耳にされることと思います。
では、実際に何の壁なのか、見ていきましょう!

よく言われる年収の壁は「103万」「106万」「130万」「150万」の4種類です。
実はこの4つは、税金と社会保険の両方が入り混じった数字になっています。
なので多くの方が混同して考えてしまい、難しくなってしまいます。
整理をしてみましょう。

◆税金の壁◆
103万円と150万円は税金の壁です。
これは給与の収入であることを前提とした金額です。

103万円は、配偶者のみならず、子や親など、扶養している親族全ての方に適用されます。
一方、150万円は配偶者のみ適用される金額です。
これらの金額を超えた方を、自身の扶養親族とすることはできないこととなります。

◆社会保険の壁◆
106万円と130万円は社会保険料の壁になります。

106万円が該当するのは、一定規模以上の会社に下記の要件でアルバイトやパートをする方です。
①従業員数が101人以上の事業所(特定適用事業所)に勤務していること
②週の所定労働時間が20時間以上
③賃金の月額が88,000円以上
④雇用期間が2カ月を超えて見込まれること
⑤学生でないこと

この方が、年収106万円以上で社会保険に加入することになります。
本人が社会保険の加入者となりますので、健康保険の扶養者では無くなります。
※参照:「10月4日 徹底解明!! 短時間労働者の社会保険適用の考え方

130万円は、社会保険の扶養者として稼ぐことの出来る上限金額です。
上記の一定規模の会社に勤めていなくとも、130万円を超える収入が認められると、扶養者の要件から外れてしまいます。

今回見直しが表明された「130万円の壁」、社会保険の扶養者としての働き方がどう変わるのか、注目です。

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1月31日 時間外労働の割増賃金率が引き上げに!できる準備は?

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

2023年4月1日から中小企業も月60時間を超える割増残業賃金率が25%から50%以上に引上げられます。

では、月60時間超の時間外労働の割増賃金が50%に引き上げになるとはどういうことでしょう。

労働基準法で定められている1か月の時間外労働とは1日8時間・1週40時間を超える労働時間のことをいいます。従業員に時間外労働をさせると、大企業、中小企業ともに割増賃金を支払わなければなりません。

その割増率は、60時間以下の場合は25%、60時間超の場合は、大企業は50%、中小企業は25%となっています。

2023年4月からは、中小企業も50%になります。


※参考:厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の 割増賃金率が引き上げられます

引き上げ開始までに就業規則の見直しや、必要に応じて代替休暇の制定等の準備が必要でしょう。

◆代替休暇とは?
1か月について60時間を超えて時間外労働を行わせた従業員について、労使協定により、法定割増賃金率の引上げ分の割増賃金の支払に代えて、有給の休暇を与えることができるものです。

■■計算例■■ ある月の時間外労働の時間が70時間だった場合
上記の計算式に当てはめると、(70-60)×(1.5-1.25)=2.5となります。
つまり取得可能な「代替休暇の時間数は、2時間30分」ということが分かります。

この場合は、2時間30分の代替休暇を取得すると、月60時間を超えた10時間分の時間外労働時間について、割増率1.25で計算することができます。

ただし、代替休暇の単位については、1日、半日、1日または半日のいずれかで運用することとなっています。また、本人からの申し出により取得できるものであり、事業主から強制することはできません。

※参考:厚生労働省「引上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇を 付与する制度(代替休暇)を設けることができます

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1月24日 【労務の豆知識】6ヵ月定期の端数処理は?

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。
通勤手当を定期代で支給している御会社は、結構多いのではないでしょうか?
定期代の期間が3ヶ月・6ヶ月となった場合、離職票の作成や社会保険の算定の際には1ヶ月単位の金額に案分する必要があります。

今回は、この案分の際に生じる、端数処理についてお話いたします!

◆離職票
雇用保険の失業等給付を受けるには、離職票の発行が必要となります。
離職票には、退職前12ヶ月間の被保険者期間と6ヶ月間の賃金額を記入します。
その期間の内に、通勤手当を3ヶ月・6ヶ月の定期代で支払われていた場合は各月に案分することとなります。

【計算例】

4月~9月までの6ヶ月定期代が50,000円の場合

50,000円 ÷ 6ヶ月=8333.333・・・・

となり、1ヶ月の金額は、8333.333・・・円になります。

金銭が小数点になることはありませんので、切り捨てると、8,333円です。

しかし、8,333円×6=49,998円ですので、実際より、2円少ない計算になります。

では、この2円はどこに入れるのでしょうか?

この場合は、『最後の月にまとめて支払われたものとして取り扱う』こととなっています。

つまり、4月~8月(5ヶ月間)は8,333円 9月は8,335円となります。

◆社会保険算定基礎届・月額変更届
社会保険の算定期間の、通勤手当の端数月は「何月分か」ではなく「いつ払ったか」で変わります。


となります。

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1月17日 キャリアアップ助成金の制度が拡充されました!

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員に転換したり、処遇改善の取り組みを実施した事業主に支給されるものです。
2022年度補正予算が成立し、同年12月2日より、このキャリアアップ助成金のうち「正社員化コース」と「賃金規定等改定コース」が拡充されています。

■■正社員化コース
正社員化コースは、有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換または直接雇用した場合に助成されるものです。
さらに、人材開発支援助成金を併用し、人材開発支援助成金の自発的職業能力開発訓練、定額制訓練を修了した後に正社員化すると訓練加算が支給されます。この支給額が9万5000円から11万円に引き上げられました。

また、加算の対象となる訓練に、事業展開等リスキリング支援コースが新設されています。

■■賃金規程等改定コース
賃金規程等改定コースは、有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を増額改定し、実際に賃金を引き上げた場合に助成されるものです。
今回、支給要件の見直しが行われ、賃金引き上げ率が2%以上から3%以上となりましたが、5%以上の賃金引上げを行う場合の助成額を大幅に拡充しています。この見直しに伴い、生産性要件を満たした場合の助成金額の増額が廃止されました。


※1事業所あたり1年度1回の申請制限が撤廃され、1年度1事業所あたり100人まで、複数回の申請ができるようになりました。

なお、経過処置として、2023年3月31日までの間に、2%以上3%未満の増額改定を行った場合や生産性要件を達成し助成額の加算を受ける場合は、従前の支給要件に基づいて支給申請することも可能です。この場合は、1事業所あたり1回までです。
※参考:厚生労働省「「キャリアアップ助成金」が使いやすくなりました!

制度拡充はキャリアアップ助成金のほか、特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)や中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)などでも行われています。
助成金の活用を検討されている場合は、早目に情報を確認することをお勧めいたします!

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■年末年始のご案内■

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。
平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

弊事務所では、下記の期間を年末年始休業とさせていただきますので、ご案内申し上げます。

年末年始休業 2022年12月29日(木)~2023年1月3日(火)まで

2023年1月4日(水)午前9時より通常通り営業いたします。
来年も変わらぬお引き立てのほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

12月20日 雇用保険料引き上げへ 2023年4月から

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。
厚生労働省が、雇用保険料率を令和5年4月に引き上げる方向で最終調整に入ったことがわかりました。
労使が払う雇用保険料率を0.2%引き上げて、1.35%に抑えていた料率を原則の1.55%に戻します。

【雇用保険率】

新型コロナウイルス感染拡大に伴う雇用調整助成金の特例措置により給付が膨らみ、財源が逼迫していることが理由とのことです。

雇用保険料は三つに区分されており、失業手当に充てる「失業等給付」と「育児休業給付」、雇用調整助成金などの直接の原資となる「雇用保険二事業」があります。

このうち「失業等給付」は、積立金に余裕があった時期に保険料を引き下げていました。
現在も激変緩和のため0.6%に抑えていましたが、原則の0.8%に戻す処置です。

その「雇用調整助成金」も、特例処置が終了し、通常制度となりました。
ですが、ご業況が厳しい事業主様については一定の経過措置を設けています。

◆経過措置の対象範囲について
令和2年1月24日から令和4年11月30日までの間の休業等について雇用調整助成金のコロナ特例を利用した事業所が経過措置の対象となります。

◆経過措置の内容について

(注)上段は助成率。下段は金額は1人1日あたりの上限額。
   括弧書きの助成率は解雇等を行わない場合(※1)

※参考:厚生労働省「令和4年12月以降の雇用調整助成金の特例措置 (コロナ特例)の経過措置について

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12月13日 年金額 3年ぶりの増額改定!しかし。。。

こんにちは、社会保険労務士法人サムライズです。
「20歳になったら年金の支払いが始まる」
年金について、このようなご認識をお持ちだと思います。
年金とは、老後の生活の安定と、健康状態に問題が生じたりしたときに安心して暮らせるようお金を受け取れる制度です。
では、実際にもらえる年金額は、どのように決定するのでしょうか。
今回は、年金額の計算についてお話します。

国民年金(老齢基礎年金)の支給額は、シンプルに表現すると 満額×(納付済みの月数/480) で求めることができます。
この『満額』が、毎年変動する金額となり、支給される年金額の増減に関わってくるのです。
2022年度の満額は777,800円でした。

気になる2023年度は。。。

年金は原則として、物価と賃金が上がる局面では給付が増える設計です。
2022年10月の全国消費者物価指数(総合)は前年同月比+3.7%の上昇となっており、2022年通年の物価指数も上昇傾向にあります。
それに伴い、年金の支給額が3年ぶりの引き上げ改定となる見通しです。

日経新聞の発表では、通年の物価指数は+2.5%の予測です。
年金の満額の計算は、780,900円×改定率となります。
改定率は67歳までは賃金変動率を使用し、68歳からは物価変動率を使用しています。
とすると、68歳からの年金額の満額は+2.5%になると考えます。
しかし、実際は少子高齢化で寿命が伸びるうえ保険料の担い手が減っているため、物価の伸びよりは給付を抑えるマクロ経済スライドと呼ばれる仕組みがあり、改定率が調整されるようになっているのです。


※参考:厚生労働省「マクロ経済スライド

これにより、+2.5%の改定率から-0.7%の調整が入り、+1.8%となることが予測されています。
厚生労働省の公式発表は1月です。令和5年6月に受け取る金額から変更されることとなります。

年金の制度は難しく、従業員からのお問い合わせ等があった際にも回答するのは困難であることでしょう。
そのような時こそ、ぜひ社労士にご相談ください!

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